単発・短期ワーク(スポットワーク)副業者の総労働時間はどの程度ばらついているのか?

2026年05月15日

第6回のコラムでは、単発・短期ワーク(スポットワーク)を副業として行う人が、本業と合わせてどの程度働いているのかを確認した。働き方の柔軟化が進む中で、こうした働き方が個人の労働時間全体にどのような影響を及ぼしているのかを把握することは、働き方改革の実像を考える上でも重要な視点である。

働き方改革関連法の施行以降、残業を前提としない働き方は企業の中で広がりつつある。時間外労働の上限規制は2024年4月から建設業や医師などにも適用され、制度面では長時間労働を是正する枠組みが、ほぼすべての産業に及ぶようになった。こうした制度的な変化を背景として、企業の労働時間は着実に短縮してきたことが統計から確認できる。

図表1は、2006年から2025年にかけての常用労働者1人あたりの平均年間総実労働時間の推移である。年間総実労働時間は、2006年の1,843時間から、2025年には1,693時間へと、この20年間で150時間減少している。特に、上限規制の適用範囲が拡大した2024年の1,714時間から、翌2025年には1,700時間を割り込み、対前年比21時間の減少が見られる。

図表1 常用労働者1人平均年間総実労働時間数(規模30人以上事業所)
図表1 常用労働者1人平均年間総実労働時間数(規模30人以上事業所)出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」および労働政策研究所・研修機構「早わかり グラフで見る長期労働統計」より筆者作成


もっとも、こうした統計が示すのは、あくまで企業における平均的な労働時間の変化である。平均値からは、個人の働き方の違いや、労働時間がどの程度ばらついているのかといった点までは見えてこない。近年広がっている単発・短期ワーク(※1)を副業として行う人について、本業と副業を合わせた「個人の総労働時間」がどのようになっているのかは、必ずしも明らかではない。

総務省「労働力調査」は個人を対象に労働時間を把握しているが、主たる仕事と副次的な仕事それぞれの労働時間を分けて把握・公表しているわけではなく、労働時間は個人単位で一体的に捉えられている。そのため、本業と単発・短期ワークを組み合わせた働き方において、どの仕事にどれだけの時間が割かれているのかは、公的統計上の死角となっている。

そこで、本コラムでは第6回のコラムから一歩踏み込み、本業に加えて単発・短期ワークを行う人びとの労働時間が、どの程度ばらついているのか、その分布に着目して見ていきたい。分析には、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」と「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」を用いる。

本業の労働時間分布:正規と非正規で異なる実態

第4回のコラムで紹介したように単発・短期ワーク実施者の7割は雇用されている本業がある「副業層」である。この「副業層」の本業における労働時間の分布はどうなっているのだろうか。図表2は、この層に限定して本業の年間総実労働時間を区分し、全体および正規・非正規(※2)それぞれの構成比を示したものである。

全体では「1,500時間以下」が36.5%と最も多い。一方、本業の雇用形態別に見ると分布には明確な違いが見られる。本業が非正規で単発・短期ワークを実施する人では、本業の労働時間は「1,500時間以下」が60.5%と過半数を占めており、本業の労働時間が比較的短い層が多い。

対照的に、本業が正規の場合では、本業の労働時間は「1,500時間以下」は6.8%にとどまり、「2,000時間超~2,100時間以下(43.9%)」に分布が集中している。さらに、年間3,000時間を超える本業に従事しながら単発・短期ワークも行っている層が、7.2%存在していることも確認できる。

図表2 副業として単発・短期ワークを行う人の本業の年間総労働時間(推計)図表2 副業として単発・短期ワークを行う人の本業の年間総労働時間(推計)※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計が100%にならない
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

本業と単発・短期ワーク合算後の「総労働時間」

次に、図表3では、本業に単発・短期ワークの従事時間を合算した「年間の総労働時間」を確認する(※3)。単発・短期ワーク副業者全体では、「1,500時間以下」が31.0%と最も高い割合を占める。一方で、「2,000時間超~2,100時間以下(7.9%)」や「2,100時間超~2,200時間以下(12.6%)」といった2,000時間を上回る階級も一定の比率で見られ、さらに「3,000時間超」が9.7%存在している。

雇用形態別に見ると、本業が非正規の人では「1,500時間以下」が50.8%と半数を占めるのに対し、本業が正規の人では2,000時間超に8割が分布しており、両者の差が確認できる。

