Global View From Work Tech World第2回 劇的進化を遂げる生成系AI 人との役割分担のポイントは共感力

ChatGPTをはじめ生成系AIが劇的な進化を遂げるなか、人間と機械の役割分担は大きく見直されています。

これまでは自動化できるか(単純・反復作業が中心)/創造性・戦略性が必要かという軸が一般的でした。ですが、Google China元社長でAI研究の第一人者であるカイフ・リー氏は、もう1つの軸を提唱しています。それは共感力の必要性です。共感や使命感、熱量を必要とする仕事は、AIには代替できないと予測しています。

自動化できるか/共感力が求められるか。この二軸で分類すると、私たちの仕事は4つの領域に分類できます。

① 自動化できず、共感力が求められる仕事
CEOや芸術家など、創造性や高度な戦略性に加え、共感や使命感が求められる領域は、基本的に人間が担い、AIは着想や戦略立案に役立つ洞察を提供することになるでしょう。

②自動化でき、共感力も必要ない仕事
この領域は、主にAIが担うことになるでしょう。証券会社のトレーダールームから人が激減したのは一例です。

③自動化できないが、共感力も必要ない仕事
創造性や戦略性が求められるものの、共感力はさほど必要ない領域です。AIを壁打ち相手に人間は、高度な意思決定を担うでしょう。

④自動化できるが、共感力が求められる仕事
たとえば教師や高齢者介護、ウェディングプランナーなどは、自動化できる部分はAIに任せ、ヒューマンタッチの部分を人間が担うでしょう。

とりわけHRテックの進出が目覚ましいのは④の領域です。SAPのHRMシステムは、従業員の能力や適性をAIが評価したうえで、適切なメンターを提案します。人事評価やデータに基づくキャリアパスの提示は自動化し、共感力を必要とする実際のメンタリングは人間が担っているのです。既にカスタマーサポート領域では、AIがトラブルの初期対応を担当し、問題点を発見できた時点で人間のオペレーターに代わることで、オペレーターは精神的負担が軽減し、コア業務に集中できています。

労働力不足が深刻化する飲食や医療・介護業界の、高い共感力が求められるにもかかわらず、膨大な業務量に忙殺され、生産性が低迷し、結果として賃金水準が上がらないという構造的な問題にもテクノロジーの活用が望まれます。

w178_tech_main.jpg人手不足が深刻化する介護現場で、人は人にしかできない仕事に集中できるようになるのか。
Photo=EPA=時事

Text=渡辺裕子

尾原和啓氏
Obara Kazuhiro
IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー、NTTドコモ、リクルート、グーグル、楽天などを経て現職。著書に『ザ・プラットフォーム』『アフターデジタル(共著)』ほか。

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