家族の事情は、仕事のレベルアップや昇進・昇格にどう影響しているのか

2026年04月15日

人々があるいている様子

ライフイベントと仕事のレベルアップ

仕事の幅が広がったり、難易度が上がったりする仕事のレベルアップや、昇進・昇格は、個人のキャリア形成上の重要な機会である。では、家族に関わる状況は、その機会にどう影響しているのか。仮に不利な影響が生じているなら、どうすればそれを乗り越えられるのか。

この点を明らかにするため、配偶者を持つこと、子どもの数が増えること、介護に従事することが、男女の仕事のレベルアップ等にどう関わるのかを分析し、図表1に示した。女性では子どもの数が増えると、仕事のレベルアップの確率は約0.7倍、昇進・昇格の確率は約0.5倍に低下していた。一方、男性は配偶者を持つと昇進・昇格の確率が約1.8倍となり、子ども数は仕事のレベルアップや昇進・昇格に明確な影響を示さなかった。

図表1 家族状況の変化が、仕事のレベルアップ等に与える影響図表1 家族状況の変化が、仕事のレベルアップ等に与える影響(注)数値はオッズ比。***は1%水準、**は5%水準、*は10%有意水準。有意であった項目のみ、オッズ比を記載し、棒グラフに色を付した。回答した期に全て正社員であった男女のデータ(2020~2024 年)を用い、被説明変数を①仕事のレベルアップの有無、②昇進・昇格の有無、③仕事を通じた成長実感の有無、説明変数を配偶者の有無、子ども数、介護(自分が介護を担うこと)の有無とする固定効果ロジットモデルで分析した。統制変数として年齢、企業規模、業種、計画的OJT、Off-JT、十分な休暇を取得できたかどうか、仕事の裁量の有無、働く場所を選べたかどうか、自己啓発の有無を用いた。

なぜ子どもの増加は女性にのみ不利な影響を及ぼすのだろうか。

理由として、女性に育児の負担が偏る結果、出産後の女性の労働時間が短くなりやすいことが挙げられる。組織から重要な仕事を任されにくくなったり、女性自身が育児と両立しにくい仕事を辞退することで、仕事内容の高度化や昇進・昇格の機会を逃しやすくなっていると考えられる。

しかし近年、男性の育児時間は増える傾向にある。そのことだけを考えれば、子どもの誕生があった男性で、仕事のレベルアップや昇進・昇格への影響が生じてもおかしくはない。男性でそのような影響が生じていない背景には、男性の育児時間の相対的な短さに加え、その多くが仕事に影響しにくい時間帯に行われていることが一因となっている可能性がある。そうであるならば、家事・育児時間の長さだけでなく、いつそれを担うのかという面でも、男女がともに育児を担えるような意識や働き方の普及が、出産が女性にのみキャリアに不利な状況を克服する上で重要だろう。

なお男性では、介護を担う場合、仕事を通じた成長を実感する確率が約0.8倍に低下していた。早い帰宅や日中の離席が続くなかで、周囲への遠慮や負い目から、やりがいのある業務を手放しやすくなっている可能性があり、ここにも注意が必要である。

ライフイベント期も成長し続けられる環境整備を

なお、同じ分析からは、計画的なOJTやOff-JTの機会、仕事の裁量が、女性の仕事のレベルアップや昇進・昇格、そして成長実感の確率を高めていることも確認された。男性では、計画的OJT、Off-JT、十分な休暇取得、仕事の裁量、働く場所の選択、そして自己啓発が関連していた。

家族の事情が仕事のレベルアップを妨げる問題を解消するには、男女が時間の長さだけでなく、時間帯も含めて平等に家事・育児を担える働き方を広げる必要がある。あわせて、企業による人材育成の機会の充実や裁量の拡大、柔軟な働き方の整備も重要である。こうした取り組みは、ライフイベント期を含めて社員が成長し続けられる組織を作るという点で、企業にとっても利益のある選択である。

この記事は、研究報告書「家族×仕事 10年の追跡調査が示す、変わる個人・変われない構造」の内容をもとに、再構成したものです。詳細は報告書をご覧ください。