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AIによる生産性や価値創出力の向上にはまず組織の構造改革を
階層が多く、ヒエラルキーの残る組織は、AIでの生産性向上にブレーキをかける可能性もある。
前回、AIが個別のタスクを速くこなしてくれるようになったとしても、労働強化が起きていたり、空くはずの時間を無益な作り込みで埋めてしまったりして、生み出されたはずの生産性が消失してしまう可能性があることを取り上げた。
これに対処するためには、AIに何かを任せる前に「何が、どうなったらゴールか」を明確に描く必要がある。あれもこれもとやりすぎることや、「明確にどこが悪いとはいえないけれど使えない」ものを作り続けることを回避できるからだ。何がどうなったらゴールかは、「自分のクライアントが何を求めているか」と「現状は、それに対して何がどう不足しているか」を理解することでクリアになる。
だが、これが意外に難しい。「言われたことをちゃんとやる」「目の前の課題を1つずつ片づける」というタイプの勤勉さが美徳とされてきた多くのビジネスパーソンには、「この仕事は、誰に何の価値を届けるプロセスの、どの部分なのか」を考える習慣が身についていないからだ。
近年、欧米ではAIによる生産性や価値創出力の向上には組織カルチャーが影響することを示す研究が増えている。複数の研究が、オープンカルチャーであることや、失敗しても過度に責められず再チャレンジできる風土があることの重要性を示している。オープンなカルチャーがなければ、働く人が、自ら現場で感じ取った課題から導き出す「これを解決したい」を実現するのは難しい。若手はあまり発言すべきでない、現場よりも本部のほうが尊重される、というカルチャーでは、余計なことは言わないに限る、という思考回路が生まれる。また、階層が多すぎる組織よりも少ない組織のほうが、AIを受け入れ活用しやすいという報告もある。AIが高速でタスクをこなすというのに、複雑で多すぎる承認プロセスがあると、大きなブレーキになる。組織階層を少なくする、意思決定の権限委譲を進めるなどの構造改革が必要になる。
マネジャーの役割も変わる。「目的にかなっているか」「ゴールを見失っていないか」をチェックすることと、「しなくていいことに時間をかけすぎていないか」を問うことによって、部下が陥る「無駄」を取り除くのが仕事になるだろう。これらを含む、AIの力を真に価値に変える力こそ、AIリテラシーの本質だ。
Photo = (c) iStock.com/Supatman
プロフィール
石原直子氏
FutureWork研究室 代表取締役。リクルートワークス研究所にて『Works』編集長、人事研究センター長などを務め、2022年よりエクサウィザーズ。自身設立のFutureWork研究室では、経営者、人事、政府、働く人々へのAI時代の人材マネジメントに関する情報発信に注力。
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