Z世代の就活と企業のSNS戦略 (求職者編)

2025年09月11日

キャリアの選択肢が多様化する中、Z世代はソーシャルメディア(SNS)を活用した情報収集や自己PR、AIによる応募書類の作成など、新たな手法を用いてキャリアを切り拓こうとしている。一方で、就職活動に伴う課題は複雑化しており、若年層は多くの困難に直面している。

Z世代が直面する就職活動の課題とストレス 

Z世代は、転職頻度が高い世代として知られている。Clarify Capitalの調査(※1)によると、86%が過去1年間に新しい仕事を探しており、60%がそのプロセスに強い精神的ストレスを感じている。特に、求人サイト経由で応募した後の企業からの反応に対する不満が多く、就職活動の障壁となっている。 

Checkrが過去6カ月間に就職活動を行った人を対象に実施した調査(※2)では、Z世代が以下のような課題を感じていることが明らかになった。 

  • 求人サイトでは応募や面接の連絡を得るのが難しい:59% 
  • 企業との個人的なつながりがなければ面接に進むのは困難である:57% 
  • 応募後に企業から連絡がないことが自信や精神状態に悪影響を与えた:66% 
  • 応募した仕事が実際には募集されていなかった経験がある(※3):73% 

こうした不満を背景に、Z世代はソーシャルメディアやAIに活路を見出している。同調査によると、55%が「従来の方法では見つけられなかった仕事をソーシャルメディア経由で見つけることができた」と回答しており、就職活動のスタイルは大きく変化している。 

ソーシャルメディアが就職活動の新たなインフラに 

Zetyの調査(※4)によると、Z世代の64%がInstagramを通じて仕事やインターンシップを見つけており、X(旧Twitter)は56%、TikTokは46%であった。

Instagramはネットワーキングの場としても機能しており、66%が仲間やメンター、業界の専門家とつながるために活用している一方、LinkedInの利用は35%にとどまっている。 

Z世代が就職やインターンを見つけるSNSメディアについてのグラフ

企業のソーシャルメディア上での存在感も応募判断に大きな影響を与えている。95%が企業のコンテンツを応募の参考にしており、特に注目されている情報は順に、企業の業績、職場文化、従業員の日常生活が50%を超え、続いてDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)への取り組み、求人情報と続く。

企業のコンテンツで注目されている情報

Z世代は、興味のある企業や従業員、業界関係者をフォローし、「1日の仕事風景」や職場の様子を映した動画などを通じて、企業の雰囲気や価値観を把握し、応募先を検討している。求人情報の投稿には、応募フォームやレジュメの送付先など、具体的な応募方法が記載されているのが一般的である。 

ハッシュタグで広がる自己PRの可能性 

ソーシャルメディアは、Z世代にとって自分のスキルや個性を発信する手段でもある。デザイン、コンテンツ制作、写真撮影、動画編集など、クリエイティブ分野に強みを持つZ世代は、Instagramに作品を投稿し、視覚的に自分の能力をアピールしている。投稿には、採用担当者の目に留まりやすくするために、目的に応じたハッシュタグが活用されている。主なハッシュタグの用途と使用例は以下のとおりである。  

■ 主なハッシュタグの用途と使用例 

用途  使用例 
求職活動中であることを示す

「#HireMe(私を雇ってください)」 
「#JobSeeker(求職中)」
「#JobSearch(求職活動)」

専門分野や希望職種を示す 

「#GraphicDesign」
「#UXDesigner」

ポートフォリオを示す 「#MyPortfolio」
「#DesignPortfolio」 

 こうしたタグの活用により、投稿が自己PRツールとなり、企業との接点を生み出すきっかけにもなっている。 

ChatGPTによる書類最適化で成功率が向上 

Z世代は、面接のチャンスを得るために、応募書類の作成にも新しいツールを取り入れており、企業に合わせた最適な応募書類の作成にAIを活用し始めている。 

Resume Templatesが、最近就職活動を行った米国のZ世代を対象に2024年5月に実施した調査(※5)によると、利用割合は少ないものの、全体の22%が就職活動でChatGPTを使用した。また、AI利用者は面接や内定獲得の成功率が高いことがわかった。 

  • 83%がレジュメ作成に、63%がカバーレター作成に利用した。 
  • 56%が企業からの返信を頻繁に受け取り、34%が時々受け取った。 
  • 98%が面接に進み、面接で90%が内定を獲得した。 
  • 93%が今後の就職活動でChatGPTの利用を継続する意向を示した。 

