単発・短期ワーク(スポットワーク)をはじめたきっかけと継続の理由は何か?
単発・短期ワーク(スポットワーク)という働き方を選択している人はどのようなきっかけではじめ、どのような理由で継続しているのだろうか。本コラムでは、「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」の結果をもとに、この働き方をはじめたきっかけ、継続する理由について紹介していきたい。
単発・短期ワークをはじめたきっかけは何か?
単発・短期ワークをはじめたきっかけについて、回答が多かった順に全体傾向を見ていく。最も多かった理由は「小遣いを稼ぎたいから」(33.2%)で、僅差で「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(32.9%)が続く(図表1)。次いで「生活のために収入を得たいから」(24.9%)、「自宅近くなど、希望の場所で働けるから」(24.1%)、「面接がなく、すぐに働ける仕事だから」(22.8%)であった。
この結果から、単発・短期ワークは金銭的な補填という目的と、時間や場所を選べる柔軟性、そして面接なしですぐに働けるという手軽さが、はじめる際の大きな動機となっていることが分かる。
図表1 単発・短期ワークをはじめるきっかけ 全体(複数回答)
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
就業形態別に違いはあるのか?
本業の就業形態別にはじめるきっかけを比較すると、それぞれの置かれた状況による違いが分かる。図表2によると、正規の職員・従業員では、「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(31.2%)がトップとなり、「小遣いを稼ぎたいから」(26.0%)を上回る。本業があるため、隙間時間を有効活用できるかが最優先事項となっていることが想定される。
一方、パート・アルバイト(学生)では「小遣いを稼ぎたいから」が53.0%と過半数を占め、圧倒的な動機となっている。また、パート・アルバイト(主婦・主夫)においては、「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(39.4%)に次いで、「自宅近くなど、希望の場所で働けるから」(35.0%)が高く、家事や育児・介護との両立のため、時間と場所の制約がある背景が分かる。
仕事を探していた人や契約社員・嘱託では、「生活のために収入を得たいから」という回答が3割台後半と高く、生活基盤を支える手段として単発・短期ワークが機能している様子がうかがえる。
図表2 単発・短期ワークをはじめるきっかけTOP5 就業形態別(※1)※クリックで拡大します
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
単発・短期ワークを継続する理由は何か?
2024年にこの働き方を選択した人のうち、88.9%は2回以上継続している。継続している理由として最も多かったものは「小遣いを稼ぎたいから」と「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」が同率で28.3%だった(図表3)。 これを「はじめるきっかけの理由」と比較すると、1位から6位までの顔ぶれと順位は全く同じという結果になった。このことから、単発・短期ワークにおいては、はじめる時と継続する時で、仕事に求める根本的な理由は大きく変化しないことが分かる。
しかし、その「割合」を比較すると、興味深い変化が見て取れる。 まず、はじめるきっかけで1位・2位だった「小遣いを稼ぎたいから」(33.2%)と「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(32.9%)は、継続理由でもトップであるが、その数値はどちらも4〜5ポイントほど低下している。最も顕著な違いは、5位の「面接がなく、すぐに働ける仕事だから」という項目だ。順位こそ変わらないものの、割合を見ると、はじめるきっかけの22.8%から継続理由では15.5%へと、7.3ポイントも減少している。この比較から、単発・短期ワークをはじめる際には「面接なし」といった手軽さが強く意識されるものの、継続する段階においては、そうした入り口のハードルの低さは意識されにくくなることが読み取れる。
図表3 単発・短期ワークの継続理由 全体(複数回答)
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
就業形態別では継続理由に変化はあるのか?
就業形態別でも継続理由を確認する。 図表4を見ると、基本的には「はじめるきっかけ」(図表2)と同様の傾向が続くが、一部の属性では理由の変化が見られた。特筆すべきは、一部の就業形態で「これまでの経験やスキルを活かせる仕事だから」という理由が浮上していることである。契約社員・嘱託およびその他の形態においては、はじめるきっかけのTOP5には入っていなかった「これまでの経験やスキルを活かせる仕事だから」が、継続理由では上位に浮上している。具体的には、契約社員・嘱託で24.1%(4位)、その他の形態で22.9%(5位)となり新たにランクインしている(図表4)。 また、パート・アルバイト(主婦・主夫)においても、はじめるきっかけですでに24.7%あった同項目は、継続理由でも22.1%と、依然として上位(4位)を維持している。
この変化は、当初は収入や都合の良さを目的に働き始めたが、実際に働いてみることで「自分のスキルが通用する」「経験が活かせる」という実感を得て、それが継続のモチベーションへと変化している人がいることを示している。単発・短期ワークは労働力の提供とも捉えられるが、継続するプロセスの中で、働き手が自身のスキルの再確認や発揮の場として価値を見出す機会にもなっているのではないだろうか。
図表4 単発・短期ワークの継続理由TOP5 就業形態別(※2)※クリックで拡大します
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
シニアではどのような特徴があるのか?
ここまでの分析で、全体傾向としては「面接なし」などの手軽さが入り口となり、継続する中で「金銭・時間」の実利へ理由が絞り込まれていく傾向を見てきた。最後にこの働き方を選択する約2割(20.3%)の60歳以上のシニアについても傾向を見てみる。
まず、はじめるきっかけに注目すると、シニア特有の傾向が見て取れる。上位は他属性と同様に「時間」や「場所」の都合であるが、特徴的なのは「体を動かす仕事がしたかった、気分転換をしたかったから」(19.0%)が7位と上位に入っている点だ。一方で、全体ランキングでは上位の常連である「面接がなく、すぐに働ける仕事だから」は、シニア層では11位(15.7%)にとどまり、入り口のハードルの低さはそれほど重視されていない。
これを継続理由と比較すると、動機の位置づけに興味深い変化の兆しが見えてくる。 具体的には、はじめるきっかけでは7位(19.0%)と上位にあった「体を動かす仕事がしたかった、気分転換をしたかったから」は、継続理由では14.0%へと数値を落とし、順位も10位へと後退している。働き続ける中で、当初の「健康維持」や「気分転換」といった自身のための目的は、相対的に重要度が低下していることがうかがえる。
その一方で、「これまでの経験やスキルを活かせる仕事だから」「人との交流の機会が欲しいから」「社会の役に立っていると実感したいから」といった項目に着目したい。全体傾向では継続時に数値が下がっていたが、シニア層でははじめる理由とおおむね同程度で上位に維持されている。 数値の変動が意味するところについては慎重に判断する必要があるものの、「健康」などの動機が明確に減少するのと対照的に、「スキル」や「つながり」といった動機が一定の水準で維持されている点は注目される。これは、単発・短期ワークを続けるプロセスにおいて、自身の経験やスキルが活かされているという感覚や、社会や他者と関わっているという実感が、シニア層の継続を支える要素として新たに位置づけられている可能性がある。
図表5 単発・短期ワークのきっかけTOP10 シニア 継続理由との比較
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
出所:「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成
(※1)その他の形態(n=23)、会社などの役員(n=47)、仕事を探していた(n=62)はサンプル数が100未満のため、参考値とする。
(※2)※1に同じ。
岩出 朋子
大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。
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