Global View From Nordic
第19回 労働力不足を補う国際人材採用 社会・企業が連携する帰属支援が不可欠に
「BELONG」プログラムを担当するダンリング氏。人材確保が難しさを増すなか、既に採用した国際人材に長く定着してもらうことの重要性を強調する。
Photo=井上陽子
デンマークに住んで10 年になるが、大きな変化の1つは、街中で英語を聞く機会が格段に増えたことかもしれない。コペンハーゲンのカフェやレストランでは、英語しか話せない店員が増えたこともあり、高齢のデンマーク人たちが、やれやれといった感じで英語で会話をしている。
移民政策の厳しさで知られるデンマークだが、それでも外国人労働者の数は、この10年でほぼ倍増した。デンマーク経済にとって、海外からの人材が不可欠な存在になっているためだ。失業率は3%と極めて低い水準にあり、デンマーク人だけでは求人を埋められなくなっている。国際人材の受け入れを支援する公的機関「コペンハーゲン・キャパシティ」によると、2025年には求人の23%で適切な人材が見つからず、採用に至らなかったという。
そのような背景もあり、デンマーク企業は今、せっかく採用した国際人材に、できるだけ長く組織に定着してもらえるよう力を入れている。多様性を受け入れる職場づくりのため、DEI(多様性、公平性、包摂性)に加えて注目されるようになっているのが、帰属意識(Belonging)を育む取り組みだ。
コペンハーゲン・キャパシティが、企業団体などと連携して進める「BELONG」という取り組みでは、国際人材がデンマークの組織文化に溶け込めずに離職するリスクを減らすため、採用した人材の帰属意識を測れる指標の開発などを展開している。また、職場文化のガイド役として、社内で気軽に相談できる“バディ”をつけることも推奨している。バディ役は、デンマーク人だけでなく、外国出身の同僚も担当すると、似た経験を共有できて有効だそうだ。
職場の多様性は、異なる視点をもたらし、企業のイノベーションを促すといわれる。同質性の高い組織では、どうしても似たようなアイデアが集まりがちだからだ。ただ、BELONGに参加する企業の動機は、そんな積極的理由だけではなく、「そうするほかない」ことも大きいと、コペンハーゲン・キャパシティのマリアンネ・ダンリング氏は言う。「デンマーク人だけで企業が運営できるなら、確かに楽かもしれない。でもそんな選択肢は残っていないのが現実なのです」
企業が生き残っていくためには、多様性への取り組みが不可欠な時代になってきたのかもしれない。
プロフィール
井上陽子氏
北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞でワシントン支局特派員など。現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。
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