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日本の雇用の7割を占める中小企業 研究開発費の支出割合はOECD最低水準

2026年10月30日

OECDの経済審査報告書はOECDの前身である欧州経済協力機構の頃まで遡る、いわばお家芸だ。ここ20年は隔年で実施・公表されており、日本の最新版は2026年5月に公表された。日本に対しては財政の健全化の一環で消費税率の引き上げや補正予算の利用抑制を勧告することが近年定例化しており、その点はよく報道される。一方であまり知られていないが、2026年版は生産性という観点から中小企業について大きく紙幅を割いている(※1)。

中小企業が日本経済全体に占めるプレゼンスは大きい。日本の雇用全体の70%は中小企業由来で、日本経済の付加価値の56%は中小企業によって創出されているからだ。とはいえ、労働生産性は企業規模が大きいほど高まる傾向にある。たとえば、製造業において従業員数が10名未満の企業における従業員1人当たりの総付加価値創出額は347万円であるが、従業員数が55〜99名の企業では597万円、100名以上の企業では982万円だ。従業員数が10名未満の企業と比べると、その総付加価値創出の差は3倍近くにもなる。民間のサービス部門でも、従業員数10名未満の企業と100名以上の企業では2倍近い差がある。

日本の中小企業の生産性が低い説明としては、そもそも大半がサービス業に集中していること、イノベーションやDXの導入が遅いこと、海外貿易への関与が薄いことなどが挙げられる。ただ、なかでも深刻なのは日本の中小企業による研究開発投資が極めて限られていることだ。日本は2024年時点で対GDP比で3.4%を研究開発費に投じており、OECD平均の2.8%に照らしても高水準だ。しかし、中小企業による研究開発費のシェアはわずか5%にすぎず、これはOECD加盟国のなかでも最低水準にある(上図参照)。

同報告書では現行の補助金制度の改善、公共事業に入札経験のない中小企業やスタートアップ企業と随意契約を締結して入札経験を積ませるといった対策案を提示している。中小企業の投資体力が大企業に見劣りするというのは概ね事実だろう。とはいえ、雇用の7割を中小企業が占めているということを思えば、中小企業の研究開発投資環境を整備して生産性向上の土壌を育む取り組みを強化することは必要だ。次版の報告書でこの点について進展が記載されるか、期待したいところだ。

※掲載内容は個人の見解によるものです。

(※1)中小企業の定義は各国によってばらつきがある。OECDでは従業員数が249名以下の企業を中小企業として国際比較しているが、これは業種・従業員数・資本金によって分類する日本とは異なる。

    プロフィール

    荒木 恵氏

    Araki Satoshi
    経済協力開発機構(OECD)にて労働政策・公衆衛生政策を担当するエコノミスト。パリ在住。一橋大学法学部卒業、ジュネーブ国際開発研究大学院(IHEID)国際経済学修士号取得。外資系投資銀行などを経て現職。

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