Works 198号 特集 ミッドサイズカンパニー 世界での勝ち方

独シュトゥットガルト商工会議所|会員企業の国際展開と人材育成支援

2026年10月20日

【世界で勝てるドイツの中堅企業の実像】ドイツの中堅企業を支えるエコシステムとは
日本と同じく、ドイツには地域ごとに商工会議所(IHK)が設置されている。シュトゥットガルト商工会議所の外国貿易部門マネジャー、バーバラ・エッフェンベルガー氏と、会員誌編集長であるウォルター・ベック氏に企業支援のあり方を聞いた。

バーバラ・エッフェンベルガー氏、ウォルター・ベック氏、ヴィクトリア・スティッケル氏

シュトゥットガルト商工会議所

外国貿易部門  マネジャー
バーバラ・エッフェンベルガー氏(写真中央)
Ms. Barbara Effenberger

会員誌 編集長
ウォルター・ベック氏(写真右)
Mr. Walter Beck

コミュニケーション部門
ヴィクトリア・スティッケル氏(写真左)
Ms. Victoria Stickel


ドイツに登記している企業は、企業国籍に関係なく、登記地域の商工会議所に加入義務がある。エッフェンベルガー氏によると、「当IHKはドイツ国内でも最大規模の商工会議所の1つで、17万5000社の会員企業を抱えています。会議所は、私やベックさんのような会議所のプロフェッショナル(常勤職員)450人、各会員企業から派遣され、無償で総会等に参加する名誉役員など100人で構成されています」という、中堅企業に匹敵する規模感を有する。

IHKは会員企業から会費を徴収し会議所を運営している。「政府機関ではなく、国家や政府の代わりとして特定の公的な任務を遂行する機関です。あくまでも、産業界における自己行政組織なのです」(ベック氏)

IHKの役割は、企業の国際展開支援、人材育成・教育支援、技術等の専門資格認定、スタートアップ企業の支援、会員誌の発行など多岐にわたり、日本の商工会議所の役割とも類似している。一方、日本と大きく異なる点は、会議所による「人材育成・教育支援」だろう。

「教育・資格部門には約100人の常勤職員が所属しています。ドイツ特有の『デュアル教育システム』運営において、IHKは当地域におけるすべての職業訓練契約の管理・登録を実施しています。加えて、企業側がしっかりと教育を行っているかの品質保証の役割も担っています」(エッフェンベルガー氏)

育成の内容についても、企業側の考えを踏まえつつ、IHKが「専門委員会」などの場を提供し、訓練内容に関する議論を重ねたり、資格認定試験を設定するための調整役を引き受けたりしている。研修生の悩みを聞いて、上司とのトラブルへの調停を行うこともあるという。さらに、常勤職員や企業側からの派遣役員に加えて、分野ごとの専門家など6000人がボランティアとして登録し、資格認定や教育へのサポートを行っている。

各国の概要や規制など基礎情報の提供が最初の一歩

国際化支援においては、外国貿易部門に所属する約30人の常勤職員が対応する。エッフェンベルガー氏によると、企業からの相談に乗り、基礎情報を提供し、しかるべき相手につなぐことを主な役割としている。「たとえば、ドイツ国内での生産コストが高すぎるので、安い場所に生産を移転したいがどこがよいか、といった相談を受けます。アジアを考えている企業、ヨーロッパにとどまりたいので東欧などで探している企業など中身はさまざまです。私たちはそういった要望に対し、行き先候補の国の概要や規制、関係機関といった基礎的な情報を提供します。また、ドイツ国内にあるその国の大使館や領事館を紹介するほか、約93カ国に150ほどの拠点がある在外ドイツ商工会議所(AHK)、あるいは関連しそうな民間企業を紹介することもあります」

会員企業の事業運営・成長を側面支援することも大切な役割だ。ベック氏とヴィクトリア・スティッケル氏を含むコミュニケーション部門は会員企業を訪問し、経営者に話を聞き、その情報をもとに、バーデン・ヴュルテンベルク州のビジネス全般で何が起きているかを会員誌を通じて会員に共有している。「たとえば、自動車産業が縮小傾向にあるなか、各企業は新しい製品や市場を見つけようと努力しています。ポテンシャルの高い防衛ビジネスなどの環境関連、ライフサイエンス分野の情報などを共有することが、各企業のコアスキルが生かせる新領域を検討する一助になるのです」 (ベック氏)

エッフェンベルガー氏も続ける。「IHKは州の省庁・公的機関に対し、企業活動を円滑に進めるために、地域のインフラ整備などのためのロビー活動も行っています。企業の声を代弁し、政府に働きかける仲介役に徹し、企業を側面支援すること。それも私たちの重要な役割なのです」



Text=佐々木貴子 Photo=Works編集部

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