本業が非正規の人では、本業のみの労働時間分布においても「1,500時間以下」が最多であったことを踏まえると、本業の労働時間が比較的短い層を中心に、単発・短期ワークが併用されている状況がうかがえる。この点は、単発・短期ワークを始めた理由として「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(33.7%)が最も多く挙げられている調査結果とも整合的であり、働く時間の柔軟性が副業選択と関連している可能性が示されている(※4)。

図表3 本業と単発・短期ワークを合算した年間総労働時間(推計)図表3 本業と単発・短期ワークを合算した年間総労働時間(推計)※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計が100%にならない
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

法定労働時間の「物差し」で見えてくるもの

さらに、労働基準法が定める法定労働時間の視点から、本業があり副業として単発・短期ワークを実施する人について、本業と単発・短期ワークを合算した労働時間の実態を整理する。図表5は、年間総労働時間を「2,080時間以下(法定内目安)」「2,080時間超〜2,440時間以下」「2,440時間超〜2,800時間以下」「2,800時間超(特別条項の上限超目安)」の4区分に分け、本業のみと合算後を比較したものだ(※5)。

本業のみの場合、単発・短期ワーク副業者全体の80.0%が「2,080時間以下」に収まっており、大半が法定労働時間の範囲内にある。しかし、単発・短期ワークを合算すると、その割合は47.1%に低下する。代わってほかの割合が押し上げられ、最終的に「特別条項」の上限目安とされる年間2,800時間を超える人は、全体で12.1%に達している。

この変化を雇用形態別に見ると、より深刻な実態が浮き彫りになる。正規雇用者において、合算後も「2,080時間以下」である人は16.9%である。つまり、正規の副業者の8割以上(83.1%)が、合算ベースでは法定労働時間を超える水準で働いていることになる。

一方、非正規層においても看過できない変化が起きている。合算後も「2,080時間以下」が71.5%と大部分を占め、基本的にはスキマ時間を活用した緩やかな働き方が維持されているものの、年間2,800時間を超える層は本業のみの0.6%から、合算後には7.5%へと10倍以上に上昇している。これは、非正規であっても複数の仕事を過度に掛け合わせることで、過重労働に陥っている「隠れた長時間労働層」が一定数存在していることを示唆している。

図表4 法定労働時間水準で見た年間総労働時間の分布
―本業のみと本業+単発・短期ワークの比較(雇用形態別・推計)―
図表4 法定労働時間水準で見た年間総労働時間の分布
※クロスセクションウェイトを用いたウェイトバック集計
※四捨五入により合計が100%にならないことがある
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」および「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」より筆者作成

副業禁止ではなく、実態に即した「個別のアプローチ」を

本業と単発・短期ワークを合算した結果、年間総実労働時間が2,800時間を超える層が、副業者全体の12.1%存在するという事実は軽視できない 。一方で、この課題を論じる際には、社会全体における客観的な規模感を確認することも重要である。

単発・短期ワークの実施者は15歳以上人口の5.5%であり、そのうち本業で企業に雇用されており、副業として単発・短期ワークを行う人は約7割(70.1%)を占める。さらに、その中で合算労働時間が「2,800時間超」に該当する割合(12.1%)を掛け合わせると、その該当者は15歳以上人口のおよそ0.5%に相当する計算となる。

この「0.5%」という数値は、どのように捉えるべきだろうか。合算ベースで2,800時間を超える極端な長時間労働に至っている人が一部に存在することは事実であり、先に見たように、本業が非正規であっても、また正規であっても、単発・短期ワークを複数掛け合わせた結果として過重労働に陥っている人が含まれている。一方で、合算で2,800時間を超えている層の本業の職種構成を見ると、管理的職業(9.1%)や専門的・技術的職業(22.1%)といった、一般に自律的な裁量が大きいとされる職種が3割以上(31.2%)を占めている(※6)。

同じ「2,800時間超」という結果であっても、雇用形態や本業の職務特性を含め、その背景や働き方のあり方は一様ではないことが分かる。

ここで留意すべき点として、これらの副業者は、必ずしも外部から強いられてではなく、自らの意思で「働くこと」を選択し、労働時間を積み上げている側面がある。単発・短期ワークという形であえて労働を付加する背景には、単なる金銭的動機にとどまらず、自己実現の機会を求める意識や、職務上の責任が相対的に軽い仕事を選びたいという志向がある可能性も考えられる。加えて、本業の職務では、長時間労働を行っても賃金の増加につながりにくいといった構造的要因が存在している可能性も否定できない(※7)。

したがって、長時間労働の発生を「副業の可否」という単純な二分法で捉えるのではなく、どのような層で、どのような背景から労働時間が積み上がっているのかを精緻に把握することが求められる。自発的な選択の裏にある動機や、長時間労働を許容する要因を今後の研究を通じて明らかにしていくことが、柔軟な労働市場における適切なルール形成や支援のあり方を考える上での重要な鍵となるだろう。

