Works 196号 特集 人事のダイエット
ポーラ/オルビス|人事戦略のシンプル化で「ムリ・ムダ・ムラ」の排除
ポーラ・オルビスホールディングス傘下のオルビスは、作り込まれた人事評価制度を見直してシンプルにした結果、成果を出した社員が評価される仕組みが機能し始めた。当時、HR統括部長として人事制度改革を牽引したポーラHR本部本部長の岡田悠希氏に、改革の経緯などを聞いた。

ポーラ
HR本部 本部長
岡田悠希氏
「評価の仕組みが難しすぎて、社員は『何をすればどれだけ報酬が上がるのか』を理解できず、管理職の評価も形骸化してしまっていました。制度がトゥーマッチで、運用しきれなかったのです」
「社外の専門家から施策の目的や成果を問われ、うまく答えられないこともありました。こうした『壁打ち』が、施策の必要性を改めて考えるきっかけとなり、無駄をなくすことにつながったと思います」
業務目標の設定に力点 業績へのインパクト重視へ
シンプルな行動評価を導入する一方で、「業務目標の設定とその評価は緻密に行い、報酬との連動性も強めて、成果を出した人が報われる仕組みにした」という。
従来は、個人ごとにすべての業務に対して目標を設定していたが、見直し後は事業戦略に合致し、業績に与えるインパクトが大きい3つの業務に絞って目標を設定するようにした。
「この結果、ルーティンワークなどは評価の対象外となりました。さらに企画などの定性的な仕事も、プロセスではなく内容が実現した時点で、業績に及ぼした成果を評価する、と定義を明確化しました」
岡田氏と担当役員は、全社員の業務目標が的確かどうかをチェックし、評価者である管理職にフィードバックした。
「はじめはこんなにシンプルな仕組みでいいのかと思いましたが、成果重視の評価は結果的にうまく回っていくようになりました」
それまでは経営陣が新たな事業戦略を示しても、評価制度が複雑なために管理職がそれを業務目標に落とし込めず、戦略と現場の業務に食い違いが生じていた。しかし制度をわかりやすくしたことと岡田氏らのサポートの結果、管理職が適切な業務目標を設定できるようになり、現場でも戦略に沿った施策が進むようになった。
「付加価値を生み出す人材を評価するようになったことで、社員も自分は何をすべきかが明確になり、『挑戦が評価につながる』という認識が浸透し始めました。評価されないルーティンワークを見直し、業務のムダをなくすことにもつながっています」
ただ管理職のなかには、マネジメントのやり方を変えられない人も一定数存在した。このため部長クラスは、ポストオフや配置転換などによって、3~4年間で9割が入れ替わったという。若手社員にも、成果重視の戦略をチャンスと捉える人がいる一方、「従来のオルビス」への愛着から変革に不安を抱き、離職する人もいた。また岡田氏自身も当時を振り返ると、社員の気持ちに配慮したメッセージが不十分だった、という思いがある。
「新卒採用の基準を抜本的に変えるという施策を、既存の採用基準で入った自分たちへの否定と捉えた社員もいました。過去を打ち消してでも、改革を断行するといったイメージを与え、不要な不安を抱かせてしまったと反省しています」
ポーラでも人事改革 評価スキル向上が課題
「たとえば新商品のローンチには、広告や営業など多くの人間が関わっており、商品企画の担当者に販売関連の目標を課しても、本人の努力だけではどうにもならない。その人の裁量に合わせた目標を設定する必要があります」
「オルビスは役員が少なく、比較的カジュアルに物事を決められましたが、ポーラでは多くの経営陣からさまざまな意見が出されます。経営層とのコミュニケーションでは、改革の目的とゴールを提示したうえで、今議論すべき点を明確化するようにしています」
「社員の感情を無視して施策を実行しても、結局はハレーションを招き、改革が円滑に進まなくなってしまいます。急がば回れで、多くのメッセージを発信し表現にも気を使うことが大事だと学びました」
Text=有馬知子 Photo=刑部友康
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