国際比較から見た日本の若年雇用-着実に進行する人口減少と不確実なAIの影響-

永沼早央梨

2026年07月16日

近年、企業の抱える人手不足感がバブル期並みまで高まり、新卒採用計画に対する充足も難しい状況が続いてきた。一方、AIによる既存業務の代替が雇用に及ぼす影響が取り沙汰される中、米国における若年層の採用抑制を引き合いに、日本の新卒採用動向に及ぼす影響も注視されている。若年労働力の減少という日本の労働市場が抱える構造的な要因に加え、AIによる業務代替が現実化する中、「新卒者を一括で採用し、長期雇用を前提に、OJTやジョブローテーションを通じて企業内で人材育成する」という日本型雇用の起点である新卒一括採用はいよいよ変容するのだろうか——。

若年労働力が減少すれば、過去と同じ人数の新卒者を一括して採用することは難しくなる。一方で、AIがエントリーレベルの業務を代替すれば、過去と同じ人数を採用する必要がなくなるかもしれない。また、新卒採用を継続しなければ、企業内で蓄積されてきた技術や知識を次世代に継承しにくくなる懸念がある。他方で、会議の議事録作成や基礎的なプログラミングなど、先輩や上司の指導を受けながら新入社員が業務を習得する過程がAIによって代替されれば、OJTやジョブローテーションを通じて時間をかけて育成するスタイルも見直されるかもしれない。つまり、日本企業が前提としてきた「新卒で採用し、時間をかけて育成する」というモデルそのものが問い直される可能性がある。

着実に進行する人口減少と急速に進展するAIという大きなうねりの中で、先行きの視界は必ずしも良好とはいえない。そこで、本コラムシリーズでは、日本の新卒一括採用が直面する現状と課題について、データに基づいて事実を把握していく。まずは、国際比較データで日本の若年雇用の動向を見ていこう。

日本の若年失業率は生成AI元年以降も低下

生成AIが急速に普及し始めた2022年と2025年の2時点間で、先進7か国(G7)の若年(15-24歳)失業率の変化を比較した(図表1)。まず、2022年を見ると、日本の若年失業率は4.2%と先進7か国中最も低いことが確認できる。それが2025年には3.8%と一段と低下している。これは、米国など多くの国で若年失業率が2022年から2025年にかけて上昇しているのとは対照的である。つまり、生成AI元年と呼ばれる2022年以降、エントリーレベルの業務が代替されると言われる中でも、日本の若年失業率は一段と低下し、他の先進諸国に比べて圧倒的な低水準を維持している。

図表1 若年失業率の国際比較図表1 若年失業率の国際比較

(注)各年の15-24歳の失業率を示している
(出所)OECD Data Explorer “Employment and unemployment by five-year age group and sex”

日本の若年失業率の低さは、就業に必要なスキルや経験のない未熟練の若年者が学校卒業後に失業期間を経ずに一斉就職する「新卒一括採用」のメリットとして指摘されてきた(厚生労働省(2020))。AIによる既存業務の代替が未熟練の若年層の雇用に及ぼす影響が懸念される中、個社や業界によっては採用数を見直す等の動きが局所的に聞かれるものの、失業率というマクロ指標で見る限り、日本の若年雇用への影響は限定的である。少なくとも現状では、日本の新卒一括採用の慣行は若年雇用の安定という意味で引き続き功を奏しているように見える。それでは日本の新卒一括採用が直面する課題はどうだろうか。

日本が先導する若年人口比率の低下

先行きの若年雇用の動向を見通すうえで、重要な指標の一つが若年人口比率である。日本の人口に占める若年(15-24歳)人口比率を見ると、2025年時点で先進7か国中最も低い9.3%とすでに1割を下回っている(図表2)。先行きを展望すると、2040年には8.0%まで低下する見通しだ。他の先進諸国の多くも2040年には1割程度まで低下する見通しだが、日本はこうした先進諸国の趨勢を先導していくことになる。2040年時点の人口推計には、想定する前提条件、社会情勢の変化や推計誤差による不確実性があるものの、足もとの出生数の動向を踏まえれば、日本の若年人口の減少は着実に進行していくであろう。

図表2 若年人口比率の国際比較
図表2 若年人口比率の国際比較

(注)各年の人口に占める15-24歳の割合を示している
(出所)OECD Data Explorer “Population projections”

従来、企業が新卒一括採用を行うメリットの一つとして、定期的に一定数の人員を確保できることが指摘されてきた(内閣府(2006)、リクルートワークス研究所(2010))。しかし、先行き2040年まで展望すれば、若年人口の減少に伴い、過去と同数の新卒者を「一括して、一定数」採用し続けることが難しい時代を迎える。

以上のように、国際比較データからは、日本の若年雇用について2つの示唆が得られた。1点目は、マクロ指標で見る限り、AIの進展が日本の若年雇用に及ぼす影響は今のところ限定的だという点だ。2点目は、先行き2040年にかけて若年人口の減少に伴い、若年層の労働供給はさらに縮小する見込みだということだ。
次回は、AIがエントリーレベルの業務を代替すると言われる中でも、企業にとって若年層の「人手不足感」がなお根強い背景について、データに基づいて考察していく。

<参考文献>
厚生労働省(2020)「『今後の若年者雇用に関する研究会』報告書~コロナ禍を受けて社会・産業構造が変化する中での若年者雇用の当面の在り方について~」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000685904.pdf(2026年6月30日閲覧)
内閣府(2006)「平成18年版国民生活白書」
リクルートワークス研究所(2010)「『新卒採用』の潮流と課題―今後の大卒新卒採用のあり方を検討する―」、「新卒一括採用」に関する研究会、2010年11月 https://www.works-i.com/research/report/item/r_000192.pdf(2026年6月30日閲覧)

永沼 早央梨

日本銀行入行後、日米の雇用など国内外の景気動向調査、人口動態・経済構造の変化と労働市場に関する経済分析、金融システム安定のための調査研究に従事。
2024年10月より現職。
一橋大学国際・公共政策大学院(公共経済専攻)修了。