集まる意味を問いなおす:つながりと帰属感——集まりは、個人に何をもたらすのか

2026年09月15日

前回は、仕事が「一人で完結」する方向へ向かい、集まる必然性そのものが薄れつつあることを見た。では、集まりはもう、個人にとって意味を失ってしまったのか。今回は視点を、職場から一人ひとりの個人へと移したい。集まりは、そこで働く人に、いったい何をもたらしているのか(※1)。「この職場の一員だ」という帰属の実感を育て、つながりや成長を支えているのだろうか(※1)。

集まりが活発な職場の人は、満たされている

職場が「集まり」をどれだけ大切にしているかは、そこで働く個人の実感と結びついているのだろうか。ここでは、2021年から2026年にかけて、雑談や対話、研修といった集まりづくりの取り組みが増えた職場(「活発群」)と、横ばい・後退した職場(「停滞群」)とに回答者を分け、個人の実感を比べた(図表1)。

図表1 集まりが「活発になった職場」と「停滞した職場」で、個人の実感はどう違うか(2026年、5件法平均、n=1,491)

図表1 集まりが「活発になった職場」と「停滞した職場」で、個人の実感はどう違うか(2026年、5件法平均、n=1,491)群間はWelchのt検定。*** p<.001、* p<.05。

差は、一貫していた。集まりが活発な職場の人は、職場への帰属感が強く、成長を実感し、活力を感じている。困っている人に声をかけ、自分も気軽に助けを求める——助け合いの循環がある。そして、「いい職場があれば移りたい」という離職意向は低い。集まりは、単なる場のにぎわいではなく、個人の帰属・成長・つながり、そして職場への定着に結びついている。ただし一つ、効果が小さい項目がある。「寂しさ」だ。集まりが活発でも、寂しさはわずかにしか和らいでいない。孤独については、これまでに見たとおり、それを左右するのは働き方でも集まりの量でもなく、職場に信頼や一体感があるかどうかだった。孤独と、これから見る帰属感とは、似ているようで別の顔を持っている。

孤独と帰属感は、単純な裏表ではない。孤独でないことと、職場に自分の居場所があることは、同じではないからだ。では、「職場の一員なのだと強く感じる」という帰属感は、何から生まれるのだろうか。

帰属感を生むのは、出社ではなく「関係」だ

帰属感を、職場のさまざまな条件で説明する分析を行った(図表2)。本人の性格や、2021年時点の帰属感まで統計的に考慮したうえで、何が帰属感を高めているのかを見たものである。

図表2 帰属感を高めるもの(重回帰分析、n=1,491)

図表2 帰属感を高めるもの(重回帰分析、n=1,491)帰属感(「職場の一員なのだと強く感じる」)を目的変数とする重回帰分析。
決定係数R²=0.39。*** p<.001、n.s.=統計的に有意な関連は確認されなかった。

帰属感を強く高めていたのは、職場の一体感であり、困ったときに気軽に相談できる関係だった。この分析の説明力は0.39と高く、帰属感がいかに「職場の関係」で決まるかを物語っている。そしてここでも、出社頻度は帰属感とまったく無関係だった。毎日出社していようが、フルリモートだろうが、帰属を生むのは物理的な近さではなく、一体感と、相談できる関係である。見逃せないのは、本人の社交性——人づきあいを好むかどうかという性格——もまた、帰属感とは関係していなかったことだ。帰属は、その人の気質ではなく、その人が置かれた職場の関係のあり方から生まれていた。

ただし、帰属感には一つ、注意すべき特徴がある。「もともとの帰属感」が5年後にも強く引き継がれるという、持続性である。一度職場との結びつきが弱まると、それは働き方を変えても、簡単には戻らない。帰属を育てる関係は、関係が弱くなる前に手を打つことが肝心なのだ。

学びのコミュニティという、もう一つの鍵

帰属感とは別に、成長や活力に強く関わっていた要因がある。「学びのコミュニティ」の有無である。社内あるいは社外に、学び合える仲間の集まりを持っているか——この問いに、持っていると答えた人は全体の38%にとどまり、残る62%は「特にない」と答えた。学びのコミュニティを持つ人と持たない人とで、個人の実感を比べたのが図表3である。

図表3 「学びのコミュニティ」を持つ人と持たない人の違い(2026年、5件法平均、n=1,491)

図表3 「学びのコミュニティ」を持つ人と持たない人の違い(2026年、5件法平均、n=1,491)群間はWelchのt検定。*** p<.001。

差は大きい。学びのコミュニティを持つ人は、成長実感も活力も、持たない人を0.5ポイント以上上回る。職場への帰属感も高い。仕事の枠を超えて学び合う仲間の集まりは、個人の成長と活力を支える、もう一つの強力な基盤になっている。それにもかかわらず、6割の人はそうした場を持たない。ここには、個人にとっての「集まる意味」を取り戻す、大きな余地が残されている。

示唆——集まりを「意味」で設計する

5年間の追跡が、個人のレベルで示したことは明快である。集まりは、個人に確かに効く。帰属感を高め、成長を実感させ、活力を与え、助け合いを促し、離職を思いとどまらせる。だがその効果をもたらすのは、人が同じ場所に居合わせるという「形式」ではない。集まりが一体感を生み、気軽に相談でき、学び合える場になっているという「関係の質」である。

この結論は、本シリーズに一貫して流れてきたものと、そのまま重なる。雑談が戻るかどうかも、知が継承されるかどうかも、そして個人が職場に帰属を感じられるかどうかも——それらを分けてきたのは、出社という形式ではなく、集まりに込められた意味と、それが育てる関係だった。
ここまで、集まりが個人にもたらすもの——帰属、成長、つながり——を見てきた。すると、残された問いはおのずと一つに絞られてくる。それらを豊かにはぐくむ職場と、はぐくめない職場は、そもそも何が違うのか。次回は、その「職場の差」そのものに、正面から分け入っていきたい。
た。

(※1)本コラムは、リクルートワークス研究所「集まる意味を問いなおす」プロジェクトによる縦断(パネル)調査に基づく。2021年10月調査の回答者とのうち1491人に、2026年3月に再調査を実施した。回答者は5年間にわたり就業を続けた層が中心。ただし、この5年間の回答者の脱落は主に年代(ライフステージや定年・引退)によるものであり、2021年時点の幸福感や、人とのつながりへの志向、テレワークの状況、企業規模による偏りは見られなかった。なお集計は単純集計であり、母集団への復元は行っていない。図表1〜図表3の分析はいずれも2026年時点(一部は2021年時点)の測定値どうしの関連であり、因果の方向を確定するものではない。

辰巳 哲子

研究領域は、キャリア形成、大人の学び、対話、学校の機能。『分断されたキャリア教育をつなぐ。』『社会リーダーの創造』『社会人の学習意欲を高める』『「創造する」大人の学びモデル』『生き生き働くを科学する』『人が集まる意味を問いなおす』『学びに向かわせない組織の考察』『対話型の学びが生まれる場づくり』を発行(いずれもリクルートワークス研究所HPよりダウンロード可能)

関連する記事