HR Tech Roundup  海外のHRテクノロジー最新ニュースNY市が採用活動でのAI利用の規制法を施行、Sapia.aiがチャット面接での生成AIの不正利用を検出、ほか

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Sapia.aiは、チャット面接での生成AIの不正利用をリアルタイムで検出する新機能を発表した。
プライベートエクイティ投資会社のSilver Lakeが、Qualtricsを125億ドルで買収した。
また、CV-Libraryの調査では、英国の社会人の約半数が次の転職活動でChatGPTを利用する意向を示した。

    • 【注目トピック】

      NY市、AIを利用した採用活動を規制する法律を7月に施行、各州で規制強化の動き

      米ニューヨーク(NY)市のDCWP(消費者・労働者保護局)は2023年7月5日に、採用や昇進の判断におけるAI(人工知能)の利用を規制する法律「Local Law 144」を施行した。
      同法は、2021年に成立し、2023年1月1日に施行される予定だったが、多数のパブリックコメントが寄せられたため延期されていた。
      Local Law 144は、NY市内でAIや機械学習などの「自動雇用決定ツール(AEDT)」(※)を利用する企業や人材紹介会社に適用される。企業は利用開始前に、性別や人種、民族に基づくバイアスの有無を第三者機関が分析するバイアス監査を受け、その結果(AEDTが収集するデータの種類など)を自社のウェブサイトに掲載しなければならない。また応募者や従業員に、利用について事前通知することが義務づけられる。これに違反した企業は、500~1500ドルの罰金が科せられる。企業は、バイアス監査を毎年実施する必要がある。
      米国では2020年にイリノイ州が初めて、動画面接の分析におけるAIの利用について事前通知と応募者の同意の取得などを義務づける法律「Artificial Intelligence Video Interview Act(AI動画面接規制法)」を施行した。2022年以降、NY州やカリフォルニア州、マサチューセッツ州などでも、AIの利用を規制する法案が提出されている(下図)。
      採用活動における生成AIの利用も増えており、今後規制強化の動きが広がると考えられる。


      採用におけるAI利用の規制の動き
      地域 法律・法案名 概要 規制の対象 法律施行・法案提出日
      イリノイ州 Artificial Intelligence Video Interview Act(HB 2557) 動画面接の分析におけるAIの利用について、事前通知や応募者の同意の取得などを義務づける AIの利用企業 2020年1月1日施行
      メリーランド州 Labor, and Employment —Use of Facial Recognition Services Prohibition(HB 1202) 面接における顔認識技術の利用について、事前通知や応募者の同意の取得を義務づける 利用企業 2020年10月1日施行
      ニューヨーク市 Local Law 144 採用や昇進におけるAEDTの利用について、事前通知やバイアス監査などを義務づける 利用企業と人材紹介会社 2023年7月5日施行
      ニュージャージー州 Assembly Bill 4909 AEDTの利用について、事前通知やバイアス監査を義務づける 利用企業 2022年12月法案提出
      カリフォルニア州 Assembly Bill 331 採用や昇進、教育、医療サービス、医療保険、賃貸契約の入居審査などにおける自動判断システム(ADS)の利用について、事前通知やバイアス監査などを義務づける 利用企業と開発企業 2023年1月法案提出
      ニューヨーク州 Assembly Bill A00567 AEDTの利用について、事前通知やバイアス監査などを義務づける 利用企業 2023年1月法案提出
      マサチューセッツ州 Act Preventing a Dystopian Work Environment(HD 3051) AEDTや従業員監視ツールの利用について、事前通知やバイアス監査などを義務づける 利用企業と従業員データを収集する開発企業 2023年2月法案提出
      ワシントンD.C.地区 Stop Discrimination by Algorithms Act(B25-0114) 採用、信用調査、教育、住宅、医療などにおけるAIの利用について、事前通知やバイアス監査を義務づける 利用企業 2023年2月法案提出


    • 【機能・サービス】

      Sapia.ai、チャット面接での生成AIの不正利用をリアルタイムで検出する新機能を発表

      チャットで面接を行うスマートチャットプラットフォームのSapia.aiは、面接での生成AIの不正利用をリアルタイムで検出し、フラグを立てる新機能を発表した。AIが生成した可能性が高い回答には、リアルタイムでアラートが表示され、候補者は提出前に回答を修正することができる。過去にSapia.aiを利用した250万人の候補者の1200万件以上の回答に基づいて、不正を検出する。Sapia.aiチーフデータサイエンティストのブッディ・ジャヤティレケ博士は、「GPT-2、GPT-3、ChatGPTが生成した何千もの回答を用いてテストを行った結果、95%以上の精度で人間が作成した文章とAIが生成した文章を区別することができる」と説明した。(6月20日 Business Wire)
      https://www.businesswire.com/news/home/20230619155808/en/Sapia.ai-Launches-World-First-Proprietary-Model-to-Detect-AI-Generated-Content-in-Online-Chat-Interviews

    • 【M&A】

      プライベートエクイティ投資会社、Qualtricsを買収

      プライベートエクイティ投資会社の Silver Lakeが、カナダ年金制度投資委員会と共同で、SAPからQualtricsを125億ドルで買収した。
      Qualtricsは、採用前アンケート、新人研修のフィードバック収集、研修の評価、多面評価、意識調査などをサポートする従業員の体験向上プラットフォームで、1万9000社超の企業が利用している。Silver Lake はAirbnb、Klarna、Getirなどテック系企業に出資している。Qualtricsのジグ・セラフィンCEOは、「Silver Lakeは、当社の事業やエクスペリエンスマネジメント(XM)に対するビジョンについて深く理解し、戦略や経営に関する専門知識もある。今後はイノベーションを加速し、XM領域におけるリーダーとしての地位を強化していく」と話した。(6月30日 Unleash)
      https://www.unleash.ai/hr-technology/silver-lake-qualtrics-acquisition/

    • 【調査】

      CV-Library調査、英国の社会人の約半数が転職活動でChatGPTを利用する意向

      英国の求人求職サイトのCV-Libraryが社会人4000人を対象に実施した調査によると、求職者の42.7%が次の転職活動でChatGPTを利用する意向を示した。利用目的は「自分のスキルに合う仕事を探す(44.6%)」「履歴書の作成に役立てる(41.6%)」「カバーレターの作成に役立てる(37.0%)」「応募する職務の理解を深める(35.2%)」「面接の練習を行う(32.2%)」「上記すべて(38.9%)」であった。
      CV-Library創設者兼CEOのリー・ビギンズ氏は、「AIは書類選考、候補者の選別、面接といった企業の採用業務を自動化・合理化している。求職者がAIを活用することは当然であり、理解できる。履歴書に記載する実績を誇張するなどのChatGPTの悪用が懸念されているが、正しい活用法を促進する規制が導入されれば、ChatGPTは転職活動において大きな助けとなるだろう」と話した。(6月19日 CV-Library)
      https://www.cv-library.co.uk/recruitment-insight/almost-half-uk-professionals-fully-intend-use-chatgpt-next-job-search-63-dont-feel-misleading-potential-employers/



(*)仕事への適性の測定、入社後の活躍の予測、スキルや資質による分類などを行う、AI、機械学習、統計モデリング、データ解析を用いた計算ツールを指す。

TEXT=杉田真樹