働き方改革時代にマネジャーは何をすべきか長時間労働のマネジャーは、高い業績を上げていない

長時間労働の営業社員は、高い業績を上げている

営業社員の労働時間と目標達成率との関係を確認してみよう。
取得した人事データには、2017年の1年間における、四半期ごとの各営業社員の労働時間と目標達成率のデータが存在する。ただし、労働時間が極端に短いまたは長い場合や、目標達成率が極端に高い場合、もともとのデータが欠損値となっている場合には、当該データを欠損値として処理して分析している。
まず、労働時間と目標達成率の散布図をとった。(図表8)

図表8 営業社員の労働時間と目標達成率の分布

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出典:人事データをもとに筆者作成

この散布図をみると、労働時間と目標達成率には正の関係があることがみてとれる。労働時間と目標達成率の相関係数は0.139となる。
四半期の労働時間の量でグループを作り、グループ毎の平均目標達成率を算出すると、その傾向はさらに鮮明になる。具体的には、四半期の労働時間が400時間以上450時間未満の営業社員の平均目標達成率は93.3%だ。450時間以上500時間未満では94.1%、500 時間以上550 時間未満で95.8%、550時間以上600時間未満で102.5%、600時間以上で111.1%となる。労働時間が長い営業社員ほど高い業績を上げているのである。

労働時間が長いマネジャーは、必ずしも高い業績を上げていない

次に、その営業社員の上司であるマネジャーについても分析してみよう。
研究協力企業では、各営業社員を束ねるマネジャーが存在している。マネジャーが管轄する部下の人数は部署によって異なるが、概ね1人のマネジャーが数名の営業社員を担当している。マネジャーの役割は、営業社員が高い受注決定額を達成できるよう、その環境を整備し支援することである。
これを踏まえると、マネジャーが管轄する部署の営業社員が達成した目標達成率の総計が、マネジャーの業績に相当するものと考えてよいだろう。
マネジャーの業績とマネジャー自身の労働時間にはどのような関係があるかをみる。(図表9)

図表9 マネジャーの労働時間と担当部署目標達成率の分布

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出典:人事データをもとに筆者作成

すると、必ずしも長い労働時間のマネジャーがよい業績を残しているわけではないことがわかる。たとえば、担当部署の目標達成率が200%近いマネジャーを抽出すると、その四半期の労働時間は600時間前後も一定数いるものの、500時間台前半に多く分布している。さらに600時間以上の長時間労働を行っているマネジャーの目標達成率は100%近くに多く分布している。
実際にマネジャーの四半期の労働時間と担当部署の目標達成率の相関係数は-0.02となっており、ほとんど関係性がないといえる。マネジャーの長時間労働は必ずしも担当部署の高い業績につながっていないのである。