マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析4 転機をつぶさに探索してみた(3)

分析④-3

仕事だから、ライフイベントだから。
転機による変化は、そんなに単純ではありません。

転機は、どんな変化をもたらしているでしょうか。Introduction5で見たように、転機による変化は、仕事で大切にしたいもの、進みたい方向を発見する「働く価値の再発見」、働くことより大切なものを見出したり、仕事以外のことに取り組み始める「仕事以外の価値の発見」、新たなテーマに興味・関心を持つようになったり、社会問題を身近に感じる「新しいテーマの発見」の3つに分けられました。

転機の5グループごとに3つの変化を示すスコアを見てみましょう。グループA「仕事の場の変化」は、意外なことに「働く価値の再発見」「新しいテーマの発見」のスコアが小幅なマイナスでした。変化が起きるためには、仕事の場を変えること以外のプラスαが必要なのかもしれません。グループB「ライフイベント」は、「仕事以外の価値の発見」のスコアが高く、「働く価値の再発見」や「新しいテーマの発見」のスコアは小幅なマイナスでした。グループBには、子どもの誕生や自立など、ライフイベントを仕事により深く向き合うきっかけとしている人がいました。そのために、仕事に関わる変化も大幅なマイナスにはならなかったと考えられます。グループC「職務・役割の変化」は、「働く価値の再発見」「新しいテーマの発見」のスコアがプラス、「仕事以外の価値の発見」のスコアがマイナスでした。仕事への姿勢を深めるが、仕事以外に目を向けにくくなる、そんな状況が見えてきます。

グループD「仕事の価値や意味の深化」は、3つの変化すべてがプラスでした。自分の中を掘り下げるなかで、仕事だけでなく、家族や人生など、仕事以外に向き合う姿勢も変わっていく。そんな姿が見えるようです。グループE「仕事や生活上の問題」は、3つの変化すべてでスコアがマイナスでした。仕事、仕事以外の両面で前向きな変化につながりにくい、苦しい状況が浮かび上がりました。

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text:大嶋寧子
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版