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第17回 AIネイティブカンパニーでは事業プロセスが根本から変わる
AIネイティブカンパニーの登場は、「戦略立案」を生業としてきた人々や会社に大きな衝撃を与えるかもしれない。
Photo=ⓒmoodboard/amanaimages
2025年が終わろうとしている。「AIエージェント元年」ともいわれた2025年に、ビジネスにおけるAI活用は大きく進化した。1度の指示で必要なステップを自律的に判断しながらアウトプット作成までを行ってくれるのがAIエージェントだ。
現実にはまだ、「A社に商品Xのプレゼンに行く準備をして」というだけで、A社の競争環境を調べ、それらを織り込んだ資料を作り、A社への行き方まで教えてくれるAIエージェントは、残念ながら登場していない。だが、定型的なプロセスにおいては、ワンクリックで3つ〜5つのステップを自動で行ってくれるAIシステムが、少しずつ実用の域に入ってきた。2026年以降はより複雑なことを自律的に行えるエージェントが増えていくだろう。
2025年は、「AIネイティブカンパニー」というキーワードが多く使われた年でもあった。元々は言葉のとおり「創業時から」AIを中心としたビジネスやその進化を織り込み済みの企業、というような意味だ。現在では、本当にネイティブでないにせよ、AIネイティブのような姿勢でビジネスや会社を変革するという決意を込めて、AIネイティブカンパニーを名乗る企業が出現している。日本ではDeNAや電通グループがAIネイティブを目指す戦略を大々的に掲げた。
AIネイティブな企業はそうではない企業とどのように異なるのか。先日筆者が参加した会議で、とある経営者が「AIは大いに活用すべきだ。人間はもっと戦略を考えたり、方針を決めたりする仕事をすることになる」と述べた時に、フランス人のマーケティング専門家がこう答えた。「戦略の重要性がものすごく低下する、というのがAIネイティブの考え方。熱心に戦略を立てるより、まずAIに広告を作らせる。市場の反応を見ながらABテスト(※)を繰り返す。これまではABテストを無限に繰り返すことはコスト面からみて非現実的だったが、AIならば短時間のうちに何百回でも繰り返せる。結果的に、最も市場が反応する広告、つまり売り方がわかるのだから、そこに売るのが正しい戦略、と考えるのです」
AIネイティブカンパニーになるというのは、このように、事業プロセスがAI活用によって根本から変わることを所与として、企業運営をしていくことだ。是非はともかく、このような転回を受け入れるには、私たち自身に相当の覚悟がいるのは間違いない。
(※)2 つ以上のバージョンの広告・アプリ等を顧客に提示し、反応のよいほうを採用することで顧客動線や顧客行動を最適化するマーケティングの技法。
プロフィール
石原直子氏
Ishihara Naoko
エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長。銀行、コンサルティング会社、リクルートワークス研究所を経て現職。AI×人事、働き方、組織などの研究と情報発信を中心に活動中。
Reporter
エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長。銀行、コンサルティング会社、リクルートワークス研究所を経て現職。AI×人事、働き方、組織などの研究と情報発信を中心に活動中。
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