マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~Introduction 「広げる×深める」で、キャリアを考える(5)

Introduction 5

転機があった人77.1%。
サイクルシフトの表れといえるでしょう。

例えば、人事異動で、これまでと全く違う仕事を担当するようになった時。重要な仕事やポストを託され、仕事に大きく力が入った時。あるいは、仕事が思うように行かずに、悶々としていた時期。そして、家族が増え、生活のリズムが大きく変わった時等々。そのような状況や大きな環境変化が訪れる中で、仕事に向かう姿勢が大きく変わるような転機を、きっと多くの人が経験しているでしょう。そして、キャリア曲線の形に変化をもたらす大きな要因となっていることでしょう。転機は、サイクルシフトを誘発しているに違いありません。

そうした転機の経験者は77.1%。やはり数多くの人が転機を経験していました。それも、1回ではなく2回以上経験している人が55.0%と過半数を占めています。マルチサイクルに生きている人が、すでにたくさんいることを予見させる結果です。

このような転機は、人にどのような変化をもたらしているのか。それについても、今回の調査では質問しています。回答結果から、3つの変化が浮かび上がってきました。1つめは「働く価値の再発見」。働くうえで大切にしたい価値観や行動指針に気づいたり、自身なりの仕事のやり方、進め方を確立している人がたくさんいました。2つめは「仕事以外の価値の発見」。働くことよりも大切なものに気づいたり、働くこと以外のことに取り組みはじめるような変化です。3つめは「新しいテーマの発見」。新たに興味や関心を持つ題材と出会ったり、社会の問題を身近に感じるようになる、という変化です。こうした変化こそが、サイクルシフトが起きていることの証左です。マルチサイクルに生きる、とは、単に仕事や会社が変わるような物理的な変化を重ねることではなく、自身の考え方や価値観が変わっていくことなのです。

text:豊田義博
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版