Works 193号 特集 採用のジレンマ
採用勝者の共通点。成果を生む「Open型組織」への転換とは
企業にとっては課題が山積する採用市場だが、どんな企業が成果を出しているのだろうか。
エグゼクティブ採用で成功するには、「外部から採用した人材に権限を委ね、信頼して任せることに尽きる」と古田氏は強調する。
同時に、企業としての軸、つまり強みを捨てないことも重要だ。「たとえば日本の大手企業でも、経営の中枢に外の人材を入れ、文化の新陳代謝を起こしているところがあります。成功している企業は、変えるものと残すものを冷静に見極め、伝統や価値観など自社の強みを大切にしながら、変革のために任せるところは任せる。それをしっかりとやり切っています」(古田氏)
そこで重要なのは、経営トップのコミットメントだ。「経営トップが採用に関心を持つ。そしてそれを一過性のイベントにせず、経営が大切にしていることを採用や育成に埋め込めるように組織として仕組み化する。外の人材が力を発揮できる環境を整え、経営トップが自らそれをデザインすることが重要なのです」(古田氏)
Closed型組織からOpen型組織へ 内部人材の支援充実も鍵
Closed型組織からOpen型組織へ
出所:津田作成
実際のところ、日本企業は長きにわたり、新卒で採用した人材を内部で育成し、長期的に配置することを続けてきた。そのため、外部から来た人材に活躍してもらうことは相対的に苦手だ。「変化のスピードが加速する昨今、この『Closed(内部完結)』型組織では経営が立ち行かず、外部労働市場を活用し、社内外の人材を柔軟に組み合わせて組織を運営する『Open(外部接続)』型組織への移行を求められてきました(図:Closed型組織からOpen型組織へ)。そこにいち早く柔軟に対応している企業が、採用でも成果を出しているといえそうです」(津田)
Open型組織の最大の特徴は、「企業の内と外との境界の曖昧さ」だと藤井は話す。「社内育成で賄うだけでなく外部から即戦力を招くのは当然のこと、副業人材や業務委託人材などを取り入れたり、卒業していった人材ともアルムナイとしてつながりを持ち続けたりすることも重要です。あるいは、社員に出向先で武者修行してもらい外の知見を取り込む、といった動きも出てきています」
そうした「出入り自由」の状態を作るには、社内と社外の「浸透圧」をできるだけ同じくすることが求められる。浸透圧を同じくするとはすなわち、評価や報酬、昇進の仕組みなどが誰にとってもフェアであること。内部に長くいる人が得をするような制度であってはならない。キャリア採用で入った人が、組織に長くいる人と比べて情報の非対称性を感じるような状況を避けるために、適切なオンボーディングを行う必要もある。
同時に、内部の人にとっても外に出やすい状況を作り出す必要がある。個人のキャリア形成が、内部に閉じたものであってはならず、外に出ても通用するスキルを身につけさせるよう、支援することも重要だ。
「外とつながることで組織に新しい知が入り、同時に内部人材の刺激にもなる。明確な評価や報酬制度の構築、充実したキャリア支援は一度内部に入った人材にも選ばれ続ける理由になり得ます。これまでのやり方を続ける企業と、外に開こうとする企業。その差がこの先、ますますはっきりしてくると思います」(藤井)
Text=入倉由理子 Photo=刑部友康、今村拓馬
古田直裕氏
縄文アソシエイツ 代表取締役社長
立教大学理学部卒業。カーネギーメロン大学テッパー経営大学院修了(MBA)。カーネギーメロン日本同窓会幹事。巴川コーポレーションで中国投資など海外事業の運営全般に携わる。留学後は、米グレンジャーで中国・インドでの販路拡大や通販会社の海外事業を支援。縄文アソシエイツに参画後、2020年に代表取締役就任。
津田 郁
インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター センター長
金融機関を経て、2011年リクルート海外法人(中国)入社。専門領域は組織行動学・人材マネジメントなどの組織論全般。「人的資本経営の潮流と論点」やリクルートワークス研究所「プレイングマネジャーの時代」の調査・分析を担当。
藤井 薫
インディードリクルートパートナーズ HR 統括編集長
1988年リクルート入社以来、人材事業のメディアプロデュースに従事。「TECH B-ing」編集長、「Tech 総研」編集長、「アントレ」編集長、リクルートワークス研究所「Works」編集部、「リクナビNEXT」編集長を経て、2019年より現職。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
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