スポットワークが映し出す「働くこと」の可能性と課題

2026年09月04日

これまでのコラムでは、短期・単発ワーク(スポットワーク)(※1)がもたらす働く意味の変化や自己理解、キャリアの転換期における役割などを見てきた。今回のインタビュー調査(※2)を振り返ると、スポットワークの特徴は、単純に「良い点」と「悪い点」に分けられるものではないことも明らかになった。

興味深かったのは、多くの経験者が、この働き方の良さと課題を同時に認識していたことである。「助かった」「利用してよかった」と評価する一方で、「こうした難しさもある」と語る人も少なくなかった。インタビューからは、スポットワークを通じて、働くことを支える仕組みの可能性と課題が意識されやすくなることもうかがえた。

すぐに働けることの可能性と課題

スポットワークの大きな特徴の一つは、従来の採用に比べて、申し込みから就業までの期間が短い場合が多いことである。中でも一部のマッチングプラットフォームでは、履歴書の提出や面接を経ずに仕事へ申し込みできる仕組みもある。インタビューでは、本業を持たず、スポットワークを主な収入源として生活している人たちもいた。中には、収入が途絶えた時期や生活環境が大きく変化した時期に、スポットワークを利用していた人もいる。そうした人たちにとって、申し込みから就業までの期間が短く、比較的早く収入につながることは、この働き方の大きな特徴として捉えられていた。

一般的な採用では、応募から採用まで一定の時間を要することも少なくない。インタビューでは、年齢や経歴への不安から、長期雇用を前提とした仕事を探すことに難しさを感じていた人もいた。そうした人にとって、書類選考や面接を経ずに仕事に申し込めることは、働く機会へアクセスしやすい仕組みとして受け止められていた。

しかし、本業を持たず、スポットワークを主な収入源としていた経験者からは、短期間で収入を得られることと、生活の安定とは必ずしも同じではないという声も聞かれた。スポットワークは当面の収入を確保する手段にはなっていたが、住まいの確保や生活基盤の立て直しに向けては、一定の資金を蓄える必要がある。そのためには複数の仕事を掛け持ちしたり、長時間働いたりすることも求められていた。

今回のインタビューからは、「すぐに働ける」という特徴が生活を支える重要な役割を果たしている一方で、住まいを失ったり生活基盤が不安定になったりしている人にとっては、スポットワークだけで状況を改善することは容易ではないこともうかがえた。生活を立て直していくためには、収入を得る機会に加えて、住居や就労に関する支援も必要であることが示唆された。

多様な仕事を経験できることの可能性と課題

スポットワークでは、さまざまな職場や仕事を経験できる。これまで経験したことのない仕事に挑戦したり、自分に合う仕事を探したりする機会として活用している人もいた。一方で、自身が持つ知識やスキルが必ずしも仕事と結びついていないと感じている経験者もいた。インタビューでは、語学力や専門的な経験、資格を持ちながらも、それらを活かせる仕事に出会えなかったという声が聞かれた。

ただし、近年は多様なマッチングプラットフォームが存在しており、それぞれ扱う仕事の種類や求める人材像は異なる。今回のインタビューからは、自分の経験や能力を活かせる機会そのものが存在していないというよりも、どのプラットフォームを利用すれば自分のスキルや経験を活かせる仕事に出会えるのかが分かりにくいという側面も見えた。働く機会へのアクセスを広げる技術が発展する一方で、利用者がそうしたサービスの特徴や違いを十分に理解しているとは限らない。

このように、スポットワークは多様な仕事への入口を広げる可能性を持つ一方で、利用者が自分の経験や能力に合った仕事やプラットフォームを選択できるかどうかも重要になる。そうした情報を得やすくすることが、経験やスキルを活かした就業につながる可能性もあるだろう。また、多様な人材が能力を発揮できるようにするためには、個人の情報収集だけに委ねるのではなく、経験やスキルと仕事を結びつける仕組みや情報提供のあり方についても考えていく必要があるのかもしれない。

評価が可視化されることの可能性と課題

一部のマッチングプラットフォームでは、働き手と事業者が相互に評価を行い、その結果が次のマッチングや利用体験に影響する仕組みが導入されている。この仕組みは、働く機会を提供する側と、この働き方を選択する側の相互理解を促し、安心して仕事を提供・選択できる環境づくりに役立っている。また、実績や評価を積み重ねることで信頼が蓄積され、働き手と事業者の双方にとって、より適切なマッチングにつながる場合もある。実際に、スポットワークを通じて職場との相性を確かめながら働く中で、長期就業につながった経験も語られた。評価や実績の蓄積は、働く機会を提供する側と、この働き方を選択する側が互いを知る機会となるだけでなく、信頼の蓄積を通じて新たな就業機会を生み出す可能性もある。

