研究所員の鳥瞰虫瞰 Vol.4米国における新卒採用のオンライン化の行方──杉田真樹

米国の大手企業の新卒採用は、採用担当者が複数の大学キャンパスを訪問し、大学主催のキャリアフェアに参加する「オンキャンパスリクルーティング」が主流である。インターンシップも、企業は優秀な新卒人材を早期に確保するための重要な手段として位置づけ、新卒採用に直結させている場合が多い。通常、大学4年次に進級する前の約3カ月の夏休み期間中に実施し、期間は10~12週と日本よりも長い(※1)。企業はインターンに実務を任せることで、学生の適性を測り、また学生側も実際の仕事や社員との交流を通じて、この会社が自分に合っているのかを見極める場となっている。実際、インターンから正社員への登用率は平均66.4%である(※2)。

パンデミックで大きく変化した2020年の新卒採用

2020年にパンデミックが宣言され、キャンパスへの訪問や、インターンをオフィスに受け入れることができなくなった企業は、新卒採用やインターンシップのオンライン化を余儀なくされた。
リクルートワークス研究所が2021年3月にグローバル企業の採用責任者やアナリスト11人を対象に実施したインタビュー調査では、半数以上の企業が2020年の新卒採用やインターンシップを「完全にリモートで行った」と答えた。たとえば化学品メーカーのCelaneseや製薬大手のRocheは、母集団形成にイベントプラットフォームを活用し、従業員が学生と1対1で交流するオンラインイベントを開催した。また、スクリーニングプラットフォームや動画面接システムを活用するケースも複数見られた。一方、工場をもつメーカーなど、業務の性質上、全従業員がオフィスに出社している企業では、インターンシップを実施せず、メンターシッププログラムに切り替え各部署のマネジャーが学生のメンターとなり、週1日の学習セッションを実施した。

半数がオンラインインターンシップの継続を予定

2021年の新卒採用やインターンシップのオンライン化については、どのような傾向がみられるのか。NACE(全米大学就職評議会)が7~8月に実施した企業アンケートの結果を見ると、夏季に行ったインターンシップの実施形式について、企業の50%が対面式とオンラインとの「ハイブリッド型」と回答している。「オンラインのみ」は32%、「対面式のみ」は18%だった(図表1)。

図表1 2021年夏季インターンシップの実施形式(回答211人)
図表1 2021年夏季インターンシップの実施形式(回答211人)出所:NACE, “August 2021 Quick Poll: Fall 2021 Recruiting”
https://www.naceweb.org/talent-acquisition/trends-and-predictions/nace-august-2021-quick-poll-fall-2021-recruiting/

企業は、今後についてどのような採用計画を立てているのだろうか。オンラインインターンシップが自社で恒久的に導入される可能性についての質問では、15%が「非常に高い」、35%が「高い」と答えており、半数が恒久的な導入を検討している(図表2)。

図表2 オンライン(またはハイブリッド型)インターンシップが自社で恒久的に導入される可能性(回答212人)
図表2 オンライン(またはハイブリッド型)インターンシップが自社で恒久的に導入される可能性(回答212人)
オンラインインターンシップを企業が継続する理由は、高い効果を実感しているためである。同調査では、企業がインターンシップを実施する3つの主要目的について、それぞれの有効性の度合いを聞いている。インターンから正社員への登用については、21%が「非常に効果的」、47%が「とても効果的」と答え、約7割が効果的であると回答した。ブランディングについては、30%が「非常に効果的」、49%が「とても効果的」と答え、8割近くが効果的であると回答した。実際の業務に携わる機会の提供についても、43%が「非常に効果的」、47%が「とても効果的」と回答し、約9割が効果的であると回答した。(図表3)。

図表3  2021年のインターンシップの効果(回答206人)
図表3  2021年のインターンシップの効果(回答206人)注:「インターンから正社員への登用」の合計は100にならないが、出所のとおり記載

秋の新卒採用でも企業の6割がオンラインを活用

2021年秋の新卒採用については、企業の6割がオンラインでの活動を継続する計画である。Zoomでの説明会、オンラインツアー、オンラインキャリアフェアといった「オンラインイベントを秋に自主開催するか」という質問に対して、61%が「はい」、15%が「いいえ」と回答。24%は「未定」だった(図表4)。

図表4 秋にオンラインイベントを自主開催する企業の割合(回答218人)
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また、パンデミック以前と比べたオンラインイベントの活用の変化については、67%が「増えた」、20%が「変わらない」、13%が「減った」と回答した(図表5)。

図表5 パンデミック以前と比べたオンラインイベントの活用の変化(回答133人)
fig5.jpg大学キャンパスでの採用活動の再開については、変異株の発生など不確定な要素が多く、企業は対応を慎重に検討しているようだ。秋の採用活動における出張の制限についての質問では、企業の4割が「未定」と答えた。「制限がある」は25%、「制限がない」は35%だった(図表6)

図表6 秋の採用活動における出張の制限(回答218人)
図表6 秋の採用活動における出張の制限(回答218人)

新卒採用のオンライン化のメリット

前述のインタビュー調査では、オンライン化のメリットについて、特定の選考学部や学部をもつ指定校以外の大学にも採用の対象を拡大できた、伝統的黒人大学(HBCU)などの大学とつながりインターンや新卒者の多様性が向上したといった意見が多数聞かれた。また、面接の日程調整がしやすい、各大学のキャンパスを訪問する時間や宿泊費および交通費といったコストを削減できるという利点も挙げられた。学生側にとっても、地理的制限がなくなり、住む場所に関係なく、インターンシップに参加できる。これまで自分の大学に訪問したことがない企業との接点を得られ、就職の機会が増えるという利点がある。また、学生のデジタルスキルは高く、オンラインでの業務にも難なく適応していたという。

オンライン採用は、対面と比べて、職場の雰囲気や社風を伝えづらいといった意見も聞かれた。また、完全なリモートによる新卒採用を初めて行う企業もあり、インターンのリモートマネジメントに不安を抱くマネジャー向けに導入教育を行うなどの工夫が見られた。
しかし、全体的にはオンライン採用にメリットを感じている。

今後については、EYやCelaneseやRocheといった企業はパンデミックの状況を見定めつつ、しばらくは新卒採用やインターンシップを、リアルとオンラインによるハイブリッド型で行う計画であると答えている。Uberは、完全リモートによるインターンシップや新卒採用を継続する意向を示した。パンデミックの収束後に、企業は対面での新卒採用に全面的に戻るのか、どの程度オンライン採用が定着するのか、企業の動向について注視していきたい。

(図表1~6) 出所:NACE企業アンケート (実施期間2021年7月27日~8月20日、回答数227人)
NACE, “August 2021 Quick Poll: Fall 2021 Recruiting”
https://www.naceweb.org/talent-acquisition/trends-and-predictions/nace-august-2021-quick-poll-fall-2021-recruiting/

(※1) 出所:Indeed, “FAQs About Internship Lengths”
https://www.indeed.com/career-advice/career-development/how-long-are-internships
(※2) 出所:NACE, “Intern Conversion Rate Climes, Fueled by Jump in Offer Rate”
https://www.naceweb.org/talent-acquisition/internships/intern-conversion-rate-climbs-fueled-by-jump-in-offer-rate/