Works 198号 特集 ミッドサイズカンパニー 世界での勝ち方
EY|中堅企業は地域の核となることが、成長と世界展開への第一歩
【日本発 世界で勝てる中堅企業をいかにつくるか】日本の中堅企業の現在地
中堅企業が持続的に成長するには何が必要なのか。日本のミドルマーケットに詳しいEYストラテジー・アンド・コンサルティングの山本康之氏に聞いた。

EY Startup Innovation 共同リーダー
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
EY-Parthenon M&Aアドバイザリー パートナー
山本康之氏
金融機関にて法人融資、大企業融資を担当した後に事業承継・M&A業務に従事。外資系コンサルティングファームを経て2023年より現職。ミドルマーケットクライアントに対するアプローチやオーナー向けビジネスに全国各地で対応。
一般に企業は中小企業と大企業に二分されがちだが、EYの山本康之氏はその間に存在する厚みのある企業群にこそ注目してきたという。売上10億円程度から3000億円程度までの企業を「ミドルマーケット」と位置づけて重視している。
「日本では中堅企業が、各地域の経済や雇用、イノベーションの中核を担っています。ここでいう『地域』には東京など都市圏も含まれます。地域ごとに経済循環を生み出す存在として、中堅企業は非常に重要です」
数多くの中堅企業と向き合ってきた山本氏は、成長を続ける中堅企業には共通点があると指摘する。その1つが、意思決定の速さである。
「これは大企業に対して明らかにアドバンテージのある部分です。うまく機能しているオーナー企業では、適切な権限委譲がなされているケースが多く、現場で判断して迅速に動けるからこそスピード感が生まれています」
もう1つの特徴が、地域内でのシェアの大きさだ。全国や世界で高いシェアを持つことだけが企業価値ではない。特定の地域で確固たる地位を築き、地域のサプライチェーンやバリューチェーンに深く組み込まれている企業は、地域経済に大きな影響を及ぼす。たとえば自動車メーカーの工場が立地する地域では、部品メーカーが集積し、特定部品の供給において高いシェアを占める企業が生まれる。また、地域限定で販売される食品などにも、地域内で大きな存在感を放つ企業がある。「そうした企業が存在すれば、原材料の調達先や包装資材の会社、販売網なども地域内でつながります。企業単体ではなく、地域全体の経済エコシステムを支えているわけです」
こうした地域内での強固なポジションは、中堅企業にとって大きな資産となる。一方で、地域市場への依存が強ければ、人口減少による市場縮小が成長の制約となる可能性もある。
人材の活用と外部との共創で成長力を高める
M&Aにも同様の課題がある。買収先の自主性を尊重することは重要だが、結果として買収先を放置してしまうケースも少なくない。「事前にシナジーを生み出すための具体的な仮説を立てず、単純に売上を足し算するだけのM&Aを行っている企業も散見されます。どう掛け算のシナジーを生み出すかを事前に設計し、PMI(M&A後の統合プロセス)を早期にスタートさせることが重要です」
さらに、日本の中堅企業は優れた技術力や製品力を持つ一方で、マーケティング、プロモーション、AI活用、販路開拓のノウハウにおいて課題を抱えるケースが多い。優れた価値を有しながらも、それを域外や新規顧客へ届ける発信力が不足しているのが現状だ。
そこで重要になるのが、人材と組織の力である。中堅企業では、一人ひとりが幅広い仕事を任されることも多い。大企業のように体系的な研修を整えることだけが人材育成ではない。仕事を丸ごと任せるなど人材の生かし方によって、経営や事業を動かせる人材を育てることもできる。
山本氏は、こうした課題も踏まえ、「まずは地域の重要なプレーヤーになることに意味がある」と強調する。「国内や地場に強固な基盤を持たず、いきなり海外へ出て成功するのは容易ではありません。まずは地域で技術力や事業基盤を磨き、そこで確固たるポジションを築く。そのうえで、足りない機能は外部の専門家や資本、他企業とのアライアンスなどを活用して補っていけばいいのです」
そのためには、経営者1人の力だけで組織を牽引する従来型のリーダーシップから転換する必要もある。社内外と協働しながら価値を生み出す共創型のリーダーシップを発揮し、外部のリソースやアライアンスを積極的に活用していく柔軟な姿勢が重要になる。
中堅企業には、地域に根差してきたからこそ持つ顧客基盤、技術、人材、ネットワークがある。それらを基盤に、自社だけでは不足する機能を外部で補完し、新たな市場や事業へとつなげていく。もちろん、少子高齢化を踏まえれば、グローバル化は必須だ。しかし、最初の一歩としては、これも日本の中堅企業が持続的に成長するための1つの道筋であり、日本らしい戦い方ともいえそうだ。
Text=瀬戸友子 Photo=EY Japan提供
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