単発・短期ワーク(スポットワーク)の市場規模と広がり

2025年12月25日

前回のコラムでは、業界団体や政府推計に基づき、単発・短期ワーク(スポットワーク)の市場の広がりや企業の取り組みを紹介した。しかし、これらのデータでは、労働市場全体で見た時に単発・短期ワーク(スポットワーク)がどれくらい広がり、その働き方をする人のそれ以外の仕事の状況はどうなっているのかなどを捉える上で限界があることも事実である。

この課題に取り組むため、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」に接続可能な調査として「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」(※1)を行った。この調査は、労働市場において単発・短期ワークがどのくらい広がっているかを推定可能な形で設計されており、同時に「全国就業実態パネル調査」側のデータから単発・短期ワーク実施者の詳細な就業状態を把握することが可能である。今回は、上記調査に基づいて、日本の労働市場における単発・短期ワークの広がりや今後の市場拡大の可能性、実際の働き方や利用したツールの種類など、大きな状況を捉えていきたい。

単発・短期ワークはどのくらい広がっているのか?

雇用契約、または業務委託契約の契約形態(図表1)で2024年1月から12月の間に「単発・短期ワーク」を行ったかどうかを尋ねた(※2)。その結果、2024年に単発・短期ワークを実施した人は7.2%であった(図表2)。労働者数に換算すると、791.6万人(※3)が該当することになる。また、2024年には単発・短期ワークを行わなかったが過去に経験がある人は7.4%となり、単発・短期ワークの経験者は合計で14.6%、すなわち15歳以上人口の7人に1人が経験していることが分かった。

図表1 単発・短期ワーク(スポットワーク)の形態

単発・短期ワーク(スポットワーク)の形態の図出所:筆者作成

 

図表2 単発・短期ワークの市場規模

単発・短期ワークの市場規模の図※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」より筆者作成

どのくらい市場規模が拡大する可能性があるのか?

単発・短期ワークをどのくらいの人がやってみたいと考えているのかについて、「ぜひやりたい」「機会があればやりたい」「あまりやりたくない」「全くやりたくない」の4つの選択肢で意向を確認した(図表3)。2024年に単発・短期ワークを行った人では、「ぜひやりたい」が30.8%、「機会があればやりたい」が57.2%となり、88.0%が継続意向を示している。2024年以前に経験した人でも、70.2%が継続意向を持っている。一方、未経験者では36.4%がポジティブな意向を示した。これらの結果から、単発・短期ワーク経験者は未経験者よりもこの働き方への意向が高いことが明らかとなった。

さらに踏み込み、単発・短期ワークの意向がない人に、今後この働き方を行う可能性について確認した。具体的には全体で「あまりやりたくない(27.6%)」「全くやりたくない(29.9%)」と回答した人を対象に、今後「単発・短期ワーク」を自身がする可能性があるか尋ねたところ、「やりたくないが、必要なのですると思う」が4.8%、「やりたくないので、しないと思う」が95.2%であった。経験したことがない人に限定した分析でも、「やりたくないが、必要なのですると思う」が4.1%存在した。必要に迫られて選択せざるを得ない人が一定数存在していることが明らかとなった。

図表3 単発・短期ワークの働き方について

単発・短期ワークの働き方についての図※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」より筆者作成

どのような働き方をしているのか?


2024年に「単発・短期ワーク」の経験があると回答した7.2%の人に対し、実際の働き方に近いサービスや利用したアプリについて確認した(図表4)。その結果、最も多かったのはスキマバイト系のアプリサービスで27.4%、次いで直接仕事を提供する会社に応募した人が22.0%、人材派遣会社に登録して応募した人が19.2%であった。この結果から、「単発・短期ワーク」という働き方のマッチングにアプリサービスが普及していることがうかがえる。

図表4 単発・短期ワークの働き方に近いサービスや利用したアプリ(複数回答)

単発・短期ワークの働き方に近いサービスや利用したアプリの図※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」より筆者作成

本コラムでは、単発・短期ワークという働き方がどのくらい市場に広がってきているのかを見てきた。次回のコラムでは、「単発・短期ワーク(スポットワーク)」の定義に基づき(※4)、単発・短期ワーク(スポットワーク)で働く5.5%に該当する604.7万人(※5)が、どのような業界・業種に広がっているのか、この働き方をしている人はどのような人たちなのかを詳しく紹介していきたい。

(※1)「単発・短期ワーク(スポットワーク)に関する就業実態調査」は、段階的な目的に基づき二段階で実施した。第一段階で規模を把握し、その後、該当者を対象に第二段階調査を行った。
■ 第一段階調査(単発・短期ワークの規模推定)
•    目的:単発・短期ワーク(1カ月未満の契約)で働く人の規模を明らかにする
•    調査対象母集団:全国15歳以上男女
•    有効回収数:41,046名
•    調査期間:2025年9月25日~10月6日
•    調査方法:インターネットモニター調査
•    集計方法:性×年代×就業状態×教育の構成が母集団を反映するようにウェイトバック集計を実施
■ 第二段階調査(単発・短期ワークの就労実態)
•    目的:単発・短期ワーク(1カ月未満の契約)で働く人の就業実態を明らかにする
•    調査対象母集団:全国15歳以上男女のうち、2024年に単発・短期ワークを行った人
•    有効回収数:2,147名(※ウェイトバック集計後の人数は2,261名)
•    調査期間・調査方法・集計方法:第一段階調査に同じ 
(※2)「単発・短期ワーク」とは、以下の3つの条件に該当する仕事を指す。
① 特定の企業や組織に雇用される、または業務を請け負うこと
② 労働によって報酬が発生すること
③ 契約期間が1カ月未満であること
2025年9月25日~10月6日に実施した本ウェブアンケートは対象外とした。また、試用期間が1カ月で短期雇用契約となる仕事も含まれない。さらに、単発で契約が完了する仕事を継続し、結果として1カ月以上となった場合は対象とした。
(※3)総務省(2024)「労働力調査」の推計値である年平均15歳以上人口1億995万人のデータを参照して算出した。
(※4)単発・短期ワークの働き方に近いサービスや利用したアプリに関する質問(図表4)において、以下に該当する仕事のみを行う人は単発・短期ワーク(スポットワーク)の分析対象外とした。
・オークション・フリーマーケットでの販売
・SNSなどの動画配信
・デイトレーダー、個人による株式・債券などの取引
・投資(株・不動産などによる運用益)、賃料収入を得る活動
・地域のコミュニティ活動(消防団・町内会・PTAなど)
・上記にあてはまるものはない
(※5)(※3)に同じ。

岩出 朋子

大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。

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