Works 190号 特集 本気の 女性リーダー育成
クオータ制は日本に馴染むか 民間手動で女性登用進んだイギリスの事例
欧州議会が2013年、上場会社の非業務執行役員に占める女性の割合を40%以上とする指令案を可決し、女性登用が進む欧州諸国。なかでも特色ある取り組みのイギリスについて、イギリス会社法に詳しい久留米大学教授の本間美奈子氏に聞いた。
Photo=今村拓馬
EU指令案可決を受け、欧州諸国のなかには、役員の一定割合を女性にするクオータ制を法律で導入した国もありましたが、イギリスでは法制化への抵抗感が根強く、企業が自主的に対応し、国はそれを支援する方法を採りました。特徴的なのは、独立したレビュー機関が企業の進捗状況を評価し、報告書で毎年度公表していったことです。
国の後押しでできたレビュー機関「デーヴィス・レビュー」は経済界のトップ経験者や大学の研究者らで構成され、2011年、FTSE100企業*に対し、2015年までに取締役会に占める女性の割合を25%以上に、また上場企業が取締役や上級管理職、従業員の女性割合を毎年度開示するよう会社法の改正を勧告しました。
当初は女性登用への理解が十分でない企業も多く見られたものの、レビュー機関は企業トップを啓発してきました。時には企業に対して課題を指摘し、改善を求める文書を送付。トップだけでなく、取締役会議長や法務・総務部長にまで送ることで、徐々に理解が広がっていきました。2015年公表のファイナルレポートによると、FTSE100企業平均では、取締役会の女性割合は2011年の12.5%から2015年には26.1%に増加しました。
成功要因は計画的な取り組みと 企業主導の自主規制アプローチ
Text=川口敦子 Photo=本間氏提供

本間美奈子氏
久留米大学法学部 教授
早稲田大学大学院で修士号(法学)取得。2001~2003年メルボルン大学、ロンドン大学で客員研究員。専門分野は会社法。研究テーマは、株式会社の管理・運営システム、会計監査人、非財務情報の開示と質の保証など。