マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析5 ファーストキャリアに着眼してみた(2)

分析⑤-2

学歴も大企業も関係なし。
カギは「仕事のやり方」にありました。

「キャリア展望」は、どのようなファーストキャリアづくりによってもたらされるのでしょうか。就職前の学生に聞くと「安定した会社に入りたい」という人も多そうです。やはり、これまでも言われてきた通り「大学を出て安定した大企業に入る」がキャリアを作っていくうえで、理想でしょうか?

今回、キャリア展望スコアと、個人のタイプ、就職した会社の属性、そして最初の仕事の特徴を組み合わせた統計的な分析によって出てきたのは意外な結果でした。高卒・大卒といった学歴も、大企業か中小企業かという企業規模も実は関係ありません。一番関係していたのは、自分が最初に取り組む仕事そのもののありかたでした。仕事そのもの、といっても「仕事の内容」ではなく「仕事のやり方」でした。最初の仕事でその「やり方」を自分で決めることができていた程度が高かった人は、良好な「キャリア展望」を獲得できているのです。新人、若手のころは、どんな仕事をするかを自分で決めることは難しいもの。しかし、その仕事をどのようにやるか、には、ある程度の裁量があるものです。その創意工夫の余地を活かして、自分なりに仕事のやり方を考えて進めていた人が、自分なりの仕事の型や「学びスタイル」を身につけることで「キャリア展望」を獲得していくものと考えられます。

仕事の進め方の裁量の大きい会社を見つける、ということも大切です。就業体験型のインターンシップは有効な手段のひとつ。現場に入って実際の仕事を経験しながら、会社への理解を深めることができます。面接の際にも若手の社員が出てきたら「やりがい」を聞く前に、「日々の仕事でどんな工夫をしているか」を聞くこともできます。最初の仕事選びで重要なのは、有名な企業や業務内容・職種を選ぶことではなく、「その会社で働くときに、仕事のやり方を自分で決められるか」を見極めることなのです。
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text:古屋星斗
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版