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第14回 アメリカでも増えない女性経営者 ボーイズクラブが阻む起業や営業

2025年06月13日

アメリカでもスタートアップにおける女性経営者の比率は、依然として低水準にとどまっています。

米カルタ社による調査では、スタートアップ創業者のうち女性比率は2018年からほぼ横ばいで、2023年には13.2%と前年から微減しています。

求人サイトTrueUpが公表しているテック大手各社の女性管理職比率によると、上位にネットフリックスやメタが入っている一方で、エヌビディアやテスラは下位にとどまるなど二極化が進んでいます。さらに、こうしたデータを非公表にしている企業としてスペースXやOpenAIが挙げられています。

経営における女性参画と業績向上の相関性は、複数の研究で示されているにもかかわらず、なぜ女性起業家やテック企業での女性経営層は増えないのか。その理由は、スタートアップの成長ステージを考えるとわかりやすいかもしれません。

初期の大きな課題となる資金調達は、人的ネットワークが勝負の鍵を握るため、男性中心の投資家コミュニティに属していない女性やマイノリティは疎外される傾向があります。このためオバマ政権時代には、女性やマイノリティの起業を支援するプログラムが実施されました。最近ではAll RaiseやFemale Founders Fundなどの非営利法人やベンチャーキャピタルが発足し、女性起業家への投資・メンタリングを推進しています。

次のハードルは、営業先の開拓や事業提携先の発掘です。大企業のトップや意思決定者にはいまだ男性が多く、いわゆるボーイズクラブと呼ばれる閉鎖的な男性中心社会も珍しくありません。

2024年、アメリカのテック業界では「創業者(ファウンダー)モード・管理者モード」という言葉が話題になりました。

平時においては、事業を安定的に成長させる管理者モードが求められますが、創業期やV字回復を求められる有事には、強いリーダーシップで組織を牽引する創業者モードに切り替える必要があります。後者の局面では、組織が一丸となってミッションを遂行するため、同質性の高い組織が有利です。

グーグルやメタなど、一部のテック企業がDEIの取り組みを見直していますが、トランプ政権を見るに、再生を図るアメリカという国が“創業者モード”に回帰するなかで起こっているバックラッシュの一環といえるのかもしれません。

スマートフォンに映るネットフリックスのロゴの写真アメリカのテクノロジー業界でも女性登用では二極化している。ネットフリックスなど女性管理職比率が上位に入る企業もある一方、登用が進んでいない企業も。
Photo= NurPhoto via AFP

Text=渡辺裕子

プロフィール

尾原和啓氏

Obara Kazuhiro
IT批評家。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー、NTTドコモ、リクルート、グーグル、楽天などを経て現職。共著に『アフターデジタル』『努力革命』ほか。

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