就活でCahtGPTを活用するZ世代についてのグラフ

利用者の成功を背景に、就職活動でのAIツールの利用はさらに高まる可能性が高いと考えられる。 

動画レジュメという新たなアピール手段で企業とつながる 

2021年、若者と人材不足に悩む企業をつなぐことを目的に、TikTokは米国で「TikTok Resumes(※6)」というパイロットプログラムを試験的に実施した。紙のレジュメの代わりにTikTok動画を使って仕事に応募するという、新たな試みだった。 

  • 実施期間:2021年7月7日~7月31日 
  • 参加企業:Chipotle、Target、WWE、Alo Yoga、Shopify、Contraなど30社以上 
  • 応募方法:専用サイトで募集職種を検索し、スキルや経験をアピールする動画を作成。「#TikTokResumes」のハッシュタグを付けてTikTokに投稿する。 
  • 結果:プログラム開始からわずか48時間で、応募動画が800本以上投稿された(※7)。ただし、最終的な応募者数や採用者数については公式な数字は公開されていない。 

 この取り組みは、従来の形式にとらわれない新しい採用形式として、ソーシャルメディアやメディアで大きな注目を集めた。動画を通じて個性や熱意を伝えるというスタイルは、特にZ世代の価値観や表現方法と親和性が高く、今後の採用活動における可能性を示す事例となった。 

プログラム終了後も、アピール動画を投稿するという動きは続いており、「#HireMe」はTikTokで84万件以上投稿されている(2025年8月現在)。なかには、動画がきっかけとなり、実際に面接や採用へとつながった事例もある。 

TikTokで注目を集めた応募動画 

あるZ世代の女性がメディア企業のデジタルメディアプロデューサー職に応募を表明した動画は、ストーリーへの共感性とクオリティの高さからTikTokで38万回以上再生されている(※8)。この動画には、共感や応援のコメントが500件以上寄せられた。後日、彼女はこの企業からインタビューの機会を得たことを、別の動画で明かしている。 

企業に直接PR動画を送付

別のZ世代の女性は、LinkedInを解雇された後、他の候補者との差別化をはかるために、かつての同僚や業界関係者の推薦コメントを含めた1分程度の自己PR動画を作成した。彼女は動画をGoogleの採用担当者に応募書類とともに直接送り、さらに拡散のために自身のソーシャルメディアでも公開した(※9)。最終的に、彼女は動画のおかげでGoogleへの採用が決まったと報告している。 

このように、動画はZ世代にとって採用担当者の注目を集め、認知される有効な手段となり得る。特に、クリエイティブな表現力を活かすことで、従来のレジュメでは伝えきれない個性や熱意を伝えることが可能である。 

 キャリアアドバイス、レジュメの作成、面接準備、ネットワーキング、求人情報の発見、企業のリサーチなど、就職活動のあらゆる場面でソーシャルメディアを頼りにするZ世代を中心に、就職活動のプロセスは変わり始めている。次回は、企業側の取り組み状況について紹介する。 

TEXT=関根真祐子 監修=村田弘美(グローバルセンター長)

(※1)Clarify Capital(ローン会社), “How Much Time and Money It Takes to Find a Job Today” (2025) https://clarifycapital.com/true-cost-of-job-hunting 

(※2)Checkr (身元調査プラットフォーム), “Hiring Disconnect: Job Seekers Tell-All About the Job Search Process” (2025) https://checkr.com/resources/articles/hiring-disconnect-2025-report 

(※3)企業が積極的に採用活動を行っていないにもかかわらず掲載されているポジションで、一般的に「ゴーストジョブ」と呼ばれる。 

(※4)Zety(レジュメ作成サービス), “46% of Gen Z Has Secured Jobs Through TikTok” (2025) https://zety.com/blog/genz-career-trends-report 

(※5)Resume Templates(レジュメ作成サービス), “Only 22% of Gen Z Use ChatGPT for Their Resume, Nearly All Land Jobs and Higher Salaries” (2024) https://www.resumetemplates.com/only-22-of-gen-z-use-chatgpt-for-their-resume-nearly-all-land-jobs-and-higher-salaries/ 

(※6)TikTok, “Find a job with TikTok Resumes” (2021) https://newsroom.tiktok.com/en-us/find-a-job-with-tiktok-resumes 

(※7)CNBC, “TikTok resumes and Instagram portfolios: How college students are using social media to find jobs”  (2021) https://www.cnbc.com/2021/11/14/from-tiktok-to-instagram-how-students-use-social-media-to-find-jobs.html 

(※8)https://www.tiktok.com/@filmwcolleen/video/7286578936274865414 

(※9)https://www.tiktok.com/@marianadkobayashi/video/7261341325469977883 

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