Works 193号 特集 採用のジレンマ
エグゼクティブサーチ市場の現状——「氷河期世代」の空白が招く経営人材不足
難度の高い求人の1つ、エグゼクティブサーチの現状はどうだろうか。
古田直裕氏
縄文アソシエイツ 代表取締役社長
立教大学理学部卒業。カーネギーメロン大学テッパー経営大学院修了(MBA)。カーネギーメロン日本同窓会幹事。巴川コーポレーションで中国投資など海外事業の運営全般に携わる。留学後は、米グレンジャーで中国・インドでの販路拡大や通販会社の海外事業を支援。縄文アソシエイツに参画後、2020年に代表取締役就任。
「氷河期世代」の空白が エグゼクティブ人材不足に
縄文アソシエイツ代表取締役社長の古田直裕氏によれば、「かつてエグゼクティブサーチの依頼は、外資系を除くと、オーナー企業や新興市場への上場企業が中心でしたが、今は伝統的大企業のCxOポジションの採用も珍しくありません。デジタル化やサステナビリティ対応、グローバル戦略など、経営課題が複雑化し、社内にいない領域の人材を外に求める動きが加速しています」と、同特集内コラム「正社員から正社員への転職が加速。求人数はコロナ前の2倍」の藤井と異口同音に話す。
エグゼクティブ採用で特に人手不足が顕著だ。多くの企業が経営層人材の空白に直面しているという。空白の主たる原因は、「氷河期世代」といわれる1990年代半ばから2000年代前半に、人を積極的に採用し育成してこなかったことだ。氷河期世代は今、50歳前後。企業で役員あるいは役員候補になる年齢だ。
「そうした背景もあり、経営人材の不足が表面化し、限られた人材を企業同士が取り合っているような状態です」(古田氏)
企業は今、その不足を埋めるために、あらゆる手段、あらゆるリソースを探っている。
まず、競争を覚悟で他社から獲得しようとする動きだ。採用ブランディング力を磨き、トップ自らが口説きに出る。「候補者の関心は、以前は“どの会社で働くか”が中心でしたが、今は“誰と働くか”に移っています。候補者は、社長や経営陣の思想、対話の誠実さまで含めて判断するようになっています」(古田氏)
また、氷河期世代を採用し続けていた業界に目を向ける企業も増えている。「すべての業界が同時に採用を絞ったわけではありません。たとえばIT企業や小売りなど、バブル崩壊後もしばらく採用を続けていた業界では、一定の人材が育っています。そうした企業から採用しようとするケースも目立ちます」(古田氏)
女性や外国籍の人材など、「新たな候補者のプールにも目を向ける企業もある」(古田氏)という。特に、日本企業が本格的に女性総合職を採用し始めたのは2000年代以降だが、今の40~50代には、着実にキャリアを積み上げてきた女性が一定数いる。しかし、女性に平等な機会を与えていない企業は依然としてあり、次世代リーダーとしての可能性を持ちながらも適切なポジションに就いていない女性はまだまだいる。
そして、1つ下の世代の40代前半に注目する動きも目立っている。「留学やグローバル企業での経験を経てたくましくキャリアを築いてきた若手は多い。こうした層を社内外から抜擢して経営層に送り込む。結果的に、経営の若返りが進んでいます」(古田氏)
「権限」を与えない企業には グローバル人材が定着しない
しかし、外部人材を迎える動きが活発化する一方で、特に海外での現地幹部候補者やスタートアップ出身者が入社後、定着しないという課題も生じているという。
古田氏が原因として指摘するのは、「権限」の問題だ。「日本では意思決定の最終権限は本社の会議体や人事部に集中していたり、曖昧だったりすることも多い。海外のように明確な権限が与えられ、結果に対して責任を持つことを普通としてやってきた人にとっては、働きにくい環境になっている可能性が高いのです」
Text=入倉由理子 Photo=刑部友康
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