リモート・マネジメントモデル第3章 チーム・マネジメント for リモートワーク

Point1 「ワークサイト」というバーチャルな職場の設計

ワークサイトとはマネジャーとメンバー間、あるいはメンバー同士のコミュニケーションを促し、互いの仕事の進捗を確認し、協働したりお互いのアウトプットの受け渡しを行ったりできる、バーチャルな「職場」である。リモートワーク環境では、ICTを駆使して仕事上必要となるコミュニケションの質と量を担保する必要があるが、その際に、活用するICTツールを単なるコミュニケーションツールとしてではなく、ワークサイトと見立てて設計することが重要になる。

<ワークサイトに必要な機能と例>
・ビジネスチャット・SNSなどのコミュニケーションプラットフォーム
ChatworkTeamsSlackZoomなど)
・全員が「今、何をしているか」を相互に確認できるスケジューラ
OutlookGoogleカレンダー、iCalなど)
・ファイルやドキュメントを共有し、協働作業ができるクラウドストレージ(クラウド上で操作でき、ファイルの変更・更新履歴が管理できるもの)
G SuiteOneNoteTeamsDropboxなど)
・仕事の受け渡しを管理できるプロジェクト管理プラットフォーム
RedmineTrelloBacklogなど)

Point2 ワークサイトにおける作法の策定

ワークサイトにおいて守るべき「作法」を決め、チームメンバー全体がその作法を守ることが重要である。たとえば、スケジュールについては会議や外出だけでなく1人で進めるデスクワークの内容もすべて記入すること、また、スレッド設計の方法、資料のタイトルのつけ方、仕事の開始と終了のタイミングでチェックイン/チェックアウト・コメントをすること、呼びかけや発言の際に、対面のとき以上に配慮あることば遣いをすること、などである。顔が見えないからこそ起こり得る二度手間や手戻り、意思疎通の目詰まりを発生させず、お互いが気持ちよく働けるような工夫が必要である。
また、全員がITリテラシーを継続的に高めることも必要である。新しいICTツールなどを導入するときにはガイダンスを実施する、事前に使い方のビデオを視聴するなどの手間をかけることが望ましい。

Point3 仕事の進捗管理

リモートワーク環境下では、それぞれの仕事は基本的に「非同期」で進む。なので「期日」と「受け渡し」の管理、そして「記録」がことのほか重要である。その前提として、メンバー間に「相手は期日までに確実に問題のないクオリティで仕事を仕上げてくれる」という信頼関係が必要となる。マネジャーはメンバーにこの重要性を周知し、チーム内で常に仕事の進捗の共有や納期が遅れるときの報告が率直におこなわれるカルチャーを作る必要がある。日次・週次の「進捗状況の報告」のルールを作っておくことも重要である。
また、マネジャーは発生するすべてのタスクの「オーナー」を決め、担当が不明確なままこぼれてしまう仕事をそもそも発生させないことが大事である。

Point4 オンライン会議の生産性向上

リモートワーク環境では、「必要な会議を、必要な人数で」という感覚が重要である。それぞれの仕事への集中を促すためにも、会議の回数を不必要に増やしすぎず、参加者を厳選する必要がある。
今のところ、ICTツールの不具合や通信環境の不備などはいつでも起こり得るので、会議の内容を記録し、後からキャッチアップできるようにしておくことが重要である。ただし、記録に手間をかけるのではなく、自動化機能を利用し、クラウドツールを駆使してドキュメントなどをその場で手直しし、アップデートすることでより生産性を高めることが必要だろう。

Point5 チームメンバーの異変に気付く

リモートワークでは人々は時に孤独に陥る。マネジャーは率直なコミュニケーションで、メンバーのメンタル・フィジカルの状態を常に把握する必要がある。失敗やミス、進捗の遅れなどが、過度に個人を追い詰めないような目配りが重要である。また、メンバー間でのコミュニケーションで、相手の様子の変化に気づいたときにはマネジャーに知らせることを推奨する。
また、リモートワークでは、過剰労働や常時接続によるストレスも発生しやすい。これらも含めた働き過ぎへの配慮や健康管理も重要になる。

Point6 仕事外のコミュニケーション

仕事における率直で遅滞なきコミュニケ―ションを行うためには、前提として組織のヒエラルキー感覚をなくす必要がある。年齢や役職に拘泥することなく誰もが発言できる場の空気を醸成することはマネジャーの役割になる。
また、仕事の話だけでなく、雑談や他愛のない情報交換なども、日ごろからオンラインで行うことは、仕事上のコミュニケーションをしやすくする効果がある。オンラインで会話することに全員が「慣れる」場を作ることが求められる。小さなことではあるが、顔文字やスタンプなどを使って感情をうまく伝えること、「いつまでに返事する」といった短い返信をすることなど、ICTならではの「心地よい」コミュニケーションにチーム全員が習熟していく必要があるだろう。

Point7 チームワークを高める非日常の演出

一緒にいない時間が増えるからこそ、チーム全体で集まる定期的な場の重要性が高まる。「キックオフ」「祭り」「フェス」などのオフサイトイベントをセッティングし、それを楽しく演出することが求められる。チームビルディングのための各種ワーク・お互いの長所や特性を知るためのアクティビティなどを組み込み、そこにゲーム要素を加えることで、メンバーどうしの距離感がぐっと縮まり、また、相手への配慮が自然にできるようになるだろう。なお、オフサイトイベントを企画するにあたっては、多様な人々が参加できるように、開催する時期・曜日・時間帯などを変えていくことが望ましい。