仕事の事情は、子どもを持つことにどのように影響しているのか

2026年04月15日

人々があるいている様子

長期的な収入安定の見通しが、子どもを持つ確率を高める

「家族」と「仕事」が相互に制約しあう「二重の足かせ」はどのように生じ、どのように克服可能なのだろうか。ここでは、仕事が子どもを持つことにどう影響するのか、また問題解決に何が必要かを検討する。

まず初めに、仕事の状況が子どもを持つことにどう関わるかを分析した(注1)。図表は割愛するが、男女とも正社員であることが子どもを持つ確率を高める一方、年収による明確な影響は確認されず、収入の多寡よりも、長期的な収入と雇用の安定が重要であることが示された。子どもを持つ決断においては、その生育に中長期的な責任を負える見通しが重要であることが窺える。

もっとも、「生計が安定すれば子どもを持ちやすくなる」と単純に結論づけることはできない。子どもを持つことは女性の賃金やキャリアに中長期的な不利をもたらしうる。その懸念が、子どもを持つ決断をためらわせる可能性があるためだ。

出産前後の男女の賃金・年収動向

実際、出産が女性の仕事に及ぼす影響は、今日なお強固である。図表1は、同一人物を追跡したデータを用い、出産前後5年間の年収と週労働時間がどう変化するのかを男女別に示したものである。比較のため、5年間連続して子どもを持たない人の状況も示している。男性では、子どもの誕生の2年前までは年収・労働時間とも子どもを持たない人とほぼ同水準で推移する。しかし誕生の1年前から年収・労働時間が上昇し、誕生後も年収差は拡大、労働時間の差も維持されている。

女性では、子どもの誕生1年前に年収が増加するが、誕生を機に年収・労働時間が大きく減少し、2年後になっても回復しない。子どもを持つことは、親のキャリアに中長期的に影響しており、その状況は子どもを持つ上でのハードルとなっていると考えられる。

図表1 出産前後の労働時間・年収の動向図表1 出産前後の労働時間・年収の動向(注)2015~2024年の10年分のデータを用い、子どもが誕生した人はその前後2年間の情報を使用。比較対象となる「5年間子どもを持たない人」は、連続した5年間子どもは「いない」と回答した人を分析対象とした。なお、子どもが誕生した人は、男性の年収の分析、週労働時間の分析でそれぞれ487ケース、497ケースであり、女性ではそれぞれ123ケース、151ケースであるため、誤差がやや大きくなることには注意が必要である。

課題は山積み

30~59歳の人口に占める構成比を見ると、2019年頃より「正社員同士の共働き」が増加する様子も見られる。ここからは雇用の安定により、子どもの持ちにくさは解消に向かっているようにも思える。しかし、「正社員同士の共働き」は可処分時間が短い傾向にあり、誰もが選択できる働き方にはなっていない(注2)。特にこの類型では女性を中心に両立負担が極めて重く、希望の数の子どもを持つことは容易ではない。以上を踏まえれば、課題はまだ山積みである。

(注1)子どもの有無を被説明変数とした離散時間ロジットモデル(クラスターロバスト標準誤差使用)による推定。説明変数には、調査年、学歴、業種16分類、職種10分類、年齢、居住都道府県、企業規模、役職、配偶者の有無(いずれも、子どもの有無の2時点前の情報)を用いた。 
(注2)「全国就業実態パネル調査」より、2020年に「正社員と非就業者の片働き」「正社員と非正社員の共働き」だった 30~59歳の有配偶者のうち、2024年に「正社員同士の共働き」に移行している割を確認すると、前者からの移行率は 5年で7.6%、後者からの移行率は14.2%であった。

この記事は、研究報告書「家族×仕事 10年の追跡調査が示す、変わる個人・変われない構造」の内容をもとに、再構成したものです。詳細は報告書をご覧ください。