(※1)本コラムにおける「単発・短期ワーク(スポットワーク)の研究」では、雇用契約または業務委託契約に基づき、以下の3条件をすべて満たす働き方を分析対象とする。
 1. 特定の企業・組織から雇用または業務を請け負う
 2. 労働の対価として金銭が発生する
 3. 契約期間が1カ月未満である
なお、以下の活動のみを行う場合は分析対象外とした。
 ・自営業・家業の手伝い
 ・オークション・フリマでの販売、SNS等の動画配信
 ・投資・運用(株・不動産・デイトレード等)や賃料収入
 ・地域のコミュニティ活動(消防団・町内会・PTA等)
 ・その他、上記いずれにも該当しない活動
(※2)本コラムの単発・短期ワークを副業として行っている人の分析対象者は2024年12月時点の雇用形態が正規の職員・従業員、契約・嘱託、派遣事業所の派遣社員、パート・アルバイトと回答した人のうち、在学中の人を対象外として行った。(n=1,430)
(※3)本業と単発・短期ワークの総労働時間は、以下のように推計した。本業の総労働時間は、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2025」から週あたりの総労働時間に52週を乗じて算出した(推計値)。単発・短期ワーク(スポットワーク)の総労働時間は、「単発・短期ワーク(スポットワーク)の就労実態調査」から2024年度に実施した回数と1回あたりの労働時間を乗じて算出したものである。
(※4)単発・短期ワークを副業として行っている人に対し、実施のきっかけを複数回答で尋ねたところ、「空いた時間や都合の良い時間を選べるから」(33.7%)が最も多く、次いで「生活のために収入を得たいから」(28.2%)、「小遣いを稼ぎたいから」(27.7%)が続いた。このほか、「自宅近くなど、希望の場所で働けるから」(23.8%)、「面接がなく、すぐに働ける仕事だから」(23.0%)といった回答も一定の割合で挙げられている。
(※5)本コラムでは、労働基準法が定める法定労働時間(1日8時間・週40時間)を基準に、年間の総労働時間を以下の4区分で整理した。年間の法定労働時間は年2,080時間(週40時間×52週)としている。なお、時間外労働は、労働基準法第36条に基づく労使協定(いわゆる36協定)により延長が可能とされており、当該時間外労働については同条に基づく上限規制が設けられている(休日労働は原則として別枠で管理される)。本区分は、この上限規制を踏まえて整理したものである。
 ・2,080時間以下:法定労働時間の範囲内。
 ・2,080時間超~2,440時間以下:労働基準法第36条に基づく時間外労働の原則的な上限(年360時間)以内の範囲。 
 ・2,440時間超~2,800時間以下: 同条に基づく特別条項による上限(年720時間)以内の範囲。
 ・2,800時間超:時間外労働の上限規制(年720時間)を超過している状態。
 ※時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情がある場合での特別条項で年720時間以内)の詳細は、厚生労働省(2021)の規定に基づいている。
(※6)年間総労働時間2,800時間超の本業の職種内訳は専門的・技術的職業従事者が22.1%と最も高く、次いでサービス職業従事者(14.3%)、事務従事者(13.7%)、管理的職業従事者(9.1%)、販売従事者(7.6%)、生産工程従事者(7.2%)、運搬・清掃・包装等従事者(7.0%)、分類不能の職業(6.1%)、保安職業従事者(5.7%)、輸送・機械運転従事者(5.2%)、建設・採掘従事者(2.1%)となっている。なお、農林漁業従事者は含まれていない。
(※7)第6回のコラムで紹介した単発・短期ワークと本業の平均時給比較(推計)によると、正規の職員・従業員の本業時給は2,081円であるのに対し、単発・短期ワークの時給は2,765円と684円の差が生じている

参考文献
厚生労働省(2021)「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf(2026年3月9日アクセス)
リクルートワークス研究所(2025)「単発・短期ワーク(スポットワーク)の市場規模と広がり」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail002.html(2026年4月2日アクセス)
リクルートワークス研究所(2026)「単発・短期ワーク(スポットワーク)を行う人の本業との関係は?——副業との総労働時間と収入の実態」
https://www.works-i.com/research/project/spotwork/deta/detail006.html(2026年4月22日アクセス)
労働政策研究・研修機構(2026)「早わかり グラフでみる長期労働統計 Ⅴ労働時間  図1-2労働時間数 年間」
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0501_02.html(2026年4月3日アクセス)

岩出 朋子

大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。

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