HR Tech Roundup  海外のHRテクノロジー最新ニュース米国で増えるVR研修の学習速度は講義形式の4倍速、LinkedInに掲載の求人の2割は大卒資格不問、ほか

海外HR Techニュースリリースまとめ(2022年12月)

世界各国で雇用した人材を顧客企業に派遣する「EOR」サービスのDeelが、給与計算およびHCM(人的資本管理)のPayGroupを買収した。
LinkedInに掲載されている求人広告のうち、「4年制大学の学位不問」の割合は20%と前年の15%から増加した。
NACEの調査によると、2021年卒学生の55.3%が卒業後6カ月以内にフルタイムで就職した。

  • 【注目トピック】

    米国でVR研修プラットフォームの利用が拡大、学習速度は講義形式の4倍速

    フロントラインワーカーや、コーポレートスタッフ向けのリーダーシップ力、安全、カスタマーサービスなどに関する研修に、VR(仮想現実)コンテンツを活用する企業が増えている。VR ヘッドセットやPCを使ったVR研修をサポートする代表的なサービスには、Talespin、Pixaera、SweetRush、Strivrなどがある。
    Talespinは、没入型学習コンテンツの作成、配信、効果測定を行うプラットフォームである。プログラミングや3Dデザインの知識やスキルがなくても「CoPilot Designer」のオーサリング(文字や画像、音声、動画などを組み合わせて編集すること)機能で、デジタル学習コンテンツを作成できる。人工知能を搭載した3Dの「バーチャルヒューマン」とリアルな会話を行い、「コンフリクトマネジメント」「納得と共感のコミュニケーション」「バーチャルリーダーシップ」「効果的なパフォーマンスフィードバック」などを学ぶことができる。Accenture、AIA Hong Kong & Macau、Farmers Insuranceなどが利用している。

    英国発のPixaeraは、没入型シミュレーションゲームを行い、安全、リーダーシップ、メンタルヘルスなどの研修を受講できるプラットフォームである。「Pixaera Learn」は、人事が受講状況などをリアルタイムで確認できる。Shell、BP、GEなどが利用している。
    PwCの調査によると、VR研修での学習速度は講義形式の4倍速く、また研修中の受講者の集中度は1.5倍高いという。企業は、対面で講師を務める従業員を特定の場所に派遣する必要がないため、研修費を削減できる。

  • 【M&A】

    Deel、PayGroupを買収

    世界各国で雇用した人材を顧客企業に派遣する「EOR」サービスのDeelは、給与計算およびHCM(人的資本管理)のPayGroupを1億2100万豪ドル(約107億円)で買収した。PayGroupはオーストラリア、ニュージーランド、インド、フィリピン、シンガポール、マレーシア、日本で、NikeやSubwayといった大手企業や人材派遣会社など、3000社以上に給与計算処理サービスを提供する。年間の取扱高は約120億豪ドル(約1兆625億円)である。
    Deelは2023年上半期に、両社のソリューションを統合した新しいプラットフォームを発表する予定である。共同創設者兼CFOであるフィリップ・ブアジズ氏は、「PayGroupの買収により、当社の顧客基盤が拡大し、世界の給与計算分野におけるリーディングカンパニーとしてのポジションが強化される」と述べた。(11月21日 Business Wire)
    https://www.businesswire.com/news/home/20221121005278/en/HR-Company-Deel-Completes-PayGroup-Acquisition


    Apploi、シフト管理システムのOnCallを買収

    医療人材採用プラットフォームのApploiは、シフト管理システムのOnCallを買収した。多くの医療機関は、複数の拠点での正規および非正規スタッフの人材確保、スケジュール管理や人材配置を手作業で行っている。この買収により、Apploiは医療機関のシフト管理を簡素化し、計画的な人員配置をサポートする。Apploiは、7000以上の医療機関を顧客に持つ。2020年には、オンボーディングおよびクレデンシャルプラットフォームのHealthgigを買収し、HCMの領域に参入した。(11月15日 PR Newswire)
    https://www.prnewswire.com/news-releases/apploi-acquires-oncall-to-help-healthcare-employers-manage-shifts-301678862.html

  • 【決算】

    Info Edge、2023年度第2四半期決算は、前年同期比76.5%の増収

    インドで求人求職サイトなどを運営するInfo Edgeは、2023年度第2四半期決算(2022年9月30日締め)を発表した。売上高は、前年同期比76.5%増の72億7000万ルピー(約115億円)となった。買収した採用管理システムのZwayamやアセスメントプラットフォームのDoSelectの売上高も含む。
    Info Edgeは、インドの求人求職サイトNaukri.com、不動産情報サイト99acres.com、結婚情報サイトのJeevansathi.com、教育情報サイトのShiksha.com、エグゼクティブサーチ事業のQuadrangle、中東の求人求職サイトNaukrigulf.comを運営している。

