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近道を通らないことが、「実力主義」国政の礎に

2026年10月27日

国王への新政権の披露を終えたフレデリクセン首相ら新内閣のメンバーたち。21人中11人が女性で、デンマーク史上初めて、女性が半数を超える内閣となった。
Photo=Hasse Ferrold

デンマークでは2026年6月、メッテ・フレデリクセン首相による新政権が発足した。社会民主党を中心とする4党の少数連立で、首相は3期目。組閣で注目を集めたのは、21人の閣僚のうち女性が11人と男性を上回り、デンマーク史上初めて、女性が過半数を占める内閣となったことだ。

女性首相が率いるのは8年目。主要政党のトップにも女性が多く、普段からよく顔を見るので、これがニュースになったこと自体、意外だった。ただ、調べてみると、女性閣僚が半数を超えたのは、北欧でデンマークが最後だったようだ。これは、デンマークという国が、選挙の立候補者や企業役員などに女性を一定数割り当てる「クオータ」の発想を嫌い、自由を重んじるお国柄であることも関係するかもしれない。

クオータ研究で知られるストックホルム大学のドルーデ・ダーレルプ名誉教授によれば、デンマークは、国会も政府も地方議会も、女性の割合がおおむね3分の1で止まる「3分の1の国」と呼ばれてきたそうだ。そこから、クオータに頼ることなく閣僚の過半数へ達したことについて「素晴らしいことだが、それは社会民主党の功績ではない」と公共放送DRにコメントしている。

変化の立役者は、有権者だ。3月の総選挙では、女性の当選者が全179議席の48%と過去最高を更新し、若い女性の当選が相次いだ。興味深いのは、各党の候補者に占める女性は39%にすぎず、有権者が女性を押し上げたことである。「国会の男女バランスを実質的に担保しているのは、有権者なのだ」と、デンマーク人権研究所のルイーセ・ホルク所長は指摘する。

日本は、男女平等を測るジェンダーギャップ指数で低迷が続き、「クオータを導入すべきか」という議論も繰り返されている。クオータに一定の効果があることは、率先して導入した北欧の他国を見ればわかるだろう。一方、デンマークがこの“近道”を避けてきたのは、性別を理由に“ゲタ”をはかされると、実力で選ばれた女性が偏見を受けかねない、という理屈からだ。

男性も女性も、同じように働いて同じように家事・育児を担う環境を作り、女性が活躍しづらい重しを、1つずつ外していく。そうして社会全体が変わった結果として、数字はあとからついてくる──。女性が並ぶ新閣僚は、時間をかけて平等をすすめた末の光景なのだ。

プロフィール

井上陽子氏

Inoue Yoko
北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞でワシントン支局特派員など。現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。

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