Works 194号 特集 適材適所の葛󠄀藤
企業の人材ミスマッチの実態とは?量・質的な課題は?適材適所の深層
適材適所を志向しながらも、多くの組織で人材の量・質でミスマッチが起こっている。そんな事実をあらわにしたのが、アビームコンサルティングが行った「企業内の人材ミスマッチ実態調査」(2025年)だ。調査をリードした同社執行役員プリンシパルの久保田勇輝氏に、組織で何が起こっているのかを聞く。

アビームコンサルティング
執行役員 プリンシパル 人的資本経営 戦略ユニット長
久保田勇輝氏
外資系コンサルティングファームを経て、2022年よりアビームコンサルティングに参画。人的資本経営コンサルティングのチームのリーダーとして、国内大手企業に対し、経営・事業戦略と人事戦略を統合した人的資本経営の実践を支援。著書に『人材マテリアリティ─ 選択と集中による人的資本経営』(日経BP)がある。
「企業内の人材ミスマッチ実態調査」(2025年)によれば、調査対象の多くの企業で人材不足と過剰という量的(需給)ミスマッチと、職務要件にマッチしない人材が配置される質的(能力・スキル)ミスマッチが発生している。
久保田氏は、本調査実施のきっかけについて、「クライアント先で起こっている人材のミスマッチの状況を目の当たりにしました。それが多くの日本企業の現実ではないかという問題意識を持ったのです」と話す。
調査対象は、国内企業の人事・経営企画部門に所属し、組織としての意思決定権を有する管理職500人だ。回答者が所属する企業では、ジョブ型人事制度を67.2%が、タレントマネジメントシステムを63.4%が、スキル可視化の取り組みを81.0%が導入しており、「適材適所」への取り組みが進んでいるともいえそうだ。しかし、前述のように日本企業には量・質のミスマッチがあまねく存在するのだ。
ミスマッチは個人だけでなく 組織や人事の仕組みが引き起こす
「量的なミスマッチは、少しでも人材不足が発生している企業では全体の89.8%。一方で過剰が発生している企業にも63.6%あります(図1)。そして、6割以上の企業で人材の不足と過剰が同時に発生しています。社内労働市場の流動性が低く、人材の有効活用ができていない姿が浮き彫りになりました」
[図1]量的ミスマッチの実態
出所:アビームコンサルティング「企業内の人材ミスマッチ実態調査」(2025年)
より深刻な課題は、質的なミスマッチだ。職務やポジションに求められる要件を満たしていない「アンダースペック人材」が発生している企業が調査対象企業の88.2%に上る。同時に、本人の能力に対し、職務やポジションの要件が小さいことがある「オーバースペック人材」が発生している企業が79.8%もあるのだ(図2)。
[図2]質的ミスマッチの実態
出所:アビームコンサルティング「企業内の人材ミスマッチ実態調査」(2025年)
「アンダースペック人材が多い年代は40代、50代でともに回答の5割を超えます。一方、オーバースペック人材は30代で約5割、40代で約6割と、働き盛りのミドル層で優秀な人材の滞留が認められる点は、大きな課題だといえるでしょう」
興味深いことに、アンダースペック・オーバースペックを問わず、質的ミスマッチが発生している企業では発生していない企業と比べて、人材不足も人材の過剰も20~30%以上も多く発生している。
なぜ、このようなことが起こるのだろうか。
「よくあるのは、人材不足ということでその部署に数人の人材を異動させたものの、もともとそこで働いている社員が多忙すぎて教えることができず、単純作業しかやってもらえないケース。これは明らかなオーバースペックとなります。このような場合、その部署で必要な能力やスキルを獲得するような機会を与えられず、本来担ってほしい業務に照らすといつまで経ってもアンダースペック、という結果に陥るのです」
また、職務が明確に定義されていないことも、「オーバースペックにつながりやすい」と久保田氏は指摘する。「クライアント企業で見てきた例でいえば、“(上位職の)〇〇補佐” “副◯◯”という役職で、とても優秀な人がいます。そういう人が、本来は上位職が担う業務のうちの、雑務を含めた意思決定以外を与えられていたりします。潜在的にはもっと活躍できる人材であっても、職務の定義が明らかになっておらず、能力に見合った成果が求められない。囲い込みによる滞留が起こってしまう例です」
一方で、適材適所の視点でいえば、すべてのミスマッチが「悪」というわけではないという。「特にアンダースペックの場合、異動や職務の変更によって、今まさに“挑戦中”であることも多い。挑戦を経て求められる職務に適する人材になる、つまり成長するプロセスでもあるからです。問題は、その状態が何年続くか。私の見解では3年以上続いたらそれはもう完全なミスマッチです。まさに今、成長に向けた努力をしているときなのか。放置されてミスマッチのまま滞留が起こっているのか。それを見極めることが重要でしょう」
このように、ミスマッチは個人の能力や努力だけではなく、組織や人事の仕組みが引き起こす現象でもある。日本企業がやってきたこと・やっていることのどこに問題があるのだろうか。
Text=入倉由理子 Photo=今村拓馬
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