フリーランスのリクルーターと企業をつなぐリクルーターマーケットプレイス「Paraform」

2025年07月31日

米国では、2010年代前半より、企業に属さずに採用活動を請け負うフリーランス(個人)のリクルーターと企業を結びつける「リクルーターマーケットプレイス」または「リクルートメントマーケットプレイス」が存在している(※)。
企業の人事部門が採用活動の一部を「freelance recruiter」や「contract recruiter」と呼ばれる外部パートナーに依頼することは一般的である。
初期のリクルーターマーケットプレイスは、フリーランスリクルーターが自ら求人を選定し、候補者を探索・推薦するモデルが主流であったが、近年では機能が高度化し、マッチングの精度とスピードが向上している。

フリーランスリクルーターの契約形態と役割

リクルーターマーケットプレイスに登録されたフリーランスリクルーターは、案件単位でマーケットプレイスと業務委託契約を締結し、候補者の発掘(ソーシング)から初期面談、企業への推薦までを主に担っている。面接以降の選考は企業が実施する。なお、フリーランスリクルーターが関与する範囲やプロセスは、マーケットプレイスごとに異なっている。

企業がマーケットプレイスを活用するメリット

  • 採用ニーズの変動に柔軟に対応可能である。
  • 人件費(固定費)の抑制が可能である。
  • 専門分野に強みを持つフリーランスリクルーターが多数登録されており、専門人材の確保が容易である。
  • 評価・実績を比較することで、適任のフリーランスリクルーターを選定できる。
  • 契約・進捗・報酬管理が一元化され、運用負荷の軽減につながる。

専門性とスピード採用に強みを持つマーケットプレイス「Paraform」

現在では、オープン登録制で多様な職種を扱うモデル(例:SplitleやRecruiter.com)も存在しているが、本コラムでは、専門性の高い職種やスタートアップにおける少数精鋭のスピード採用に強みを持つリクルーターマーケットプレイス「Paraform」について紹介する。

paraformの注目ポイント

Paraformの概要
Paraformは、2022年に開始されたサービスである。2024年のシード資金調達以降、売り上げを40倍に拡大し、2025年6月にはシリーズA投資ラウンドで2000万ドルを資金調達している。
主な対象はスタートアップ企業であり、創業期の営業職や、AIエージェントの開発に携わる「フォワードデプロイエンジニア」など、即戦力かつ複合的なスキルを要する高難度ポジションを中心に取り扱っている。
Paraformには、スタートアップや人材紹介会社での実務経験を持つフリーランスリクルーターが多数登録されており、大手テック企業出身者や特定業界・地域に強みを持つ専門性の高い人材も多く含まれている。

■ Paraformのしくみ(企業側)

paraformのしくみ(企業側)

  1. 求人案件の掲載:企業は必要なスキル、報酬条件などをParaformに掲載する。
  2. フリーランスリクルーターの承認:複数のフリーランスリクルーターが案件への参加を申請し、企業が承認する。通常のリクルーターはParaform運営チームが審査を行い、実績のある「推奨リクルーター」や「プレミアムリクルーター」は企業が直接審査・承認する。
  3. 候補者の選考:履歴書や事前面談の要約、フリーランスリクルーターからの推薦文などが画面にまとめて表示され、企業は面接対象者を効率的に選定できる。
  4. 成功報酬の支払い:採用成立後、企業は成功報酬と手数料をParaformに支払い、その一部(50%以上)が該当案件を担当したフリーランスリクルーターに報酬として支払われる。

案件には、資金調達ステージ、プロダクト開発の進捗、チーム構成などの企業情報も掲載されており、フリーランスリクルーターは背景を理解したうえでマッチングに取り組むことが可能である。
複数のフリーランスリクルーターが同一案件に並行して参加することができ、それぞれが募集要項に基づいて候補者を探索し、候補者リストを提出する。

■ ビジネスモデルと報酬体系

Paraformは、月額の求人掲載料と、採用成立時の成功報酬(初年度基本給与の15〜30%)を組み合わせた料金モデルを導入している。報酬は、候補者の入社後30日・60日・90日の3回に分けてフリーランスリクルーターに支給される。
また、採用に至らなかった場合でも、候補者が特定の面接フェーズに進んだ場合には「面接ボーナス」や「週次・月次ボーナス」などのインセンティブが、Paraformから直接支払われるしくみがある。
さらに、推奨リクルーターやプレミアムリクルーターには、成功報酬率が引き上げられ、案件への早期アクセス、応募制限の解除といった特典が付与される。

