Works 198号 特集 ミッドサイズカンパニー 世界での勝ち方
独バーデン・ヴュルテンベルク州立機関|地域企業への実効性高い海外進出支援
バーデン・ヴュルテンベルク・インターナショナル(以下、BW-I)は、ドイツ南西部バーデン・ヴュルテンベルク州立の経済・学術振興支援機関だ。同州に拠点を持つ企業の国際化支援を主要活動の1つとしている同機関の取り組みを聞いた。

アネッテ・リュース氏
Ms. Annette Rueß
ドイツには、連邦レベルでドイツ企業の国際化を支援するGTAI(ドイツ貿易・投資振興機関)と、州レベルで企業の国際化や事業活動を支援する機関がある。16の州ごとに主軸となる産業が異なるため、企業の支援活動は基本は州立の機関が中心となって進める。なかでも、シュトゥットガルトを中心とするバーデン・ヴュルテンベルク州と、隣接するミュンヘンを中心とするバイエルン州は、自動車関連産業が集積し、ドイツ経済を支える地域として州立機関の活動も活発だ。
BW-Iは、同州の経済省が監督官庁となり、資金の大半も経済省から拠出される。BW-Iでメディア・PRの責任者を務めるアネッテ・リュース氏はその活動概要を説明する。
「特に中堅企業とスタートアップの国際化支援として、いくつか代表的なプログラムがあります。まずは、対外経済プログラムと呼ばれるデリゲーション(視察団派遣)です。派遣先はASEAN、欧州、アメリカ、中国、さらにはアフリカなども含まれます。バーデン・ヴュルテンベルク州の産業にとって重要な市場、そして企業のニーズと密接に連動した地域や国を訪問します。また、地域の選定に加えて、特定のテーマを掲げることも多いです。たとえば、つい先ごろ行われた派遣は、『e-モビリティ』をテーマとしてスウェーデンを訪問し、現地企業との協働の可能性や新しいアイデアがどこにあるか、といったことを探ることを目的としました。こういった視察団派遣は、年に15回ほど行われています」(リュース氏)
対外経済プログラムは訪問先地域のパートナーと共同運営され、現地の企業訪問、在外ドイツ大使館やドイツ商工会議所などを通じた情報収集、現地企業とのマッチングや商談会なども用意された充実したものだ。企業は登録すれば参加でき、旅費や宿泊費は自己負担となるものの、ほかの費用は州政府の補助金で賄われる。昨今は特定の産業に焦点を絞ることが多くなり、環境技術、自動車、航空宇宙、防衛といったテーマでのデリゲーションが組まれている。
見本市への共同出展を商機のドアオープナーに
リュース氏によると、「政治的同行」を伴うデリゲーションも行われることがあるという。「デリゲーションに州の首相や経済大臣が同行することで、訪問先の国や市場での、さらなるドアオープナーになることが期待されます。政治的同行により、現地の政治関係者だけでなく、現地企業においても、ハイレベルなアポイントメントが取れるようになります。これは非常に素晴らしい付加価値であり、参加企業からもとても高く評価されています」
中堅企業向けの支援策としてもう1つ代表的なものに、国際的な見本市への共同出展がある。「ザ・レンド バーデン・ヴュルテンベルクという名の共同出展です。BW-Iが共同出展ブースを企画・設営し、必要なものをすべて用意します。企業はその大きなブースの一角を予約するだけで、他企業と一緒に見本市に参加することができます。これも非常に人気があります。過去には、インドの『IMTEX』、ドバイのヘルスケア系見本市、フランスの『JEC』などに出展しました。ドイツ国内でも、世界最大の産業見本市であるハノーバーメッセに約70の企業が参加して出展しています」(リュース氏)
企業が自社製品をブースに展示し、顧客と対話するだけではなく、他国からの視察団をブースに招待し、出展企業と交流を深め、マッチングもできるような場をつくっている。リュース氏は言う。「共同出展のメリットは多く、何度も繰り返し出展する企業も多くあります。たとえば、従業員400人ほどの医療機器メーカーは、私たちと一緒にドバイの見本市に4回出展を重ね、その地域における売上を2倍に伸ばすことができました。もちろん、見本市への出展だけが理由ではありませんが、大きなきっかけになっています」
入念な事前準備と目的意識が成否を分ける
デリゲーションにしても見本市への共同出展にしても、事前の入念な準備が実効性を高めるとして、必ず「情報提供イベント(説明会)」が開催される。具体的には、ウェビナーなどを通じて、目的国の文化や異文化間の留意点などを説明し、参加企業の意識を高めてもらうようにしている。また、対象となる産業分野に関する市場データや知識をまとめた情報パッケージが事前に配布される。特にデリゲーションにおいては、複数回の事前ミーティングを行い、必要に応じて個別の相談やアドバイスに対応する。「行った先で何らかの成果を持ち帰るためには、しっかりと市場に向き合い、自分が何を求めているのかを正確に把握していなければなりません」(リュース氏)
また、デリゲーションや見本市とは異なる支援策として、気軽に参加できる各国の情報提供イベントを行うこともある。これは1~2時間で完結するコンパクトなセミナーだが、一方で、州経済省が主宰する「アジア太平洋サミット」や「アフリカサミット」に協力し、1日がかりの大規模イベントとして、各方面のエキスパートが集結し、当該地域の情報を広く提供することもある。
グローバルでの事業展開に必要な人材がいるかどうかも成否を分けるとリュース氏は指摘する。「バーデン・ヴュルテンベルク州の中堅企業、いわゆる隠れたチャンピオンは、規模こそ小さくても、実は既にかなり国際化されています。そこからさらに新しい地域などで国際ビジネスを拡張していくためには、現地でうまく立ち回れる人材が必要です。私たちの役割は、そういった人たちにもしっかりと情報や場を提供し、円滑に事業を進める手助けをすることなのです」
他国と国境を接し、言語や文化的にも国際化のハードルが相対的に低いドイツにおいてなお、BW-Iのような存在があることが「輸出大国」を支えているのだろう。
Text=佐々木貴子 Photo=Works編集部
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