世界の最新雇用トレンド英米のオンラインインターンシップと面接の事例(3)

英米のオンライン面接

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、英国と米国では候補者との対面を避けるためにオンライン面接を実施する企業が増加した。保険関連企業のエーオンの調査によると、2020年春の時点で英国企業の76%が採用プロセスにオンライン面接を実施していた。オンライン面接は新卒採用にも利用されている。学生や新卒などの若年者を対象とする求人求職サイトのMilkroundの調査によると、英国の新卒者の54%が「企業の担当者に直接会うことなく、オンライン面接のみで採用が決定した」という。「対面で面接を受けた」と回答した新卒者は32%いるが、このうち16%はオンライン面接も受けていた。新型コロナウイルスの感染拡大以前から新卒採用にオンライン面接を実施していた企業は17%であったが、パンデミック以降は37%に拡大した。また、企業の採用担当者の64%が「ロックダウン解除後もオンライン面接を継続したい」と回答しており、今後もオンライン面接の需要はあると見られる。
調査会社Gartnerが2020年4月にHRリーダー334人を対象に実施したアンケート調査では、米国企業の約9割が新たにオンライン面接テクノロジーを導入していると回答した。

オンライン面接のメリット

動画面接プラットフォームHireVueの調査報告書「2021Global Trends Report」では、オンライン面接を行うメリットは、「安全に面接ができる」(72%)という感染対策上の理由だけでなく、「採用スピードのアップ」(54%)、「最適な候補者を特定できる」(41%)、「コストの削減」(37%)、「候補者の多様性の向上」など様々な利点が企業により挙げられている。オンライン面接は会場まで移動することなく、交通費も発生しないため、時間やコストを削減できる。また、交通事情による遅刻や開催延期などのリスク、そして面接の会議室の手配や日程の再調整といった採用担当者の手間を減らすことができる。

オンライン面接には、ライブ面接と録画面接の2種類があり、最近は録画面接の利用も増えているようである。録画面接は、大量採用を行うエントリーレベルの人材の採用で行われる場合が多い。お互いが都合の良い場所や時間で録画撮影を行い、録画をまとめて視聴することができるため、選考のスピードを速められる。また採用に関わる関係者と録画を共有することで、客観的に候補者を評価できる。時差の異なる地域に住む、あるいは他社に雇用されているので就業時間中に面接を受けることができない候補者との面接も可能となる。

オンライン面接テクノロジー

企業は、オンライン面接では、Zoom、Skype、Microsoft Teams、Webex、Google Hangouts、Blue Jeans、Amazon Chimeといったビデオ会議システム、また、HireVue、Modern Hire、HackerRank、Spark Hireといったオンライン面接に特化したプラットフォームも利用している。本コラムでは、英国と米国で広く利用されているオンライン面接システムの中から、Shine、LaunchPad、Modern Hire、HackerRankを紹介する。

1.Shine:世界80カ国に顧客を持つ

Shine は、2015年に英国で設立されたクラウドベースのビデオ面接・スクリーニングソフトウェアである。特徴として「採用コストの削減」「候補者スクリーニングの迅速化」「候補者体験の向上」を謳っている。オンライン面接には録画ビデオ面接とライブビデオ面接がある。

50_01.jpg出所:https://www.shineinterview.com/liveinterviewing/

録画ビデオ面接では、採用担当者が事前に質問票等を登録しておき、候補者は都合の良い時間に無料のアプリやウェブカメラ付きのデバイスを利用して面接を受ける。その後、採用担当者が面接のレビューや評価を行い、ショートリストを作成する。ライブビデオ面接では、採用担当者があらかじめ設定した面接可能時間の中から、候補者が面接日時を選択し、面接を受ける。

Shineのプラットフォームはホワイトレーベル仕様での利用も可能で、利用企業は候補者への招待メールや面接時の画面に自社のロゴなどを表示することができる。
オンライン面接のほか、フィードバック管理、面接の練習、パネルインタビュー、録画、面接管理、事前録画メッセージ、スキルアセスメント、スコアリング等の機能がある。利用できるデバイスは、スマートフォン、タブレット、PCである。
世界80カ国に顧客を持ち、人材サービス会社大手のReedや郵便局、BOSCH、日産、地方自治体協会、英国海軍、NHS(国民保険サービス)などが利用している。
利用料金は月額150ポンドからで、契約内容や契約期間により異なる。


