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AIによる労働強化、生産性消失 新しい課題に個人も組織も備えるべし

2026年06月29日

スマホも含め、マルチスクリーンで複数のAIを活用しながら仕事を進める人が増えていくかもしれない。

AIの活用が本当に生産性を向上させているのか」は、世界中でしばしば話題になる問いだ。2026年2月、ハーバードビジネスレビューのウェブ版に“AI Doesn't Reduce Work—It Intensifies It”(AIは仕事を減らさない――強化している)という論考が掲載されたことも記憶に新しい。UC Berkleyの2人の研究者によるものだが、AIを活用することによって、前なら人に頼んでいたことも自分(とAI)でやるようになる「タスクの拡張」、オンとオフの境界線が消えて、常に仕事をしている状態になる「境界の喪失」、常に複数のエージェントを動かしたり複数の仕事を並行したりする「マルチタスク化」が進んでおり、結果的に「以前と同じかそれ以上に働いている」状態になっている。これは「労働強化」である、というのだ。

労働強化は短期的には成果が増えるようにも思えるが、放置すれば人々の疲弊を招き、中長期的には組織の生産性を低下させかねない。

まず確かなのは、AIが人間より高速に作業をすることだ。しかし、作業が速くなることと生産性が上がることは同じではない。「限られた時間や資源でどれだけ価値ある成果を生み出せるか」という観点では、AIは局所的な効率化をもたらしていても、全体としては必ずしも生産性を高めておらず、むしろ逆効果になっている場合すらある。

よく見られる現象の1つはいわゆる「AIスロップ(AIが作り出す大量のゴミ)」問題だ。AIの生成物は、一見もっともらしくとも、実際には無難で平均的なものにとどまりやすい。「間違っていないけれど使えない」ものが次々作られても、生産性が向上したとはいえない。

次に、AIが新しい仕事を絶えず生み出す現象がある。AIが「初手」を打ってくれると、人間はそれに反応して「別案も見たい」「ここも精緻化したい」と手を加え続けてしまう。本来なら十分だった水準を超えて、過剰に整えられた資料や文書が生まれるオーバークオリティが発生するのだ。AIは作るコストを下げる一方で、作り込みへの誘惑を強め、不要な仕事まで増やしてしまう。このようにして「生産性の消失」が起きている可能性もある。

AIとどのように付き合うべきか、個人レベルでも組織レベルでも何らかのルールを設けておく必要がありそうだ。

Photo=Peopleimages / PIXTA(ピクスタ)

プロフィール

石原直子氏

Ishihara Naoko
エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長。銀行、コンサルティング会社、リクルートワークス研究所を経て現職。AI×人事、働き方、組織などの研究と情報発信を中心に活動中。

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