新人研究員の石川ルチアは、違和感や気づきが研究のきっかけに繋がったそうです

石川ルチア

2025年11月04日

リクルートワークス研究所presents「研究員の『ひと休み ひと休み』Season3」は、研究員の「生の声」をお届けするPodcast番組です。
第5回は、研究員の石川ルチアに話を聞きました。本コラムでは、収録音源から抜粋した内容をご紹介します。
※Podcast番組はぜひこちらからお聴きになってください。

未経験からの挑戦を支えた「常に学べる環境」

――石川さんはリクルートワークス研究所歴が約10年と長いですが、それ以前はどんなお仕事を?

石川:社会人になったのがアメリカだったんですけど、そこで刑務所に入っている人とか低所得層の持っている課題に向き合う領域で働いてまして。言ってみると、それは人と社会環境の関係性を考えながら働くということがテーマになっていたんです。今、ワークスでは人と組織の関係性をテーマにしているので、いつの間にか繋がっているところに来たな、というふうに感じてますね。

――ワークス研究所で研究員になろうと思ったきっかけを教えてください。

石川:元々研究の経験がなかったので、できるのかなっていう不安が正直かなりありました。でも、「働く」という観点からワークスでは研究をして、それを社会に届けていく、というのは、広い意味で私が元々やりたいと思っていたことに似てるかもしれないなと。

あとは環境的に、先輩の研究員がかなり親身になって教えてくれたり、研究所内でも勉強会や講座みたいなのが頻繁にあって、常に学べる環境があるから、挑戦してみようって思いました。

「個人単位で見る」ことにこだわった障害者雇用の研究

――石川さんの直近の研究について教えてください。

石川:研究のタイトルは『障害者の能力把握と職域開発』といいます。今、労働市場で人手不足や採用難が課題になっている中、障害者雇用が1つの打ち手になっているというお話です。実際に障害がある方々が、チームの一員としてなくてはならない戦力になっている職場って結構見られていて、それが人手だけじゃなく、収益に繋がっていたり、安全な職場作りに繋がっていたり、いろんな波及効果が見られているんですね。

ただ、他の企業さんが「じゃあうちもこれから積極的に障害者雇用を進めていきたい」って思った時に、能力をどうやって把握したらいいんだろうとか、どんな業務を任せるといいのかがわからない、という課題があるそうなんですね。なので、この研究では、障害がある方が戦力となっている職場で、どのように能力を把握し、業務を設計しているのか、その仕組みを明らかにしようとしました。その際にこだわった点が、障害の種別ごとに能力や適している業務を整理するのではなく、「個人単位で見る」ということでした。

――なぜ「個人単位で見る」ことにこだわったんでしょうか?

石川:よく「この障害がある人はこういうことが得意」みたいな傾向があると思うんですけど、それに基づいて業務を任せると、人それぞれが持っている持ち味や、興味・関心というのが考慮されないままになってしまうと思うんですよね。そうなると、その人個人の力を十分に発揮できないから、職場にとってもそんなに嬉しくない。だから、「個人単位で見る」というところにこだわりました。

海外で感じた「障害」への空気感の違い

――このテーマに関心を抱いたきっかけは何だったんでしょうか。

石川:学生生活や社会人生活を海外でしていた時に、割と障害のあるということが特別じゃなかった空気感だったんですよね。当事者の方とかその家族とかが、自然と話題にしていて、普通に会話の中に出てきたりして。日本に帰ってきて生活をしている中で、そういえばあまりそういう話しないな、障害のある方と知り合わないな、と思って。それがきっかけで研究してみようかなって思ったような気がします。

――研究の中で、特に印象に残ったエピソードはありますか?

石川:海外の障害者雇用ってどうなっているのかを少し調べていた時期がありまして、その時に障害に対する考え方がかなり違うんだなって思ったことがあったんですね。

例えばフランスでは、業務をするのに支障があればそれは障害だと認定されて、他の仕事ができるように、職業訓練を受けて転職するという公的支援があるんです。その支援の対象には、日本だと障害には該当しないようなものも含まれていて。例えば、肉体労働している方が腕が上がらなくなった、五十肩なのかなと思うんですけど、そういう感じの症状が出た場合も認定されて、公的支援を受けられるんですね。

――え、五十肩のような症状が、ですか?

石川:それが本当に五十肩だったかは定かではありませんが(笑)、症状を聞くと、腕を上げる作業さえしなければ全く問題なく、むしろ非常に速く作業ができる方だったそうです。そんなふうに、特定のシチュエーションで業務に影響があるなら、それに対応しましょう、という考え方はすごくいいなと思いました。

ただその一方で、日本ではその分、他の国よりも重度の障害を持つ方が働いているというお話も伺いました。それぞれの国の法制度によって、どういうところを後押ししているのかが違うのだな、ととても印象に残っています。

「家族」と「働く」のこれからを考える

――最近はどんな研究をされているんですか?

石川:はい、今は『「家族」と「働く」のこれからを考える』というプロジェクトに参加しています。現在は、多様な働き方や多様な家族のあり方が受け入れられる世の中になっていると思うんですけど、個人に目を向けた時に、必ずしも望む形で仕事と家庭を両立できる状況にはないんじゃないかと。

仕事やキャリアか、今は家族を選ぶのか、どちらかを優先しなきゃならない状況になっているのでは、というのがこのプロジェクトの課題意識なんです。ワークスには「JPSED」という10年間継続している調査があるので、そのデータを活用して家族や働き方の変化を捉え、そこにどんな課題があるのかを見ています。社会や企業、個人に何ができるのかを考えて、最終報告書として発行するために取り組んでいるところです。

――楽しみにしています。ありがとうございました。

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