マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析4 転機をつぶさに探索してみた(6)

分析④-6

ライフイベントや苦しい問題と直面しても、
学習を通じて展望を高めるルートがありました。

「ライフイベント」に関わるグループB、「仕事や生活上の問題」に関わるグループEは、仕事に関わる変化と関係のあまりないグループです。これらのグループでは、転機による変化はどのようにキャリアの展望に関わっているのでしょうか。

グループBは「働く価値の再発見」や「新しいテーマの発見」のスコアは小幅なマイナスでした(分析④-3)。しかし、グループBの中には、子の誕生や自立などを機会に、働くことを見つめなおしている人もいます。転機を通じた変化がキャリア展望に及ぼす影響を分析すると、「働く価値の再発見」や「新しいテーマの発見」が学習を通じてキャリア展望を高めるルートが確認できました。

一方、グループEは「働く価値の再発見」「仕事以外の価値の発見」「新しいテーマの発見」のいずれの変化も生じていません。グループEに当てはまる人は解雇やマタニティハラスメント、自分や家族の病気など、自分ではコントロールできない問題に直面している人も多く含まれます。前向きな変化が起こらないのは無理もありません。しかし、グループEの中には、苦しい経験の中から「新しいテーマの発見」をしている人がいました。例えば、親の死によって介護に関心を持ったある人は、その後に資格を取り、介護の分野で働き始めていました。分析結果(下段)を見てみると、グループEにおいても「新しいテーマの発見」がその後の学習を通じて、キャリアの展望を高めるルートが、弱いながらも確認できました。

仕事や生活上の問題は、だれもが経験する可能性があることです。その問題に直面した時、解決すべきテーマを見出し、学習を通じてキャリアの展望を高めるルートがあることは、ひとつの希望になるのではないでしょうか。

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text:大嶋寧子
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版