一方で、評価を常に意識することに負担を感じる人もいた。インタビューでは、「低い評価を受けると次の仕事に影響するのではないか」と感じ、レビューや評価を気にしながら働いていたという声があった。また、オンラインプラットフォームを通じて業務委託で相談業務を行っていた経験者からは、利用者からの期待が次第に高まり、自分が提供できる範囲を超える対応を求められるようになったことで、仕事を続けることに負担を感じたという語りもあった。

このように、評価の可視化は信頼の形成や新たな仕事との出会いを促す一方で、人によってはプレッシャーや負担として受け止められる場合もあった。

事故やトラブルというリスクにどう備えるか

インタビューからは、スポットワークを安心して続けるための環境整備について考えさせられる経験も語られた。「短期・単発ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」では、スポットワーク経験者の44.6%が、何らかの困りごとやトラブルを経験したと回答している(図表1)。

図表2を見ると、その内容としては、「マニュアルがない、または業務に関する指示や説明が不十分だった」(14.6%)、「直前に仕事がキャンセルになった、または早上がりになった」(13.7%)、「職場の従業員から差別的な態度、または冷たい態度をとられた」(10.1%)などが比較的多く見られた。また、「給与、労働時間、待遇が求人情報と違った」(9.2%)、「仕事内容が求人情報と違った」(9.2%)といった、求人情報とのミスマッチに関するトラブルも確認されている。さらに割合は高くないものの、「作業中に危険に対する安全対策がなかった」(2.5%)、「通勤途中、または仕事中にケガをした」(2.1%)といった安全面に関わるトラブルも報告されている。

図表1 短期・単発ワーク(スポットワーク)での困りごとやトラブルの有無

図表1 単発・短期ワーク(スポットワーク)での困りごとやトラブルの有無

※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「短期・単発ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成



図表2 短期・単発ワーク(スポットワーク)での困りごとやトラブル (全体) 

図表2 単発・短期ワーク(スポットワーク)での困りごとやトラブル (全体) 

※複数回答
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「短期・単発ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成


今回のインタビューからは、こうしたトラブルの中でも、事故や補償、責任に関わる経験が語られた。たとえば、配達の仕事に従事していた経験者は、業務中に交通事故を経験している。幸い周囲の支援や保険によって解決に至ったものの、その経験を通じて、事故が起きた際の補償や手続きについて不安を感じたという。

また、看護師資格を活かして単発の仕事に従事していた経験者からは、医療行為に伴う責任そのものよりも、事故やトラブルが起きた際の補償や支援のあり方に不安を感じていたという声が聞かれた。

さらに、スポットワークで働いていることを家族や本業先に伝えていない人もいた。勤務先の規則との関係を気にしている場合もあれば、家族に心配をかけたくないという理由もあった。こうした状況では、仕事上の困りごとやトラブルが生じても、周囲に相談しにくく、一人で抱え込んでしまう可能性がある。それは、事故や補償に関する問題だけではない。仕事内容への不安や職場でのトラブルなど、この働き方を選択する上での日常的な困りごとについても同様である。インタビューからは、スポットワークで働く人の中には、問題が生じた際の相談先が限られやすい側面もあることがうかがえた。

スポットワークが働く機会を広げていく中、安心して働くための環境整備も進められている。たとえば、厚生労働省は労働者や事業者向けにスポットワーク利用時の留意点を周知しており、スポットワーク協会も「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」の見直しを行っている。こうした取り組みが進められている一方で、今回のインタビューからは、事故やトラブルへの対応、補償や責任のあり方、相談のしやすさなどについて、雇用・業務委託といった働き方の類型に応じて、安心して働ける環境を実現するためのさらなる整備が求められていることも見えてきた。

今回の研究で対象とした短期・単発ワーク(スポットワーク)には、雇用による働き方だけでなく、業務委託による働き方も含まれており、その実態は一様ではない。そのため、課題への対応も単一ではなく、労働法制、安全衛生、労災補償、取引ルールなど、それぞれの働き方に関連する制度との関係を踏まえながら検討していく必要がある。

スポットワークが映し出す「働くこと」の可能性と課題

今回のインタビューから見えてきたのは、スポットワークの特徴を単純にメリットかデメリットかで整理できるものではないということである。すぐに働けること、多様な仕事を経験できること、評価や実績が可視化されることは、多くの人に新たな機会をもたらしていた。その一方で、継続的な収入や生活基盤の確保、自分の経験や能力を活かせる仕事とのマッチング、評価との向き合い方、補償や責任のあり方などについて課題を感じる人もいた。

