単発・短期ワーク(スポットワーク)を行う人の本業との関係は?——副業との総労働時間と収入の実態

2026年02月13日

前回のコラムでは、単発・短期ワーク(スポットワーク)で生じた労働時間と収入について紹介した。この働き方をする人は、年間に40.1日、1回あたりの労働時間は平均6.0時間、年間では241.0時間の単発・短期ワークを行っている。この労働時間を週ベースにすると、4.6時間の労働を本業以外に行っている推計となる。単発・短期ワークをする人の実態を把握するためには、もう少し掘り下げて確認すべきことがある。それは副業としてこの働き方を選択した人(※1)が、本業ではどのくらいの労働時間でどのくらいの収入を得ているのかだ。本業でも残業をしているのか、それとも残業をしたくてもできない人たちなのかである。本コラムでは、本業と比較しながら、単発・短期ワークの労働時間と収入について見ていきたい。

本業と合わせてどのくらい働いているのか?

「毎月勤労統計調査」を基にした年間の総実労働時間の推移(厚生労働省,2024)によれば、一般労働者(※2)の労働時間は2022年時点で1,948時間となっており、2018年以降2,000時間を下回る状態が続いている。働き方改革の浸透により労働時間の改善が進んでいるとされるが、単発・短期ワークを副業とする人たちに目を向けると、異なる実態が浮かび上がる。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」によると、正規の職員・従業員においては、本業の労働時間は2024年に年間2,154時間に達しており、これに単発・短期ワークの229時間を合わせると総労働時間は2,383時間となる(図表1)。この数値は、統計上の一般労働者の平均値を400時間以上も上回る水準である。また、契約社員・嘱託は、本業の1,735時間に副業の347時間を合わせ、総労働時間は2,082時間となっている。派遣社員では、本業の1,472時間に、全属性で最多となる392時間の副業時間が加わり、総労働時間は1,864時間に及ぶ。パート・アルバイト(※3)では、主婦・主夫は合計1,188時間、フリーターは合計1,441時間となっており、いずれも本業の労働時間に対して200時間以上が単発・短期ワークによって上積みされている。

図表1 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の総労働時間(推計)

図表1 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の総労働時間(想定)※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

本当はもっと本業で働きたいのか?

単発・短期ワークをしている人は、本業以外に決して少なくない時間をこの働き方に投入している。では、労働者が本業での労働時間の増加を望んでいるかといえば、事実は逆である。図表2の通り、短期・単発ワークをしている人の「本業の仕事時間の増減希望」を見ると、正規の職員・従業員において「今より増やしたい」と回答した割合は20.3%にとどまる。むしろ「今より減らしたい」とする層が32.5%と10ポイント以上高く、約半数の47.2%は「とくに希望はない」としている。

この傾向は他の雇用形態でも共通しており、契約社員・嘱託においても、本業時間を増やしたいとする人は21.4%である。労働者派遣事業所の派遣社員やパート・アルバイトでは「今より増やしたい」という意向は4割程度になるが、こちらも「とくに希望はない」が多数派を占めている。

図表2 本業の仕事時間の増減希望(単発・短期ワーク実施者)

図表2 本業の仕事時間の増減希望(単発・短期ワーク実施者)※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

本業で仕事時間や仕事内容を増やせる可能性は?

それでは、仮に単発・短期ワークをしている労働者が収入を増やしたいと考えたとき、本業でそれを実現することは可能なのだろうか。図表3の「仕事時間・仕事内容の増加の可能性」を確認すると、職場環境による制約が見えてくる。

正規の職員・従業員において、本業で仕事量や時間を増やすことが「できない」と回答した割合は50.7%に達し、半数を超えている。契約社員・嘱託でも48.8%が「できない」としており、正規職に近い雇用形態ほど、本業でより多く働くことが困難であることがわかる。一方で、派遣社員やパート・アルバイト(主婦・主夫)では6割前後、パート・アルバイト(フリーター)では7割弱が「できる」とする回答となっている。

図表3 仕事時間・仕事内容の増加の可能性

図表3 仕事時間・仕事内容の増加の可能性※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計値が100%にならない場合がある
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

本業と合わせてどのくらい稼いでいるのか?

次に、収入面の実態を確認する。図表4によれば、単発・短期ワークをする正規の職員・従業員の総年収(推計)は平均511万円であり、そのうち448万円が本業、63万円が単発・短期ワークによるものである。また、契約社員・嘱託は総年収が平均279万円(うち単発・短期ワーク53万円)、派遣社員は平均236万円(うち単発・短期ワーク56万円)となっており、どちらも単発・短期ワークの収入が年収全体の約2割を占めることが分かる。パート・アルバイト(フリーター)に至っては、総年収160万円のうち47万円が単発・短期ワークによるものであり、総年収の約3割に相当する金額を副業としての単発・短期ワークで稼いでいる。


図表4 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の総年収(推計)

図表4 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の総年収(推計)

※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計値が100%にならない場合がある
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