    セグメント別の売上高は、採用ソリューションが同59.5%増の43億5820万ルピー(約69億円)、99acres.comが同44.4%増の6億9710万ルピー(約11億円)、その他が同121.4%増の9億8590万ルピー(約15億円)だった。
    Info Edgeは今年10月、プログラミングやウェブ開発などのオンライン講座を提供するコーディング学習プラットフォームCoding Ninjasの株式保有率を26.1%から51%に引き上げ、子会社化した。Coding Ninjasは、4万人超の学生や卒業生、1000人以上のキャンパスアンバサダー、2000人以上のティーチングアシスタントからなるエコシステムを構築している。(11月18日 SIA)
    https://www2.staffingindustry.com/row/Editorial/Daily-News/India-Info-Edge-reports-revenue-up-76.5-in-fiscal-second-quarter-63721


    Kanzhun、2022年第3四半期決算は、前年同期比2.7%の減収

    中国最大級の求人マッチングアプリ「BOSS直聘(BOSS Zhipin)」の運営会社であるKanzhun(看准)は、2022年第3四半期決算(2022年9月30日締め)を発表した。売上高は、前年同期比2.7%減の11億7860万元(約224億円)、純利益は同26%減の2 億 1170 万元(約40億円)であった。
    売上高の内訳は、ネット求人サービスが同2.7%減の11億6450万元(約221億円)、その他サービス(主に求職者向けの付加価値サービス)が同3.4%減の1410万元(約3億円)だった。
    平均月間アクティブユーザー数(アプリに1回以上ログインした求職者と法人ユーザー)は同12.5%増の3240万人だった。過去12カ月に有料のネット求人サービスを利用した法人ユーザー数は、前年比7.5%減の370万人となった。
    第4四半期の売上高は、前年同期比0~3.8%減の10億5000万~10億9000万元(約199億~207億円)となる見通しである。(11月29日 GlobeNewswire)
    https://www.globenewswire.com/en/news-release/2022/11/29/2563785/0/en/KANZHUN-LIMITED-Announces-Third-Quarter-2022-Financial-Results.html

  • 【調査】

    LinkedIn調査、大卒資格不問の求人は全体の2割に

    LinkedInに掲載されている求人広告のうち、「4年制大学の学位不問」の求人広告の割合は20%と、前年比で5ポイント増加した。
    Burning Glass Instituteが行ったオンライン求人情報数百万件のデータ分析においても、大卒学位不問の求人の割合は2021年で56%と2017年の49%から増加しており、企業の「スキルファースト(スキル重視)」の採用への移行を表している。
    米国では、成人の約3分の2が大卒資格を持っていない。いわゆる「紙の天井(paper ceiling)」を破ることで、企業はより多くの人材にアクセスできる。
    また、学位の要件を緩和することで、多様な人材の採用が可能となる。インクルーシブ採用のコンサルティングを行う非営利団体Grads of Lifeマネージングディレクターのエリス・ローゼンブラム氏は、「多様性向上の鍵は、4年制大学というフィルターをなくすことにある」と主張する。人種別の4年制大卒資格保有者の割合は、18歳以上のアフリカ系アメリカ人が24%、ラテン系アメリカ人ではわずか17%となっている。
    さらに、より多くの人がミドルスキルを要する職務(高校以上の教育や訓練を要するが、4年制の大卒学位は不要)に就けるようになり、中間所得層の拡大にもつながる。(11月30日 LinkedIn Talent Blog)
    https://www.linkedin.com/business/talent/blog/talent-analytics/more-jobs-dont-require-college-degrees

    NACE調査、2021年卒学生の55.3%が卒業後6カ月以内にフルタイムで就職

    NACE(全米大学就職協議会)の調査によると、大学卒業後6カ月以内(2021年7月1日~12月30日)にフルタイムで就職した2021年卒学生の割合は55.3%で、2020年卒学生の割合(53.6%)を上回った。しかし、パンデミック以前の水準にはいまだ達しておらず、2019年卒学生の就職率59.7%を下回っている。調査は米国の大学290校の卒業者68万6000人のデータにもとづく。(11月29日 NACE)
    https://www.naceweb.org/about-us/press/college-class-of-2021-makes-gains-in-jobs-but-doesnt-recoup-ground-lost-to-pandemic/

  • 【資金調達】

    Beekeeper、EGS Beteiligungenなどから5000万ドルを資金調達。「デスクレスSaaS」のBeekeeperは、紙ベースでの業務プロセスを自動化した。小売や飲食、製造、建設、物流、医療、警備など現場で働くノンデスクワーカーはアプリでシフト変更、給与明細、安全管理に関する研修用動画などを確認できる。企業側は、現場のマネジャーや本社スタッフとノンデスクワーカーのリアルタイムでのコミュニケーションを促進し、従業員の生産性や安全性を向上させることができる。
    https://www.businesswire.com/news/home/20221109005241/en/Frontline-Success-Leader-Beekeeper-Lands-50-Million-Series-C


    eRoad(易路)、投資機関から10億元(約190億円)を資金調達。資金は、中堅・大企業向けシステムの改善に充てる。中国のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)型人事管理システムの易路は、採用、オンボーディング、給与計算、人事管理、データインサイトなどのサービスを、中国310都市、世界20カ国以上で提供している。易路はこれまでに、Zhejiang Silk Road FundやIvy Capitalなどから、合計1億6900万ドルを資金調達している。

    https://aimgroup.com/2022/11/24/china-based-eroad-raises-140m-to-upgrade-hr-paas-products/

TEXT=杉田真樹