Works 195号 特集 経営とインクルージョン

アフラック|ボトムアップとアジャイルの思想で個人の能力を引き出す経営

2026年04月24日

アフラック生命保険(以下、アフラック)では多様な人財の活躍と社員のエンゲージメント向上を中長期的な企業成長に結びつけるために、社員主導でさまざまな「ボトムアップ」活動が展開されている。一連の取り組みで、「社員一人ひとりを大切にしている会社」と感じる社員が増えるなどの効果も表れた。

島田健太氏(左)と鈴木千夏氏(右)の写真

アフラック生命保険 ダイバーシティ推進部長
鈴木千夏氏(写真右)

データ統括部 データサイエンス課長
島田健太氏(写真左)


社員のエンゲージメントを高め、一人ひとり異なる能力を引き出すための施策として、アフラックが特筆すべきなのは、ボトムアップでの多彩なアプローチだ。社員主導の取り組みをサポートする、ダイバーシティ推進部長の鈴木千夏氏は「社員は、多様な人財が活躍することの必要性は理解していても、その具体的な効果はなかなか実感できません。『ダイバーシティの推進は、確かに企業成長につながる』と感じてもらいたい」と話す。
 
男性管理職が自らの意識を変革するためのネットワーク「Diversity Allies」は、こうしたボトムアップ活動の1つで、2023年に発足した。3期目のリーダーで、データ統括部データサイエンス課長の島田健太氏は「管理職の意識や行動は、社員のエンゲージメントを大きく左右します。当社は比較的、多様な人財が働きやすい職場だと思いますが、それでも上司が部下を評価する際やプロジェクトなどへのアサインの際に、年齢や性別に関するアンコンシャスバイアスが、まったくないとは言い切れません」と話す。
 
管理職が、かつての男性中心の企業社会で培われた「オールドボーイズネットワーク」と呼ばれる価値観から抜け出せれば、部下はこれまで以上に能力を発揮し、結果的に企業としてイノベーションも生まれやすくなるのではないか。管理職自身のそんな思いから、「Diversity Allies」は生まれた。
 
「自主的な活動であるため、企画と運営に中心的に関わるメンバーもいれば、できる範囲で手伝うというサポートメンバーもいます。それぞれが自分のスタンスで参加しつつ、得意分野で持ち味を発揮しています」(島田氏)

管理職やがん経験者多数の自主活動を展開

Diversity Alliesは、当初は男性管理職が立ち上げた組織だが、今では女性の管理職も加わり、現在、20人以上のメンバーが活動している。大きな取り組みの1つが、管理職と社員を対象に毎年実施している「多面観察テスト」だ。管理職が性別や年齢によるアンコンシャスバイアスを持っていないか、育児や介護など制約のある社員に対して適切に評価し成長機会を提供しているか、などをアンケート形式で確認し、管理職は自分の行動について、部下は自分の上司について、それぞれ回答する。そのうえで管理職を、管理職自身の自己評価と部下による他者評価の2軸で評価し、4つの傾向に分類する。「管理職本人のアンコンシャスバイアスに関する自己理解を促し、日々の行動の改善に生かしてもらいたいと考えています」と、島田氏は説明する。アンケートへの回答は任意だが、2025年は社員約4800人のうち、700人ほどが回答したという。
 
このほか毎年、参加者が「多面観察テスト」の結果や日常のふとした疑問や気づきを共有するワークショップを東京と大阪、そしてオンラインで実施している。「管理職のなかには日常業務に追われ、部下の個性や能力を十分に把握し、考えることまではしきれないという人もいるでしょう。私たちの活動はそういう人にこそ役立ててほしいので、多忙であってもなるべく多くの人に参加してほしいと思っています」(島田氏)
 
同社には Diversity Allies以外にも、社員が自主的に参加する活動が多数存在する。2016年より毎年「ダイバーシティカウンシル」のメンバーを全社で公募し、カウンシルメンバーがダイバーシティに関する課題解決に向けた施策の企画・実施や経営陣に対する提言を行っている。また、女性管理職が自己成長や後進育成のための施策を実施するAWLT(Aflac Women Leadership Training)や、「がんの経験者」「育児と仕事の両立」「介護と仕事の両立」などテーマ別のコミュニティもある。2023年には、メンバーの多様性を生かして主体的にダイバーシティ推進を実践している取り組みを表彰する「Diversity Champion Award」を設立した。
 
それぞれの活動については、社長が委員長を務め、各部門の役員で構成される「ダイバーシティ推進委員会」で活動報告をする機会がある。「経営陣がダイバーシティと会社の成長をひもづけることの重要性を理解し、社員の活動を後押ししてきたことが、現在の多様な取り組みにつながっています」(鈴木氏)

アジャイル型の働き方も貢献 心理的安全性を高める

また、ボトムアップのアプローチには、働き方の変革もある。アフラックでは、2019年から、アジャイルの原理に基づくアジャイル型の働き方を全社に展開する「Agile@Aflac」を推し進めてきたことも、職場のメンバーが意見や提案をしやすい企業風土の醸成につながっている。
 
「Agile@Aflac」を象徴するアジャイル組織である「トライブ」では、専門知識を有する各部署のメンバーを部門横断でアサインし、正式なチーム(組織)を組成することで、スピーディに顧客ニーズに合った成果を創出してきた。既存のヒエラルキーにとらわれず、柔軟にプロジェクトを進めることが眼目なので、メンバーに管理職がアサインされることも少なくない。
 
「アジャイル型の働き方の経験者が増えたことで、普段の仕事でもフラットに議論し、スピーディに物事を決めようとする意識が強まりました。メンバーの心理的安全性が高まり、上下関係にとらわれずに意見を言う空気が醸成されたと思います」(島田氏)
 
また、鈴木氏、島田氏はいずれも、ボトムアップの取り組みやアジャイル型の働き方を可能にするのは、軸となる「プリンシプルベースの判断」の存在があってこそだと考える。プリンシプルとは、既存のルールや前例に縛られることなく、コアバリュー(基本的価値観)に基づく行動実践を求めるという原理原則だ。鈴木氏は「経営陣は経営の方向性を打ち出すとき、常にその意義を明確に示します。ダイバーシティについても、トップが『ダイバーシティ推進の基本的な考え方』という理念を打ち出しており、社員が迷ったときにも、理念に立ち返って行動できるのです」と説明した。
 
こうした結果、ダイバーシティ推進部が毎年実施する全社意識調査では「当社は、社員一人ひとりを大切にしている会社だと思う」と回答する社員の割合が、2014年の42.5%から2025年には79.3%へ、「当社には、性別や年齢に関係なく、多様な人財が活躍できる風土がある」との回答割合も、62.2%から82.1%へと上昇した。
 
一方で鈴木氏は「ダイバーシティにあまり興味のない人も、活動に巻き込んでいくこと」を次の課題に挙げた。2025年からは年1回、1週間の「Diversity Week」を設け、関心の薄い層を巻き込むきっかけづくりも始めた。
 
鈴木氏は、最終的には「社員があまり意識しなくとも、当然のように多様な人財が活躍している」組織を実現したいという。「多様な人財が活躍する組織は、イノベーティブな動きが生まれやすいということを社員一人ひとりが実感できるよう、目に見える形で発信したいと考えています」

※アフラックの表記に則り、「人材」を「人財」と表記しているところがあります。

 

Text=有馬知子 Photo=刑部友康