12名のインタビューから見えてきたのは、スポットワークを通じて、普段は意識されにくい「働くこと」の仕組みが経験者自身に強く意識されていたことである。働く機会へのアクセス、スキルとのマッチング、評価、補償や責任といった要素は、正社員として雇用される場合をはじめ、長期雇用を前提とした働き方の中では、一連の仕組みとして組み込まれていることが多い。そのため、日常的に働いている中では、改めて意識される機会は多くない。しかしスポットワークでは、それぞれの要素が働き方の特徴として表れやすく、その意味や課題について経験者自身が考える機会になっていたように思われる。

短期・単発ワーク(スポットワーク)そのものは新しい働き方ではない。しかし、働きたい人と人材を必要とする事業者を結びつける仕組みは、デジタル技術の発展によって大きく進化している。2024年には、日本の15歳以上人口の5.5%にあたる604.7万人がスポットワークを経験しており、一定の広がりを持つ働き方となっている(リクルートワークス研究所, 2026a)。

2040年には約1,100万人の労働供給不足(※3)が見込まれる中、多様な人材が能力を発揮できる環境を整えていくことは、日本の労働市場における重要な課題である。スポットワークは、時間や場所、働き方にさまざまな制約を持つ人と、人手を必要とする事業者をつなぐ仕組みの一つとして、多様な人の就業可能性を広げる機会となりうる。

今回見えてきた課題は、この働き方を否定する理由ではなく、その可能性をより活かしていくために向き合うべきものである。補償や責任のあり方、スキルとのマッチング、評価との向き合い方など、一つひとつの課題に対応しながら、より安心して働ける環境を整えていくことが求められている。

(※1)本コラムにおける短期・単発ワーク(スポットワーク)とは、以下の3つの条件に該当する仕事を指す。
1. 特定の企業や組織に雇用される、または業務を請け負うこと
2. 労働によって報酬が発生すること
3. 契約期間が1カ月未満であること
なお、契約期間が1カ月未満であっても、試用期間として設定されているなど、実質的に長期雇用を前提とした仕事は対象外とした。一方、単発の契約を繰り返し、結果として就業期間が1カ月以上となった場合は対象に含めている。
また、以下の活動は対象外とした。
・オークション・フリーマーケットでの販売
・SNSでの動画配信
・デイトレードや個人による株式・債券等の取引
・投資(株式・不動産等)による運用益や賃料収入を得る活動
・地域コミュニティ活動(消防団・町内会・PTA等)
(※2)「短期・単発ワーク(スポットワーク)に関するインタビュー調査」の概要
・調査目的:短期・単発ワークの経験を通じて得たキャリア経験を明らかにする
・調査対象:過去3年以内に短期・単発ワークを経験した人(20代~60代)
・対象者数:12名
・調査期間:2026年4月22日~7月28日
・調査方法:半構造化インタビュー調査
・実施方法:1人1回(約60分)のインタビュー
・対象者の募集方法:調査協力者からの紹介をもとに対象者を募るスノーボールサンプリングにより実施
・分析方法:インタビュー逐語録をもとに発言内容を整理し、KJ法の考え方を参考にしながら共通するテーマやパターンを抽出した
(※3)リクルートワークス研究所(2023)の労働需給シミュレーションによると、日本では2030年に約341万人、2040年に約1,100万人の労働供給不足が生じると推計されている。この不足規模は、2022年時点の近畿地方の就業者数(約1,104万人)に匹敵する水準である。同研究では、経済成長がほとんど進まないシナリオを前提としており、経済成長が進んだ場合には、さらに大きな労働需要が発生する可能性がある。

【参考文献】

一般社団法人スポットワーク協会(2026)「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」
https://www.jaswa.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%8D%94%E4%BC%9A_%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E6%94%B9%E8%A8%82.pdf
(2026年8月25日アクセス)
厚生労働省(2025)「『スポットワーク』の労務管理」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512297.pdf
(2026年8月25日アクセス)
厚生労働省(2025)「『スポットワーク』の注意点」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512298.pdf
(2026年8月25日アクセス)
リクルートワークス研究所(2023)『未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる』
https://www.works-i.com/research/report/item/forecast2040.pdf
(2026年8月21日アクセス)
リクルートワークス研究所(2026a)「604.7万人が経験したスポットワークは個人のキャリアに何をもたらすのか」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/interview/detail001.html
(2026年8月21日アクセス)
リクルートワークス研究所(2026b)「短期・単発ワーク(スポットワーク)で働く人のトラブルは?」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail008.html
(2026年8月19日アクセス)

岩出 朋子

大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。

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