604.7万人が経験したスポットワークは個人のキャリアに何をもたらすのか
2024年、日本では15歳以上人口の5.5%にあたる604.7万人が単発・短期ワーク(スポットワーク)(※1)を経験していた(リクルートワークス研究所,2025a)。実施者の31.0%は15~24歳の若年層であり、初期キャリア形成期にある人たちが多く含まれる。一方で、60歳以上も20.3%を占めており、定年後の就業や社会参加の手段として利用する人も少なくない(リクルートワークス研究所,2026)。若者からシニアまで幅広い世代に広がる中、この働き方は個人のキャリアにどのような影響を与えているのだろうか。
前回の連載「データで見る単発・短期ワークの実態」では、「全国就業実態パネル調査2025」に接続可能な調査として実施した「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」(※2)の分析結果をもとに、その市場規模や業種・職種への広がり、働く人々の特徴などを明らかにしてきた。また、単発・短期ワークの活用実態を分析したところ、実施者の47.0%がこれまで培った経験やスキルを活かして働いており、約7割が副業として活用していることがわかった(リクルートワークス研究所,2025b)。この結果からは、単発・短期ワークが「空いた時間で未経験の仕事をする働き方」だけではなく、本業で培った能力や経験を活かす場としても活用されていることがうかがえる。
こうした結果は、単発・短期ワークが単なる収入獲得の手段にとどまらず、本業の枠を超えた経験の拡張や新たな機会の出会いにつながっている可能性を示している。しかし、それらの経験がどのようなプロセスを通じて仕事観やキャリア形成に結び付いているのかについては、十分には明らかになっていない。
本インタビューコラムでは、「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」の結果と、単発・短期ワーク経験者への「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関するインタビュー調査」をもとに、この働き方が個人の仕事経験やキャリアにどのような意味を持つのかを考えていく。収入や時間の自由度といった一般的に語られる価値だけでなく、仕事との向き合い方やキャリア形成にどのような変化をもたらしているのかに注目したい。
仕事経験やキャリアとして良かったこと
インタビューで語られた内容を見ていく前に、まずは「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」において、実施者が単発・短期ワークをどのように評価しているのかを確認したい。
同調査では、2024年に単発・短期ワークを実施した人を対象に、「単発・短期ワークをはじめて、ご自身の仕事経験やキャリアとして良かったこと」を尋ねている。その結果が図表1である。
最も多かったのは「自分の都合の良い日時や時間帯で働けた」(57.7%)であり、「スキマ時間を有効活用できた」(32.2%)、「プライベート(学業、家庭、趣味など)と両立しやすかった」(25.6%)が続いた。さらに、「すぐに収入を得ることができた」(22.0%)、「働いた分だけ、確実に収入が増えた」(21.7%)も上位に入り、この働き方の価値が時間の柔軟性と収入確保にあることがうかがえる。
一方で、「興味のあった仕事や業界を気軽に試すことができた」(12.4%)、「様々な人との出会いがあり、人脈が広がった」(11.9%)、「様々な仕事を経験することで、自分に合う仕事を見つけるきっかけになった」(11.0%)、「自分がやりたい仕事にチャレンジすることができた」(9.5%)、「自分が活躍できる領域を見つけた」(7.3%)など、キャリア形成に関わる項目も一定数見られた。
こうした結果からは、単発・短期ワークが時間や収入の確保にとどまらず、新たな仕事との出会いや自己理解の促進など、キャリア形成にも影響を及ぼしていることがうかがえる。
図表1 単発・短期ワークを通じて仕事経験やキャリアとして良かったこと(複数回答)

出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
数字では見えない単発・短期ワークの価値
割合としては高くない項目でも、インタビューではそうした経験を単発・短期ワークの大きな価値として語る人も少なくなかった。そこには、単に空いた時間で収入を得るだけではなく、興味のある仕事を試すことで自分に合う仕事を探す、新たな人との出会いを通じて世界を広げる、社会との接点を取り戻す、本業とは異なる職場や業界を経験するといった、多様な活用実態が存在していた。
次回以降のコラムでは、インタビュー調査をもとに、こうした経験が実施者にとってどのような意味を持つのかを詳しく見ていく。時間や収入の確保という実利的な側面だけでなく、仕事を試す機会としての役割や自己理解の深化、人とのつながりの広がり、副業や社会復帰の足がかりとしての機能など、単発・短期ワークが持つ多面的な価値を明らかにしていきたい。その上で、この働き方が個人のキャリアにどのような機会をもたらすのか、そしてその可能性と課題についても考察する。
(※1)「単発・短期ワーク」とは、以下の3つの条件に該当する仕事を指す。
1. 特定の企業や組織に雇用される、または業務を請け負うこと
2. 労働によって報酬が発生すること
3. 契約期間が1カ月未満であること
2025年9月25日~10月6日に実施した本ウェブアンケートは対象外とした。また、試用期間が1カ月で短期雇用契約となる仕事も含まれない。さらに、単発で契約が完了する仕事を継続し、結果として1カ月以上となった場合は対象とした。
(※2)「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」は、段階的な目的に基づき二段階で実施した。第一段階で規模を把握し、その後、該当者を対象に第二段階調査を行った。
■ 第一段階調査「単発・短期ワーク(スポットワーク)の規模推定」
• 目的:単発・短期ワーク(1カ月未満の契約)で働く人の規模を明らかにする
• 調査対象母集団:全国15歳以上男女
• 有効回収数:41,046名
• 調査期間:2025年9月25日~10月6日
• 調査方法:インターネットモニター調査
• 集計方法:性×年代×就業状態×教育の構成が母集団を反映するようにウェイトバック集計を実施
■ 第二段階調査「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態」
• 目的:単発・短期ワーク(1カ月未満の契約)で働く人の就業実態を明らかにする
• 調査対象母集団:全国15歳以上男女のうち、2024年に単発・短期ワークを行った人
• 有効回収数:2,147名(※ウェイトバック集計後の人数は2,261名)
• 調査期間・調査方法・集計方法:第一段階調査に同じ
【参考文献】
リクルートワークス研究所(2025a)「単発・短期ワーク(スポットワーク)の市場規模と広がり」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail002.html
(2026年7月10日アクセス)
リクルートワークス研究所(2025b)「単発・短期ワーク(スポットワーク)が広がる業界・職種は?」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail003.html
(2026年7月13日アクセス)
リクルートワークス研究所(2026)「単発・短期ワーク(スポットワーク)で働く人たちは誰なのか?」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail004.html
(2026年7月10日アクセス)
岩出 朋子
大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。
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