Works 194号 特集 適材適所の葛藤

人的資本戦略における人材の最適配置にマーケティング視点のデータ活用

2026年03月19日

社員の人材データを一元化する「タレントパレット」を展開するプラスアルファ・コンサルティング副社長・鈴村賢治氏は、マーケティング視点での人材データ活用を提唱する。その意味するところは。

鈴村賢治氏の写真

プラスアルファ・コンサルティング
取締役副社長
鈴村賢治氏

中央大学理工学部卒業後、野村総合研究所を経て2007年にプラスアルファ・コンサルティング取締役に就任、2015年から副社長。テキストマイニング活用や社員のパフォーマンスを最大化するためのタレントマネジメントの普及活動など、新ビジネスの創造を推進。


マーケティングでは、顧客のプロフィールや購買記録などをまとめたCRM(顧客関係管理)システムを使い、新規顧客を獲得しながら解約を防ぎ、長く自社のファンでいてもらうための施策を練る。

タレントパレットのシステム開発にあたり、鈴村氏は「マーケティングで顧客を理解するために用いてきたアプローチそのものが、実は会社経営の場面で応用できるのではないか、社員を理解するアプローチに使えるのではないかと考えました」という。「顧客」を「社員」に置き換えて考えると、たとえば優良顧客の分析はハイパフォーマーの分析と同じ意味を持つ。それと同様に、新規顧客の獲得や解約防止の取り組みは、社員の採用や離職防止の施策につながる。

企業には社員の経歴や異動の履歴、勤怠データ、人事評価やスキルなど多岐にわたるデータが存在する。ただ問題なのは、それらのデータが採用の担当部署や研修・人材開発の担当部署で分散し、別々に管理されていることだと鈴村氏は指摘する。「さまざまなデータを一元化したうえで横断的に分析し、マーケティングの視点で社員を徹底的に理解するという発想が、人的資本戦略における人材の最適配置では必要になるのです」(鈴村氏)

AIで「職務経歴書」自動作成 人のコミュニケーションは必須

現在、企業の経営戦略においては、中期経営計画などから逆算して事業の成長に必要な人材を配置する潮流がある。まず「組織」のあり方とそこで求められる「ポジション」を設計し、それに沿って誰を配置したらいいのか、人事戦略を考えていくという順番だ。

ただし、最適配置のためには、経営側から見た「会社のニーズ」とともに、働く側から見た「社員のキャリアの実現」の両立が求められる。そのためにも、テクノロジーが活用できると鈴村氏は言う。

近年、AIが進化した。たとえば最近、タレントパレットに搭載された機能では、AIを活用して人事データを自動で「職務経歴書」の形式としてアウトプットすることで、本人の強みや弱み、志向などがストーリーとして把握しやすくなった。適性検査や過去の人間関係のデータを基にした、配置の提案も可能だという。

一方で、テクノロジーだけで最適配置は完結しない。人材データをさらに豊かにするためには、社員本人にも入力してもらうアップデートが欠かせないと鈴村氏は指摘する。「まず人材データを可視化し、何に使うのか明確にしてデータを入力するメリットを伝え、キャリア形成に資するデータ活用に向けて協力を仰ぐことが求められます」

また、最適配置の「ラストワンマイル」では、動機づけのためのコミュニケーションが必須となる。鈴村氏は「大前提として、今なぜこの仕事が必要で、なぜその社員に担当してほしいのか、そこに納得感がないと人は意欲的に働けません」と強調。「これからの人事部の仕事というのは、人材データの効率的な使い方を啓蒙し、現場のメンバーがポジティブな気持ちで働けるようにしていくことが、大きな仕事になるでしょう」

マーケティングの視点を応用した 人事データ活用イメージマーケティングの視点を応用した人事データ活用イメージ出所:プラスアルファ・コンサルティング作成

※「葛」は正しくは旧字体/下が「ヒ」

Text=川口敦子 Photo=今村拓馬