働き方改革時代にマネジャーは何をすべきか企業内部で起こっていること

企業内部では何か起こっているのか

以上、マクロ統計を用いて、労働時間の変動が経済にどのような影響を与えてきたかを考察した。
ここでは、やや視点を変えて、企業における従業員の労働時間と企業業績との関係について、実際に企業内部ではどのようなことが起こっているのかを分析する。
本稿で分析の対象としている企業について、まず説明しておこう。今回、研究を行うにあたり、ある1つの企業(以下、「研究協力企業」という)と研究協力契約を結び、当該研究協力企業の一人ひとりの社員の労働時間のデータやその社員が達成した業績のデータ(人事データ)を取得している。
この研究協力企業はサービス業であり、他企業に向けて特定のサービスを提供しているBtoBの企業である。研究協力企業は他企業に対してサービスを提供し、サービスの終了とともに他企業から研究協力企業に対して支払いが行われる。
研究協力企業の営業社員は、他企業にサービスを発注してもらうための営業を行う。営業の結果、サービスの受注が決定すると、その後サービスが適切に提供されているか、サービス終了時まで監督を行うこととなる。研究協力企業の売上はこのような営業社員が獲得した受注決定額の集積となるため、各営業社員の受注決定額の多寡がその社員の業績とみなされる。

目標達成率を成果指標として分析を実施

今回は、この営業社員に着目して、営業社員の業績が投入される労働時間とどのような関係を示しているのか、分析を行う。なお、人事や経理等の間接部門に所属する社員などは、業績に値するものが定量的に把握できないため、今回の分析の対象外とする。
各営業社員が達成した業績を定量的に評価する場合、最も簡単な指標は受注決定額を対前年比でどのくらい増やしたのかという指標であろう。しかし、研究協力企業では、組織の改編が定期的に行われており、担当エリアなどが毎年変わってしまう。また、前年からの増減で業績の評価を行えば、前任者の力量が、後任の営業社員の業績評価に影響を与えてしまいかねない。
このため、研究協力企業では、このようなエリアの変更など定性的な情報を勘案し、会社が各営業社員に対して、受注決定目標額をそれぞれ設定している。そして、受注決定額を受注決定目標額で除して得た率を目標達成率として算出し、これを成果指標として人事考課を行っている。
今回、分析を行うにあたっては、この目標達成率を各社員の業績の代理変数として用いることとする。