■ フリーランスリクルーターの評価システム

企業は、以下の評価指標を基に、申請のあったフリーランスリクルーターの中から依頼する人材を選定することができる。

  • 総合評価:過去に候補者を紹介した企業のハイアリングマネジャーによる評価スコア
  • 面接率:推薦した候補者が面接に進んだ割合
  • 紹介実績:成功事例の企業・職種に関するポートフォリオ


■ フリーランスリクルーター向けの主な機能

1. 初回ミーティングの録画視聴

新規ポジション公開後、標準的なオンボーディングプロセスとして、フリーランスリクルーター向けのすり合わせミーティングが実施される。
このミーティングには、該当ポジションの人材紹介に招待・承認されたフリーランスリクルーターが参加し、企業のハイアリングマネジャーと直接対話することで、応募要件の詳細、採用プロセス、懸念点、カルチャーフィットなど、募集要項に記載されていない情報を把握する。
ミーティングは録画され、募集要項ページに自動でアップロードされるため、後から参加したフリーランスリクルーターやライブで参加できなかった者も視聴可能である。

2. ダッシュボードによる進捗把握

ダッシュボードには、簡易的なATS(採用管理システム)機能が搭載されており、企業担当者とのメッセージ送受信や、「選考中」「面接中」「採用」「不採用」といった進捗状況の確認が可能である。

3. AI支援機能

下記のAIツールが提供されており、フリーランスリクルーターの業務効率が大幅に向上する。

  • 候補者との事前面談の日程を調整する「スケジューラー」
  • 面談内容の文字起こしと要約を生成する「ノート作成アシスタント」
  • 推薦文のドラフトを自動生成する機能

4. 高度マッチング機能

「高度マッチング」機能では、事前面談の文字起こしをAIが解析し、候補者の志向、スキル、キャリア志望、希望条件などを抽出する。これらの情報を基に、Paraform上の求人情報と照合し、適合度の高い求人のみを自動で提示する。フリーランスリクルーターは提示された求人の中から最適な求人を選び、候補者リストをワンクリックで企業に提出することができる。

■ 導入実績と活用事例

Paraformは、Palantir、Cursor、Windsurf、Decagon、Hightouchなど、急成長中のスタートアップを中心に約200社に導入されており、EU、韓国、オーストラリアなど海外でも利用が拡大している。

  • Monad(サイバーセキュリティ企業)
    設立初期で採用担当者が不在のなか、Paraformを活用し、平均23日というスピードで、フルスタックエンジニアチームを1.5カ月以内に構築した。
  • Northflank(サーバーインフラ企業)
    従来の人材紹介会社利用時に感じていた進捗確認やキャリブレーションの手間、候補者の質のばらつきといった課題を、Paraformの導入により解消。30分の初回ミーティングとフィードバックのみで求人を開始し、エンジニア・営業・開発者向けの技術コンテンツ制作など複数職種の人材を短期間で採用した。Paraformの候補者情報が一画面に集約されている点も評価している。

リクルーターマーケットプレイスに見られる採用のヒント

日本では、職業安定法により、有料職業紹介は厚生労働大臣の許可を得た事業者に限られており、企業がフリーランスリクルーターに直接求人活動を委託するしくみは、制度上導入が難しい。そのため、Paraformのように複数の独立したリクルーターが並行して企業の採用活動に参画するマーケットプレイス型のモデルは、日本では実現が難しいのが実情である。
一方、有料職業紹介の許可を持つ事業者がフリーランスの人材と業務委託契約を結び、専任ディレクターが企業の紹介案件にリクルーターをアサインするRPO型の運用モデルは、日本の制度内で展開されている。

また日本では、人材紹介会社を利用する際は紹介会社と法人単位で契約するのが一般的であるが、Paraformのようなマーケットプレイスでは、企業が個人単位でリクルーターを選び、過去の実績や専門性を踏まえたマッチングが可能である。この違いが、推薦の精度や連携の質を高める設計につながっている。
制度上、Paraform型モデルをそのまま導入することは難しいが、フリーランスリクルーター個人の専門性と実績の可視化、案件の柔軟なアサイン、推薦プロセスの標準化・見える化といった設計は、社内外を問わず採用体制の質を高めるうえで十分に参考になるだろう。

TEXT=杉田真樹

(※)https://www.works-i.com/research/labour/column/ttl/detail025.html
https://www.works-i.com/research/labour/item/2022_wu_us15.pdf