多機能型ツールを導入し、業務効率とエンゲージメント向上を両立――Land O'Lakes

2025年09月30日

ジェシカ・ラッペ氏は、機械メーカーのTennant Companyや農業関連企業のCHSにおいて採用部門のリーダーやマネジャーを歴任したのち、2022年Land O'Lakesに入社。現在は人材獲得部門シニアマネジャーとして、リクルーターチームのマネジメント、採用業務全般のオペレーション統括、コンティンジェント人材(臨時労働者)の管理という3つの業務に主に従事している。同氏に、社内で導入しているテクノロジーや候補者エンゲージメントに対する取り組み、採用における課題などを伺った。

【ポイント】

  1. CRM、キャリアサイト、候補者とのコミュニケーションをPhenomで一元管理し、採用プロセス全体を最適化している。
  2. 候補者エンゲージメントを重点課題に掲げ、 自動化と手動対応を組み合わせたハイブリッドなコミュニケーションで関係構築を強化している。
  3. 応募過多・不足のポジションに応じて柔軟に採用プロセスを調整。AIやデータ分析を活用した、戦略的かつ先見的なリクルーティングへの準備を進めている。

Phenomを採用プロセスで多面的に活用

――ソーシング(候補者の発掘や母集団形成)には、どの製品を利用していますか。

主にLinkedInIndeedを活用し、求人広告の掲載やスカウトメールの送信を通じて、広範なターゲット層へのアプローチを強化しています。
さらに、LinkedIn Talent Insightsの活用を通じて、データ分析を強化し、特定の職種やスキルを持つ人材の分布や他社の採用動向を正確に把握することで、組織のニーズに合った人材獲得を実現しています。

また、既存の候補者データベースからの発掘にも注力しており、PhenomのCRM(採用候補者管理システム)を活用することで、過去の応募者や接点のあった人たちに再アプローチすることができます。

――Phenomをソーシング以外で、どのように利用していますか。

当社は、Phenomを早い段階から導入しており、現在は候補者を発掘するCRM機能に加えて、キャリアサイトのCMS(コンテンツ管理システム)や候補者とのコミュニケーション機能など、多岐にわたる用途で活用しています。
今後は、社内でのPhenomの利用をさらに浸透させ、持続的に活用していくためのチェンジマネジメントが課題であると認識しています。

【Land O'Lakesが活用するPhenomの機能】

主な機能 採用ステージ メリット
CRM(採用候補者管理システム)

・候補者データの管理

・候補者の発掘

ソーシング、面接

・採用関連データの一元管理

・候補者との継続的な関係構築

・新たなポジションへの再アプローチ

コミュニケーション機能

・候補者へのメールやSMS送信

・イベント、面接のスケジュール設定

・進捗状況やコミュニケーション履歴の管理

選考~プレボーディング

・候補者エンゲージメントの強化

・離脱率の低下

・高品質かつ効率的なコミュニケーションの実現

CMS(コンテンツ管理システム)

・キャリアサイトの作成

・会社概要や従業員の声などのコンテンツを編集

アトラクション(誘引)

・企業ブランド価値の向上

・採用コンテンツの効率的な管理

・コンテンツのリアルタイム編集、公開

変化する候補者ニーズに応じてエンゲージメント戦略を構築

――候補者エンゲージメントに対する具体的な取り組みはしていますか。

2025年の人材獲得部門における優先事項は、「候補者の質」と「採用の質」の向上です。現在、「候補者とのコミュニケーションに関するプロジェクト」を立ち上げ、採用プロセス全体におけるエンゲージメントの向上に取り組んでいます。
近年、候補者のニーズは大きく変容しており、人材獲得競争において優位性を維持するためには、他社をリードするエンゲージメント戦略が不可欠であると考えています。

――「候補者のニーズが変化している」とのことですが、エンゲージメントを高めるために必要な工夫とは何でしょうか。

この5年間で、候補者のニーズや行動様式はパンデミック前と比べて劇的に変化しました。当社ではこの変化を認識し、改善を進めています。働き方や企業の選択肢が多様化するなかで、候補者に「Land O'Lakesを思い出し、選んでいただく」ことが大きな課題となっています。
そのため、まずは認知度向上が重要であると考え、Phenomなどのツールを活用した採用ブランドの強化とエンゲージメント設計の見直しを進めています。特に、Land O'Lakesが単なるバター製造会社ではなく、そのほかアグリビジネスなどの主力事業を展開していることを、候補者に正しく伝えていくアプローチも必要であると考えています。