2.LaunchPad:英国政府認定の採用プラットフォーム

LaunchPadは2011年設立のクラウドベースの採用プラットフォームである。英国の省庁や地方自治体の認定サプライヤーに選ばれている。前述のShineと同様に録画面接とライブ面接がある。オンライン面接のほか、スクリーニング、アセスメント、予測AI、スケジューリング、分析等の機能がある。

50_02.jpg出所:https://launchpadrecruits.com/video-interviewing

また、候補者に対するサポートもあり、候補者が面接の時間に間に合わないときや、テクニカルトラブルが発生した際には、サポートチームが年中無休でメール対応する。
顧客はBBC、スコットランド銀行、Sky、トヨタ、ペプシ、バーバリー、チューリッヒ、公務員省、ヴァージン・メディア等、300以上の組織である。
LaunchPadの料金体系は非公開となっている。

3.Modern Hire:AIによる選考

ライブおよび録画ビデオ面接、電話面接に対応する米国の面接プラットフォームを提供する。2019年にシミュレーションアセスメント会社Shaker Internationalとビデオ面接プラットフォームMontageの合併によって設立された。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC 27001:2013」を取得している。

候補者が自分の電話番号を送信すると、自動音声による電話を着信し、質問に対する回答を録音する、面接前の自動スクリーニング機能を備える。ショートメッセージ形式にも対応し、時給職などの採用で多数の応募者を一斉に評価することができる。

50_03.jpg 出所:https://modernhire.com/platform/assess/

また、実際の仕事内容と類似したタスクを求職者に体験させ、ゲームのようなテストで即戦力となるスキルや知識を見極めるバーチャルジョブシミュレーションの機能もある。コールセンターやレジ、メカニックなど40種類以上の職種に対応する。
録画ビデオ面接では、AIが候補者の回答内容をもとに、候補者の評価を自動スコア表示する。公平性を保ち、バイアスを減らすことを目的とする。その他、コンピテンシーを測る面接ガイドや、面接終了または面接官による評価の提出後に、候補者に次の面接の希望日時を選択するウェブページのリンクを自動送信するスケジューリング機能もある。
顧客数は、アマゾン、ボーイング、LGエレクトロニクス、デルタ航空、P&G、ペプシコ、ウォルマート、スターバックス、コムキャスト、フェデックス、ランスタッド、マンパワーグループなど約700社である。フォーチュン100の半数が利用している。

4.HackerRank:プログラミング面接

エンジニアやソフトウェア開発者を対象とする米国のテクニカル面接プラットフォームである。インターン生や新卒者の採用と、中途採用を支援する。企業は、面接を行いながらコーディング作業をリアルタイムにチェックし、同時にブラウザ上で動画やチャットで候補者と交流することができる。候補者が二人一組で共働してプログラミングを行うペアプログラミングテストサービス「CodePair」もある。企業はプログラミング能力だけでなく、コミュニケーションスキルもリアルタイムに測ることができる。

HackerRankは2021年3月、複数の面接官や採用部署のメンバーが交互に入れ替わり、オフィスで半日または終日かけて次々に面接を行うオンサイト面接を、オンラインでよりシームレスに行うための機能「Virtual Onsite Experience」を発表した。候補者は当日、面接が終了するたびに次の面接への参加リンクを探す手間を省くために、全面接官とのオンライン面接において同じ参加リンク(URL)を利用する。
候補者がリラックスして次の面接に備えることができる待機室機能もある。候補者が待機室に入室したことを知らせる通知が表示され、面接官はオンサイト面接への入室を許可する。面接官が全員退出すると、候補者は自動的に待機室に移動する。
顧客はブルームバーグ、セールスフォース、ペイパル、モルガン・スタンレー、メルカリ、ロイズ銀行、UBS、デル、Goldman Sachs、VMWareなどである。

Indeedが2021年5月に発表したオンライン面接に関する調査では、オンライン面接の利点として遅刻の心配の解消や、面接官から受ける威圧感の減少などが挙げられており、求職者もメリットを感じている。パンデミック収束後も、オンライン面接の活用の増加傾向はしばらく続くと予想される。
オンライン面接の実施は、通信環境や選考のミスマッチなどの懸念が存在するが、例えばアマゾンは、当日の服装や部屋の照明などについてのアドバイス、通信トラブルが起きた際の対処法などを細かく記したオンライン面接ガイドを自社の採用情報サイトに掲載し、求職者の不安解消に取り組んでいる。また、CEOや人事部長が登場するオフィスツアー動画を作成し、面接前に応募者と共有するといった企業もあり、こういった工夫は日本企業にとっても参考になる。

TEXT=長岡久美子/杉田真樹