マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析4 転機をつぶさに探索してみた(5)

分析④-5

キャリア展望が高くても、メカニズムは違う。
私たちがより学ぶべきは、グループCとDのどちら?

昇進・昇格、異動など、「職務・役割の変化」に関わるグループC、仕事の価値や意味を深く考えたり、重要な人と出会うなど「仕事の価値や意味の深化」に関わるグループDは、転機を通じて仕事に関わる変化が生じやすいグループです。これらのグループでは、転機による変化はどのようにしてキャリアの展望に関わっているのでしょうか。見てみました。

昇進・昇格、異動など組織の中での立場の変化を経験している人が多いグループCでは、「働く価値の再発見」がダイレクトに、キャリアの展望につながる一方、変化がその後の学びを通じてキャリア展望を高める影響は確認できませんでした。

日本の多くの組織では、従業員が長くその組織に留まることを前提に人材マネジメントを行っています。その組織で昇進・昇格や異動を経験し、さらに仕事に関する前向きな変化を経験している人は、次のステージでの学びの有無に関わりなく、組織におけるキャリアの展望を持ちやすくなっている可能性があります。これと異なるのが、グループDです。「新しいテーマの発見」が直接キャリアの展望を高めるだけでなく、学校型学習を通じて間接的にもキャリア展望にプラスの影響をもたらしていました。

分析4-2で、グループDの人は、他のグループの人と比べてキャリアの展望が高いことを紹介しました。仕事の価値や意味を深く考えたり、重要な人とつながりながら自分なりのテーマを見つけていくことは、転職や昇進・昇格、海外赴任などの転機と比べれば地味かもしれません。ですが、これこそが仕事に関わる前向きな変化を起こしやすく、キャリアの展望を高めやすいと考えると、見え方は変わってくるのではないでしょうか。

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text:大嶋寧子
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版