製造現場の時給労働者に対しては、「どのタイミングで、どのチャネルを使い、どのような情報を届けるか」を精査し、より効果的な手法で候補者体験の向上を図るべく、新たなエンゲージメント方法を模索しています。

PhenomとWorkdayの併用と、人による対応でコミュニケーションを最適化

――候補者とのコミュニケーションにも、Phenom のCRMを使っているのでしょうか。ほかのツールも活用していますか。

当社では複数のツールを組み合わせたアプローチを採用しています。たとえば、PhenomのSMS(ショートメッセージ)機能を候補者とのやりとりに活用しています。プレボーディングの段階では、Workdayからの自動送信に加え、リクルーターによる電話やメールなどの個別連絡も併用しています。
現時点では、ツールごとの使用方法の統一が不十分であり、コミュニケーション履歴のトラッキングが一貫して行えていないことが課題となっています。
今後は、自動化と人による対応を最適に組み合わせることで、一貫性と継続性をどのように確保するかが重要なテーマです。

新しい時代の、一歩先を行くリクルーティングを目指す

――採用活動において、現在最も大きな課題は何でしょうか。

リモートワーク、パートタイム、カスタマーサービスなど、特定の働き方や職種に応募者が集中し、リクルーターの負担が増大していることが課題です。特にスクリーニングの工程において、どこを自動化し、どのように効率化を進めるかを模索しています。
一方で、製造職や専門スキルを要する職種など、人手不足が続くポジションの採用は依然として難しい状況です。今後は、「応募者が多すぎる職種」と「応募者が集まりにくい職種」に応じて採用プロセスを柔軟に調整していく必要があります。

――AI利用についての見解や課題があればお聞かせください。

AIに関しては、「候補者によるAI利用」と「社内でのAI導入」という2つの側面で課題があります。当社の選考において、特に新卒採用では、履歴書のAI生成など、候補者がAIを活用して臨むケースが増加しています。現在の学生は日常的にAIを活用しているため、今後もさらに増えていくと予想されます。
採用プロセスの効率化を図りながら、いかに他社より一歩先を行く採用戦略を構築するか、さまざまな懸念点を考慮に入れつつ、AI導入を進めていきたいと考えています。

候補者のニーズの変化やAIの活用など、採用現場は今まさに「新しい時代のリクルーティング」に突入しています。数年以内には、採用チームの業務内容や付加価値の創出方法が大きく変化し、より戦略的で先見的なアプローチが求められるようになると予測しています。

インタビュアー=バーブ・ルース(CareerXroads)/杉田真樹
TEXT=泊真樹子

【Land O'Lakes 企業概要】
Land O'Lakes,Inc.企業概要

採用関連テクノロジーの概要

Phenom
候補者、従業員、リクルーター、マネジャー向けに多様な機能を提供するタレントエクスペリエンス管理プラットフォームである。採用業務では、ソーシング、CRM、キャリアサイトのCMS、SMS機能などを搭載している。

LinkedIn
世界200以上の国と地域に10億人以上のユーザーを有する、ビジネスに特化したSNSである。求人求職サイトとしても活用されており、2025年5月時点で求人情報の掲載件数は1500万件を超えている。同年4月には、登録プロフィールに記載されていないスキルや潜在能力をAIが推定し、候補者を提示する機能が追加された。


Indeed
世界60以上の国と地域で展開される求人検索エンジンである。職種や勤務地による絞り込み検索に対応し、登録レジュメを基に候補者検索が可能である。


LinkedIn Talent Insights
人材や企業の調査レポートツール。特定の条件に合致する人材や競合企業の動向を把握することが可能である。人材の流動性や直近の採用状況なども調べることができる。
Workday
HCM(人事管理システム)、財務、業務管理を統合したクラウド型プラットフォームである。従業員管理、タレントマネジメント、予算編成などを一元管理し、リアルタイムでのデータの抽出・分析が可能である。リクルーターは、SMS による最新情報の送信や、Workday Recruiting を通じた候補者との対話が可能である。