転職活動で確認しておきたい3つのこと―中小企業へ転職した15名のインタビューから見えてきたもの―
本コラムは、インタビューにご協力いただいた方の個人情報に十分配慮し、個人が特定されない形で内容をまとめています。内容の共有についてはご本人の同意を得た上で、仮名や抽象化など必要な編集を行っています。
これまでのコラムでは、大企業から中小企業へ転職した15名へのインタビューを通じて、彼らが転職後に経験した組織適応のプロセスや、直面したギャップ、そして中小企業を選んだ理由について明らかにしてきた。
大企業での安定を手放し、新たな環境に飛び込んだ彼らは、数々の困難に直面しながらも、それぞれの立場で模索を重ねてきた。前回のコラムでは、転職後に組織適応につまずき、再び転職活動を検討するに至った背景を整理した。
本コラムでは、大企業から中小企業へ転職した15名の経験者へのインタビューを通じて、「これから転職を考える人に向けたアドバイス」を紹介していく。インタビューでは、実際に転職を経験した立場から、転職活動を振り返って「やっておいてよかったこと」「やっておけばよかったこと」が語られた。まず取り上げるのは、転職活動の段階での気づきである。大企業と異なり、中小企業では求人情報や口コミサイトに十分な情報が掲載されていないケースも少なくない。そのため、転職者自身が能動的に情報を集めて職場の実態を確認することの重要性が、複数の経験者から共通して指摘された。
確認①:労働条件・福利厚生の「解像度」を上げる
遠藤容子さん(仮名)は、「自分がそこに根を張って働いていけるかどうかを、きちんと確認したほうがいい」と語る。「嫌がられても、開示してくださいとお願いして、それに応じてくれる会社に転職したほうがいい」と述べ、給与規程や育児・介護休業規程などを細かく確認することを強く勧めていた。調べてもわからないことが多いのが中小企業の特徴でもあり、その場合は、勇気を出して面接の場で確認することが大切だと彼女は話す。
また、日々のちょっとした条件の違いが、生活に直結することもある。佐藤健太さん(仮名)は「自己出費がないかどうか」をあげ、業務で使用する自家用車のガソリン代が支給されなかった前職の苦い経験から、細部まで確認する重要性を指摘している。
高崎渉さん(仮名)も、「完全週休2日制が、日曜日に加えて自分で選べる1日なのか、それとも会社指定の2日なのかは結構大事」と、休日の形態を具体的に確認することの必要性を語った。
こうした確認事項を直接聞きづらい場合には、転職エージェントなどの第三者を通じて確認するという方法もある。木村咲さん(仮名)は、自分自身で直接聞かなくても条件を把握できた経験に触れ、聞き方や確認の手段を工夫することの重要性を指摘していた。
どのような手段で情報収集を行うにせよ、入社後の生活に直接影響する条件については、不安を曖昧なままにしないことが、結果として自分自身の働きやすさにつながる。
確認②:「リアルな職場環境」を自分の目で確認する
面接の場だけでは、中小企業の実態を十分に把握することは難しい。多くの転職者が口をそろえて強調したのが、「職場見学」の重要性である。たとえば、大企業では清掃を専門に担当する人が配置されていることが一般的だが、中小企業では、従業員が始業前や当番制で清掃やごみ捨てを行うことも少なくない。こうした職場の前提は、実際に足を運ばなければわからない。
菅原典子さん(仮名)は、「ちゃんと掃除されているか」「掃除は誰がやっているのか」「男女のトイレが分かれているか」「昼休みはどう過ごしているのか」といった点まで確認することを勧めている。毎日利用する環境だからこそ、自分が快適に過ごせるかどうかを細かく観察することが大切だという。
また、太田圭祐さん(仮名)も、「職場見学をさせてもらったほうがいい」と語り、人事担当者だけでなく、「直属の上司も一緒に対応してくれるか」を見ることで、入社後の面倒見のよさをある程度推測できるのではないかと指摘している。中小企業では、入社後すぐにOJTを通じて業務を覚えていくことが多い。その際、直属の上司がどのような関わり方をしてくれそうかを、事前に確認できる貴重な機会にもなる。
確認③:社長・直属の上司との「相性」を事前に測る
高崎渉さん(仮名)は、「中小企業では、それがものすごく大事だと思います。社長と距離が近い分」と語り、現在の職場で居心地よく働けている背景として、社長との関係性のよさをあげている。
さらに、大垣誠さん(仮名)は、入社前に同年代の社員や直属の上司と飲みに行き、「お酒の場で、ぶっちゃけた話をしながら、実際どうなのかをいろいろ聞けた」と振り返る。面接という公式な場だけでなく、非公式な場でのコミュニケーションを通じて、入社後のギャップをできる限り小さくしようとした工夫である。
前回のコラムで見てきた組織適応のつまずきの多くは、転職活動の段階での情報不足や確認不足と無関係ではないと言えるだろう。中小企業への転職では、入社してから考えるのではなく、入社前にどこまで確認できるかが、その後の組織適応を大きく左右することが、15名のリアルな転職者のアドバイスから浮かび上がっている。
次回のコラムでは、入社後に中小企業の中で力を発揮するために必要な3つの覚悟と、失ってはいけないものについて、15名の転職者の語りを基に紹介する。転職を決断する前に、一度立ち止まって考えておきたい視点を整理したい。
岩出 朋子
大学卒業後、20代にアルバイト、派遣社員、契約社員、正社員の4つの雇用形態を経験。2004 年リクルートHR マーケティング東海(現リクルート)アルバイト入社、2005年社員登用。新卒・中途からパート・アルバイト領域までの採用支援に従事。「アルバイト経験をキャリアにする」を志に2024年4月より現職。2014年グロービス経営大学大学院経営研究科修了。2019年法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。
メールマガジン登録
各種お問い合わせ