Works 190号 特集 本気の 女性リーダー育成
伸び著しい女性転職者。高い管理職需要
女性の転職動向に変化はあるのか。企業における女性管理職の需要はどうか。インディードリクルートパートナーズHRエージェントDivision カスタマーサービス統括部長の熊本優子に最新の動向を聞いた。
「リクルートエージェント」における2023年度の女性の転職者数は、10年前の2013年度と比べて5倍になり、その伸び率は、転職者数全体と比べても高い。熊本は「特に40代女性の伸び率が顕著です。子どもが成長し、『もう少しチャレンジできるかもしれない』と外部労働市場に出たり、人生100年時代を見据えて自身のキャリアを構築していこうとする意欲が強まっているためだとみています」と話す。
また、転職によって賃金が1割以上増加した女性は2023年度で41.3%に上った。女性はもともと賃金が低い傾向にあるため、外部労働市場に出た場合に賃金が上がりやすい傾向がある。これに加え、人手不足を背景とした採用ニーズの高まりが影響していると熊本はみる。「正社員としてのブランクがあっても、採用につながる例が増えています。企業側にも、家事や育児に関するポータブルスキルや学習意欲、職場での協調性などを含めて評価する動きが出てきた印象があります」
「2030年までにプライム市場上場企業の女性役員比率30%以上」と政府が数値目標を示したことを背景に、管理職候補の募集でも女性に注目が集まっている。リクルートエージェントに相談しに来る女性管理職数も年々増えており、2024年度の面談数は2014年度比で約5倍と、男性に比べて倍以上の伸長率だという。
男女間格差是正の求人数8倍に 製造、金融、建築などで切迫感
出所:リクルートエージェント
女性が少ない職場で女性を増やし、男女間の格差を是正することを目的にした「ポジティブアクション求人」の求人数は10年で約8倍になった。特定の職種や職場で女性の割合が低い場合のみ募集可能で、「女性歓迎」「女性のみ」と明記できる。特に製造、金融、建築など、伝統的に女性が少ない業種で「女性の構成比を増やさないといけない」という切迫感が背景にある。管理職の募集において、女性への注目が集まるのも同様の理由だ。しかし、もともと女性管理職経験者が少ないだけに、その採用難度は高まるばかりだという。
一方、女性管理職の転職先の職種には偏りがある。リクルートエージェントのデータによると、約半数が経理・財務、人事・労務・総務といった管理部門に所属。これに対し、エンジニア系職種は4%程度、営業系職種は10%程度に留まる。
性別による偏りの裏側に、エンジニアや営業は夜間などの緊急対応が求められたり、転勤を経ないと管理職になれなかったりするなど、女性にとって長期的なキャリアを形成しづらい環境であることが見え隠れする。「女性をリーダーとして育成するには、女性に事業の第一線の経験をもっと積んでもらう必要があります。企業側には、多様な人材を生かす制度や職務のあり方の検討などが求められますし、女性自身も、もっと自身の希望を叶えるために貪欲にチャレンジしてほしいです」
Text=川口敦子