Works 189号 特集 長寿就労社会 定年“消滅”時代、あなたはどう働きますか?
サントリーホールディングス シニア施策は点で捉えず線で捉える
課題山積のシニアとミドル施策。先行して対策を講じる企業の人事トップに、現在と未来のビジョンを聞いた。
サントリーは、創業来、人こそが経営の重要な基盤であるという「人本主義」を掲げ、「すべての社員の活躍」を目指しています。
一人ひとりが「キャリアオーナーシップ」を持ちながら、「生涯 イチチャレンジャー」として、年齢にかかわらず学び、挑戦し続け、多様な選択肢のなかから社内外に貢献し続ける人財になってもらいたいとの考えのもと、さまざまな取り組みを進めています。
ミドルシニアに関わる制度としては、2013年に65歳定年制を導入、2024年からは60歳到達時の資格・処遇変更を廃止し、60歳以前と同様としています。また、2020年には1年契約・最長5年の再雇用制度を導入し、本人・会社が合意すれば70歳まで働ける道を用意しています。
キャリア形成に関しては、点で施策を打つのではなく、中長期目線で早期から「線」でキャリアをつないでいくことを重視しています。
たとえば、キャリア形成の初期には「10年3仕事」、入社10年目に3仕事目の経験を積んでいる状態を目指しており、うち1回は、食品から酒類、営業から人事など、部門を大きくまたぐ異動を実施するようにしています。若いうちの幅広い経験は、中長期で見たときにキャリアの選択肢を増やすことにつながると考えています。
また、入社3年目、10年目、ミドル以降では43歳、58歳を参加必須とするキャリアワークショップでも、キャリア自律を支援しています。以前は43歳ではなく53歳を参加必須としていましたが、より早期にキャリアを考える機会を設けることが重要と考え、43歳に前倒しして実施しています。また、必須のワークショップに限らず、希望者はいつでも社内のキャリアコンサルタントによる面談を受けることができます。
人生100年時代に対応できる スキルセットや挑戦の機会も用意
もともとサントリーは離職率が低く、ずっとこの会社で働いていきたいという社員が多かったのですが、人生100年時代になり、人財の流動化も高まってきている今、複数のキャリアの選択肢を持ち、会社を離れた後も見据えてキャリアを考えていくことがますます重要になっています。会社人生のある時期に管理職のポストを担うかどうかにかかわらず、「生涯 イチチャレンジャー」として生き生きと働き続けるにはどうしたらいいか、自分なりに考え、自身を磨き続けてもらうことが大切です。
そのために主体的に考える場として、グループ内大学「サントリー大学」に100年キャリア学部を設置しています。人生100年時代に対応できるマインドセット・スキルセットを身につけられるよう、豊富なeラーニングプログラムや、NPO支援や地方創生など社外でのチャレンジ機会(公募)の情報を提供しています。特に公募は、自分の経験やスキルがどこまで通用するか試してみたい、会社とは異なる環境で新しい挑戦をしてみたいという人に大変人気があり、募集ポストに対して、シニア層も含めて多くの手が挙がります。また、こうしたさまざまな活躍の可能性があることを知ってもらうため、生き生きと働いている社員の事例は、積極的に紹介するようにしています。
高い技術やスキルを持つミドルシニアはたくさんいます。主体的に挑戦を続けている社員に、会社がしっかりと寄り添って応援していくこと、その能力を認め、活躍の場を作っていくことが、さらなるミドルシニアの活躍につながると考えています。
*サントリーのルールに則り、「人材」を「人財」と表記しています。
Text=瀬戸友子 Photo=サントリーホールディングス提供

西田英一郎氏
サントリーホールディングス
常務執行役員 人財戦略本部長