時給換算では単発・短期ワークの方が本業よりも高い

なぜ本業での仕事時間の増加を望まず、あるいは本業での時間増が可能な場合でもあえて外部の単発・短期ワークを選択する人がいるのか。その理由を検討するため、本業および単発・短期ワークでの時給をリクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」およびそれと接続可能な「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」に基づき推計し、図表5に示した。

これによると正規の職員・従業員の本業平均時給が2,081円であるのに対し、単発・短期ワークの平均時給は2,765円と、684円の差が生じている。こうした平均時給の逆転現象はパート・アルバイト(フリーター)を除いたすべての雇用形態で確認できる。派遣社員においても、単発・短期ワークの平均時給が本業を99円上回り、契約社員・嘱託ではその差が228円にまで広がる。さらに、パート・アルバイト(主婦・主夫)にいたっては、単発・短期ワークの平均時給が本業を247円上回っていることが確認できる。

パート・アルバイト(フリーター)のみ、本業が単発・短期ワークを87円上回る結果となった。しかし、それ以外の雇用形態で見られる平均時給の逆転現象を鑑みれば、深刻な人手不足を背景に、市場原理に基づいて機動的に高い時給が設定される単発・短期ワーク(スポットワーク)を選択することは、限られた時間で効率的に収入を得たい労働者にとって、極めて合理的な選択となっている可能性がある。

図表5 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の平均時給比較(推計)(※4)

図表5 単発・短期ワーク(スポットワーク)と本業の平均時給比較(推計)

※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

単発・短期ワークの収入は何に使われているのか?

こうして得られた収入の目的を確認すると、労働者が直面している切実な事情が見えてくる。単発・短期ワークで稼いだ収入の目的は、「月々の生活費にあてるため(衣食住に関わる費用)」と「暮らしにゆとりを持たせるため(貯蓄、贅沢費など)」が中心となっている。

特に「月々の生活費」については、派遣社員では46.8%、パート・アルバイト(フリーター)では51.3%と約半数を占める。正規の職員・従業員においても36.4%に達している。また、「暮らしにゆとりを持たせるため」という回答も、正規の職員・従業員で37.2%、パート・アルバイト(主婦・主夫)で35.0%と高い割合を占める。このほか、「特定の目的のため(趣味、旅行、買い物など)」というケースも一定数確認できる。

図表6 単発・短期ワーク(スポットワーク)収入の目的

図表6 単発・短期ワーク(スポットワーク)収入の目的

※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計値が100%にならない場合がある
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

本業より時給効率の良い働き方を選択する労働者たち

改めて、副業として単発・短期ワークを行う労働者の状況を整理すると、この働き方を選択する多くの人は、生活や特定の目的のために収入を補填する必要に迫られているが、労働時間の規制により正社員を中心に本業内では労働時間を増やせない人が一定数を占める状況にあることが確認された。

一方、労働市場では、時間あたり賃金がより高い単発・短期ワークでの就業機会が広がっており、本業の労働時間を増やすよりも効率的に収入を上げられるようになっている。その結果、単発・短期ワークをする人で正社員またはそれに近い働き方にする人ほど、現在の仕事で今以上の時間働くことを望んでいない。

要するに、副業として単発・短期ワークを行う労働者の中には、生活のために、より有利な条件を見極め、合理的な選択を行っている人が含まれているのである。

(※1)本コラムでは、2024年12月時点で「正規の職員・従業員」「パート・アルバイト」「派遣社員」「契約社員・嘱託」のいずれかとして働いている人のうち、2024年に単発・短期ワーク(スポットワーク)を行った人を「副業を行っている人」として分析する。
(※2)一般労働者は、常用労働者のうち、パートタイム労働者を除いた労働者を指す。具体的には、1日の所定労働時間がその事業所の一般の労働者と同じであるか、または1週の所定労働日数が一般の労働者と同じである「フルタイム労働者」を指す。
(※3)本コラムでは「パート・アルバイト」について、在学中の人を対象外とした上で、配偶者の有無により区分した。配偶者ありの場合を「パート・アルバイト(主婦・主夫)」、配偶者なしの場合を「パート・アルバイト(フリーター)」としている。
(※4)本コラムにおける「時給比較(推計)」は、雇用形態別に以下の方法で算出している。
・正規の職員・従業員、契約社員・嘱託:本業の週間労働時間から算出した年間総労働時間で、本業の年収(総年収)を割ることにより推計。厳密な実労働時間に基づく数値ではないが、本業と単発・短期ワークの時給水準を相対的に比較する上では有用な指標として活用している。
・派遣社員、パート・アルバイト:給与支払方法が「時給制」である回答者の数値を本業と単発・短期ワークの時給水準を相対的に比較する上では有用な指標として活用している。なお、サンプルサイズが小さい(派遣社員:n=86)、パート・アルバイト〈フリーター〉:n=93)ため、参照値として扱う。 

参考
厚生労働省(2024)「人口構造、労働時間等について」https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001194507.pdf(2026年1月26日アクセス)

岩出 朋子

大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。

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