なぜAI時代に日本企業は若年層の「不足感」を抱えているのか-過去20年の若年労働者の構造変化-
日本の若年失業率は他の先進諸国に比べて圧倒的な低水準にあり、AIによる業務代替が若年雇用に及ぼす影響が取り沙汰される中でも、過去3年でさらに低下している(前回のコラム)。こうした背景として、日本の「新卒一括採用」の慣行のほかにも、企業が抱える「人手不足感」が深刻化している現状がある。
AIがエントリーレベルの仕事を代替すれば、これまで若年層が担ってきた仕事が失われると言われる。しかし、従業員1,000人以上の大企業の人事部を対象として、「不足感」のある人材の具体例を尋ねたところ、「20~40代」や「若年・中堅層」というキーワードが相対的に多く挙げられた(【特別調査】人口減少・AI時代の新卒採用と育成)。
なぜAIが台頭する中でも、日本企業は若年層の「不足感」を抱えているのだろうか。日本の労働者の年齢階層別データを用いて、過去20年の構造変化と企業が直面している実態を明らかにしていこう。
「逆ピラミッド型」に姿を変えた労働力人口
まず、過去20年の日本の労働力人口ピラミッドの変化を見よう(図表1)。2005年の労働力人口は、年齢階層別に見ると20~50代がおおむね均等な姿であった。その後、2015年には人口動態に伴って20~30代の若年層が減少するとともに、全体として高齢化が進んだ。そして、2025年には、50代を境に年齢階層が下がるにつれて減少する「逆ピラミッド型」になっている。つまり、過去20年の労働供給の変化を見ると、50代以上の中高年層が拡大した一方で、20~30代は縮小する構図となっている。
図表1 労働力人口ピラミッドの変化 
(出所)総務省統計局「労働力調査」より筆者作成
企業内労働者の高齢化とアンバランス
さらに、実際に企業で働く労働者の年齢構成の変化を見よう(図表2)。2005年時点では30代前半の割合が15.1%と最も高く、次いで20代後半の割合が13.8%を占めるなど若年層が最も厚く、年齢階層が上がるにつれて企業内労働者の割合が低下していた。その後、経年とともに2015年には40代前半へとピークがシフトし、20代後半・30代前半の割合が低下した。2025年時点では、50代前半がピークとなり、20代後半~30代が占める割合はそれぞれ10%前後まで低下している。そして、2005年とは対照的に年齢階層が上がるにつれて企業内労働者の割合が高くなっている。つまり、20年前に比べて企業内の若年・中堅層が相対的に少なくなっているのだ。
図表2 企業内労働者の年齢構成比の変化
(注)各年の企業規模計(10人以上、民営、全産業)における一般労働者(総数)に占める各年齢階層別労働者の割合を示している
(出所)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より筆者作成
以上のように、過去20年というスパンで日本の労働力人口の変化を振り返ると、全体として20~30代の若年・中堅層の割合が低下し、企業内労働者の年齢構成も高齢化してきたことがわかる。こうした人口動態に伴う構造的な変化とともに、日本企業は若年層の「人手不足感」を強めてきたとみられる。
先行きの人口動態を展望すると、日本の若年層の労働供給は今後も縮小していくことが見込まれる。つまり、AIによる業務代替を見据えて新卒採用を抑制しなくとも、長い目で見れば、過去と同数の新卒者を「一括して、一定数」採用し続けることが難しくなる。AIは、若年層が担ってきた仕事を代替する可能性だけではなく、今後さらに「不足感」が強まる若年雇用を補完する可能性もあるだろう。
次回は、今後20年で新卒者の労働供給がどの程度減少する可能性があるのか、シミュレーションをもとに考察していく。
永沼 早央梨
日本銀行入行後、日米の雇用など国内外の景気動向調査、人口動態・経済構造の変化と労働市場に関する経済分析、金融システム安定のための調査研究に従事。
2024年10月より現職。
一橋大学国際・公共政策大学院(公共経済専攻)修了。
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