HR Technology 2019-2020実際に使われているHRテクノロジー -10社比較一覧-

これまで12回にわたって紹介したTech Stack Interviewから、グローバル企業が多種多様なHRテクノロジーを利用していることが明らかとなった。傾向を明らかにするため、挙げられた製品名を採用ステージ別に表にまとめた。HRテクノロジーコンサルタントのX氏とY氏の見解も盛り込んだ(図表1)。

図表1 グローバル企業が実際に利用しているHRテクノロジー比較一覧

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CRM(採用候補者管理システム)

AvatureSmashFlyを導入している企業が多かった。Avatureは、使いやすさやユーザーのニーズに合わせて仕様を変更できる柔軟性の高さが評価されているようだ。採用マーケティングプラットフォームのSmashFlyは、CRM、キャリアサイトの制作、イベント管理、アナリティクスなど複数の機能を1つにまとめた機能性の高さが人気を集めている。

ATS(応募者追跡システム)

X氏とY氏の見解のとおり、Workdayの利用が最も多く、後にKenexa BrassRingが続く。Workdayは、使いやすいユーザーインターフェースが評価を得ている。老舗ATSプロバイダーの1つであるKenexa BrassRingは、企業が自社で仕様をカスタマイズし、複雑な業務フローを楽に管理できることから、インターン、中途、エグゼクティブ、大量採用など幅広い人材層を採用しなければならないグローバル企業に多く利用されているようだ。

ソーシング・採用マーケティング領域

X氏が指摘していたLinkedInの利用が最も多かった。LinkedInは、6億万人を超える登録者の中から、会社名、役職、スキル、出身大学、経験年数といった条件で求人ポジションに合いそうな人材を検索し、スカウトメールを送信できるため、潜在層発掘の定番ツールとなっている。また、会社ページを作成することで、写真や動画を用いた詳しい会社概要、リーダー社員の紹介、新商品・サービスや採用情報を発信し、フォロワーを集めることができる。さらに、同じ業種またはトピックに関心を持つ人が集まり、アイデアや経験を共有したり、アドバイスを求めるグループが165万種類以上あり、求人情報を投稿したり、投稿内容をもとに優秀な人材を特定できる。その他、企業レビューサイトのGlassdoorSmashFly、チャットボットのParadox、求人求職サイトのDiceIndeedも複数の企業に利用されている。高く評価されているとY氏が言うソーシング専用ツールのHiretualHiringSolvedの名前も挙がった。AIでウェブ上の潜在層情報の一括検索を自動化できる便利さが人気のようだ。

エンゲージメント・人材供給パイプラインマネジメント領域

Paradoxが最も多く挙げられた。Paradoxをはじめとするチャットボットは、求職者からの問い合わせ対応だけでなく、アウトリーチ(働きかけ)にも活用されている。過去の応募者など特定の人材に再アタックするために、最新の採用情報をチャット形式で配信し、関係を再構築。そして、反応があった人材に現在の求職状況などについて質問し、転職意欲がある候補者を面接に導くことができる。また、LinkedInとチャットプラットフォームのBrazenという回答も多かった。その他、X氏が言及したTalentegySurvaleといったより良い候補者体験の提供に役立つ製品を実際に利用している企業もあった。企業の採用情報ページ内にアンケート回答ボタンを設置し、応募プロセスやサイトの使いやすさなどに関するフィードバックをリアルタイムに収集することで、応募率のアップや内定辞退の防止を図ることができる。

選考・アセスメント領域

ビデオ面接プラットフォームのHireVueの利用が最も多く、後にShaker Internationalの「Virtual Job Tryout」、Hoganと続く。HireVueは、ライブまたは録画形式のビデオ面接、アセスメント、面接のスケジューリング機能を1つにまとめたクラウド型のデジタル面接プラットフォームで、日本国内でも利用されているが、時間や場所を問わず、大量の応募者の面接を短期間に効率よく行うことができるため、選考スピードを上げられる点が定評を得ている。また、使いやすい、質問テンプレートを職種別にカスタマイズできる、録画を複数の関係者と共有し、多方面からのフィードバックを集められるといった点も好評のようだ。その他、コーディングの課題でエンジニアのスキルを測る3種類の製品(HackerEarthHackerRankCodeVue)の名前も挙がった。X氏が指摘するゲームベースの新しいアセスメントツールの利用は、10社の中では見られなかった。

オンボーディング領域

オンボーディング専用ツールの利用は少なく、X氏が指摘するように、KenexaWorkdayといったATSを活用する企業が多かった。Kenexaのオンボーディング製品は、入社手続きに必要なすべてのタスクを一目で確認し、書類の入力や提出をペーパーレスで行えるため、手続きを簡素化する。同僚や先輩社員と入社前に交流するSNS機能もあるため、早く組織に馴染むことができる。

では、グローバル企業はどのように製品を選んでいるのか。インタビューから、1)前任者が利用していた製品をそのまま引き継いだ、2)コンペを実施した、3)買収した企業が利用しているものを自社でも導入した、4)契約するRPO(採用プロセスアウトソーシング)会社の独自製品を利用している、といったパターンが明らかとなった。

インタビューでは、近日中に他の製品への乗り換えを検討している、または予定していると答えた企業が多かった。AIなどの技術を活用した新しい製品も市場に次々と登場している。来年にはこのテックスタックの中身も様変わりしているかもしれない。