海外におけるインターンシップ最新事情将来有望な人材と早期に関係構築するデロイト社のインターンシップ

4大会計事務所の中で経営コンサルティングも提供するデロイトは、将来を期待できる学生をより早く特定して確保するため、インターンシップに注力する。同社のタレント・ベストプラクティス&イノベーションディレクターのダイアン・ボルハニ氏と、早期人材発掘プログラムマネジャーのケリー・ブラストロム氏にその意図をうかがった。

学年別プログラムで有望株を惹きつける

デロイトでは、企業文化と適合していて長期的に能力を発揮できそうな学生とより早い時期に出会い、関係を構築する「早期人材発掘プログラム(Early Identification Program)」に注力しています。その一環として複数のインターンシッププログラムを用意し、大学生が入学してから卒業するまで様々なタイミングで参加できるようにしています(下表)。

1年生は、インターンシップ的な活動よりも当社との関係づくりに重点を置きます。
2年生からは、社内サービスや顧客サービス分野でのインターンシップへ門戸を開いています。
3年生から4年生になると十分なビジネス関係、工学・テクノロジー関係の専門知識を身につけているので、顧客サービス分野でより本格的な実務体験を積んでもらいます。
全員ではありませんが、2回以上当社のインターンシップに参加する学生もいます。

item_internship_vol08_08_img1.png

約300のターゲット校から多様な人材を採用

主なターゲット校は約70校ですが、訪問するのは300校以上です。インターン生の95%をこれら約300の大学から採用しています。ターゲット校の数が多いのは、当社の事業がそれだけ幅広く、深いからです。一般に、当社は会計監査や税務の専門サービス企業ととらえられていますが、近年はコンサルティング事業が著しい成長を遂げています。Big4の中でも、多様でニッチな人材が必要なのです。

専攻分野別に見ると、会計学、財務、数学の学生が多いです。しかし、ITをはじめとするテクノロジー専攻の学生も大幅に増えています。当社が提供するビジネスソリューションのすべてにテクノロジーが組み込まれているからです。今や、テクノロジー系の学生は採用における基本的なターゲット層になりました。また、学部生の他に、大学院生のインターン生も多数います。コンサルティング事業では、MBAやその他の修士課程で学ぶ学生も受け入れています。

インターン生に質の高い業務体験を提供する

ほとんどの学生は夏期インターンシップに参加しますが、監査及び税務分野では、繁忙期である冬に参加する学生も少なくありません。標準的なプログラム期間は8~10週間です。

クライアントとの関係を損なわないようにリスク管理をしつつ、インターン生には正社員の業務に限りなく近い体験をしてもらいます。インターン生に意義ある職業体験を積んでもらうことが肝心で、この職業に就くと彼らが得られるものは何かを的確に把握できなければなりません。

全国のインターン生が3日間のコンファレンスで一堂に会す

item_internship_vol08_daigaku.png

当社のインターンシッププログラムでは学習機会を豊富に用意しています。特徴的なのがデロイトユニバーシティー。ダラス郊外にある企業大学で、将来のリーダー候補向けにコンファレンスを開催します。ここに、何千人ものインターン生を派遣するのです※。

これほど大人数のインターン生を研修施設に派遣する企業はあまりないでしょう。当社は人材の能力開発に相当な投資をしているということを、話だけではなくインターン生に身をもって体験してもらいたいのです。全員が社員になるわけではなくても、彼らを招待することは価値のある先行投資と考えます。コンファレンスに参加すると、ほとんどの学生が当社で働きたいと好印象を抱いてくれます。

また、デロイトユニバーシティーでのイベントは参加者同士の交流を促す楽しいものでもあり、そこで当社の企業文化を体験してもらうことができます。

「この上司や同僚と働きたい」と思われること

インターン生の職場体験を有意義にするサポート役として、各職場にカウンセラーを配置しています。インターン生にはメンターも提供しており、訊きたいこと、話したいことがあるときにいつでも対応できる体制を整えています。カウンセラーとインターン生が共に参加する交流イベントを企画して、関係づくりが促進されるよう工夫もしています。

社内外の人々との様々な交流イベントや、社内スポーツチームも多数あります。社交活動はデロイトの企業文化に根付いたこと。ワークライフバランスを大切にする当社の姿勢の表れでもあります。インターン生に正社員登用オファーを承諾してもらうためにも、デロイトの社員は一緒に働きやすい人々だと印象付けることは重要です。

より学年が若いインターン生を増やすことが最大の課題

現在、我々が模索しているのは、より学年が若いインターン生を増やす方法。当社のビジネスモデルの性質上、専門知識をまだあまり身につけていない大学1年生や2年生にお願いできる業務はまだ手探りの段階です。しかし、最近の学生は以前より早期にキャリア決定する傾向があります。企業によっては、独創的な方法を試みるところもあります。当社でも、別の生産的な方法を編み出したいと思っています。これが現在の最大の課題です。

※デロイトユニバーシティでは、大学1~4年生の学生が参加資格を有する複数のコンファレンスを開催している。インターン生でなくてもコンファレンスに参加できるが、インターンシップ参加者は全員無料招待される。

取材協力=CareerXroads
TEXT=小林誠一

ダイアン・ボルハニ氏
タレント・ベストプラクティス&イノベーションディレクター
2005年から7年7ヶ月間、200名以上の採用チームを率いて米国のグループ各社のための大学新卒者採用活動のリーダーを務める。2013年2月から現職。デロイトがタレント市場でリーダーとしてのポジションを確立・維持していくための戦略的かつ先進的なソリューションとその実施方法の策定を担当している。
ケリー・ブラストロム氏
早期人材発掘プログラムマネジャー
2007年の入社以来、コンサルティング事業部門で大学新卒者採用を担当。2014年9月に早期人材発掘プログラムマネジャーに就任し、現在に至る。